インディ・ジョーンズが秘宝を収めていたショルダーバッグについて読み解く

  • 文:小暮昌弘(LOST & FOUND)
  • 写真:宇田川 淳
  • スタイリング:井藤成一

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モデル名は「ショルダーポーチ。素材はコットン80%×ポリエステル20%のウェザーポプリン。シンプルなデザインながら、スタイリングのアクセントになるバッグだ。1サイズ展開。アメリカ製。(H28.5×W28.5cm)¥15,400/エンジニアド ガーメンツ

「大人の名品図鑑」インディ・ジョーンズ編 #4

考古学に関する豊富な知識をもち、悪党相手にヒーローごとく躍動するインディ・ジョーンズ。間違いなく名優ハリソン・フォードの代表作の一つだ。今年、待望の最新作が公開される。初代から新作まで、インディ・ジョーンズが身につけてきた数々の名品を探してみた。

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冒険の旅に出かける時、インディ・ジョーンズはいつも身軽なスタイルだ。例の帽子にレザージャケットを羽織って、身ひとつでどこにでも出かけてしまう。探検でようやく探し求めた秘宝や遺物を収納するのも、レザージャケットの下に斜めにかけたシンプルなバッグ。考古学者なのだから苦労して発見したものは細心の注意で扱うべきとも思うが、そこは映画。いつも宝物を無造作にバッグに投げ込んでしまう。

インディが愛用していたバッグは、第二次世界大戦に英国軍が使っていた「ガスマスクバッグ」と呼ばれるものだ。これは、第一次世界大戦から第二次世界大戦にかけて戦場で有毒ガスを吸わないためのガスマスクを収納するためにデザインされたもの。インディが使っていたものは一説には「MK Ⅶ」というモデルで、当時はイギリス軍だけでなく警察に支給されていたという話もある。

フラップにボタンが付いたシンプルなデザインで、大きなマスクを入れるので、バッグにはマチが付いている。肩から掛けられるショルダーストラップが装備されていて、「映画に登場したものは、ストラップをレザーに変えたものでは」と解説するサイトもある。確かにオリジナルの「MK Ⅶ」の現物写真を探すと、布製のストラップが付いている。レザージャケットの内側にバッグを斜め掛けすることを考えて、アクセント的に見えるようにストラップを革製に変えたのかもしれない。

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インディを想起させるエンジニアド ガーメンツのバッグ

さすがにインディが映画で使ったガスマスクバッグは簡単には入手できない。同じような雰囲気のバッグがないかと探したところ、エンジニアド ガーメンツに似たようなデザインのバッグを発見した。

「ショルダーポーチ」と名付けられたこのバッグは同ブランドがここ数年、毎シーズン、定番的に展開しているバッグで、インディが愛用した「ガスマスクバッグ」との大きな違いはマチがないことだろう。しかしマチがない分、アウターとインナーの間に着用しても邪魔にならず、また折り畳んで持ち運ぶことも容易。このバッグはコレクションごとにさまざまな素材が用いられるが、今年のコレクションではオリーブのウェザーポプリンを採用、雰囲気は映画に登場するバッグそのものではないか。

エンジニアド ガーメンツは1999年、世界的な人気を誇る日本のネペンテスが立ち上げたオリジナルブランドで、ニューヨーク在住のデザイナー、鈴木大器がデザインを手がけている。製品のほとんどをアメリカで生産する稀有なブランドだ。アメリカンカジュアルのベースに、スポーツ、ユニフォーム、ミリタリー、アウトドアなどのテイストを加え、さらに素材やディテールにこだわったコレクションを展開する。アメリカや日本だけでなく、世界的にも多くのファンを持つ。

デザイナー鈴木らしいシンプルかつ機能性溢れるデザインで、使いやすさも十分考えられている。ショルダーストラップのデザインが独特で、一部が蛇腹状に縫い付けられており、それを解くことで好みに長さに調節できる仕組みになっている。

普段づかいからインディのような旅用にも向いている。このバッグを身につけると、インディのように冒険に出かけてみたくなる人も多いのではないだろうか。

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バッグの中央に小さく入ったブランドの織りネーム。ブランド名は「巧みに設計された洋服」という意味。
 

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ストラップの途中が蛇腹状に縫い込まれており、縫っている糸を解くことで長さの調節ができる。

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多くのミリタリーアイテムに見られるように、縫製などの仕様はシンプルに。このバッグもフラップに使われた生地がそのまま裏側に折り畳まれ、ステッチが掛けるといったシンプルなつくり。

問い合わせ先/エンジニアド ガーメンツ TEL:03-6419-1798

https://onlinestore.nepenthes.co.jp

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