あなたは劇団四季の本社を訪れたことがあるか??

  • 写真・文:一史
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劇団四季 衣裳部門の大部屋にて。

このエントリーのタイトルで、「あなたは劇団四季の本社を訪れたことがあるか??」と述べましたが、いやそりゃ、フツーはありませんよね。
「四季芸術センター」と名付けられた横浜市の新興住宅地にある2階建て近代建築のなかに、稽古場、トレーニングジム、舞台美術制作場、図書館、食堂までが揃った舞台芸術の聖地に足を踏み入れるなんて。
長く広い廊下を練習着を着た俳優たちが歩き、横を通りすぎると誰もが笑顔で「お疲れさまです!」と挨拶してくれる体験なんて。
舞台で着られる衣裳を修理して染めている現場で、制作スタッフたちと話しができるなんて!

すごいです、ここ。
すごい、しか言葉が思い浮かばないくらいすごいです。
モノをつくることの迫力や本気度に満ちた、一大クリエーション拠点。

告白するとわたしは演劇にうとい人間です。
劇団四季の公演に足を運んだのも大昔で、『オペラ座の怪人』くらい。
仕事対象の軸がファッション分野ですから(写真/文章)、『キャッツ』『ライオンキング』といった驚愕の衣裳(&小道具)にはもちろん興味を持ってました。
海外演目を同等のクオリティで日本展開することのたいへんさもわかりますから。
観客動員数が桁違いなら、制作と運営予算も限られるでしょう。
見劣りしないステージをつくり上げることにどれほどの労力がいることか。

このたびそんな劇団四季の本社に行けたのは、衣裳部門トップの渡邉里花さんを取材する機会に恵まれたからです。
ファッション専門学校 文化服装学院のサイト記事です。
(記事リンク ↓
https://sumirekai.bunka-fc.ac.jp/interview/links/023/

ここでは記事からの写真転用(+オフショット)をお届けします。
色調はこのエントリー向けに少しアレンジ。
学校サイトでは仕事現場をリアルに伝えるため、よりベーシックにしてます。

登場する衣裳の演目は、『キャッツ』『ウィキッド』『ジーザス・クライスト=スーパースター』[ジャポネスク・バージョン]。
空間全体の写真がないのは理由あり。
写していけない衣裳や小道具が至るところにあったからです。
「これがあの●●●●●の衣裳かあっ」と、めちゃ興奮の現場だったのですが、大人の事情で●●●●●は●●●ですので(わからんわ!)お含み置きを。

それでは以下よりご覧くださいませ。

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『キャッツ』専用衣裳部屋にずらりと並ぶボディタイツ。
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男性マネキンに着せ付けられたタイツ。生地の縫い目をわからなくする手仕事での着色。
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人知られぬキャッツ衣裳の秘密。毛並み模様のプリント布を縫い合わせたわずかなずれを、1本1本手作業で修正。この丁寧さがステージ上でのリアリティを生みます。
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手描きのテストサンプルと裁縫道具。
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『キャッツ』の舞台。撮影:堀 勝志古

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劇場に運び込まれる直前の『ウィキッド』の衣裳。
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製造業者に発注するための衣裳サンプル制作。

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『ジーザス・クライスト=スーパースター』[ジャポネスク・バージョン]の衣裳。俳優が衣裳着用で稽古したときの着替え室。汚し染色はこの本社内で行われてます。
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こちらも『ジーザス・クライスト=スーパースター』[ジャポネスク・バージョン]の衣裳。

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工場レベルの本格的な染色室も四季芸術センターのなかに。若いスタッフたちが熱湯の湯気を浴びながら染めていました。
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ステージの強い照明で白飛びしないように、白の布もベージュに染めて使うのが劇団四季のやり方。

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俳優たちの衣裳合わせ部屋。ひとりの試着に数名の衣裳スタッフが担当してフィッティングやサイズを調整。

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役柄や俳優ごとに衣裳を箱詰めして劇場に運搬。

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今回の取材の主役である衣裳部門責任者の渡邉里花さん。四季芸術センターのエントランスすぐの壁に貼られた伝統の教訓の前にて。演出家で創立者の浅利慶太さんが掲げた教訓で、渡邉さんが好きなのは「慣れだれ崩れ=去れ」。慣れるとしだいにダレてしまい、いずれそれが崩れにつながることを戒めてます。

四季芸術センターの玄関で靴を脱いであがり、廊下に踏み出すとすぐに表れる強い言葉の数々。
コンクリート打ちっぱなしの建築のなかで、際立って目立つ手書きの教訓。
帰路につくため玄関に向かうと、最後に目にするのもこの教訓。
来て帰るたびに何度も、「慣れだれ崩れ=去れ」「一音落とす者は去れ!」。

同じ舞台を連日繰り返しながら、安定したクオリティを維持する困難さは想像に難くありません。
俳優たちも、運営&制作スタッフたちも。
初めて遊園地に来た子供状態だったミーハーな取材者のわたしも、この前に来ると「ちゃんとせねば」と気が引き締まったほど。

誰もが名を知る劇団四季の一員である安心感も戒めているのかもしれません。
一瞬気を抜くだけで、何段もの階段を転がり落ちる怖さ。
観客の愛を失う怖さ。

その一方、一介の訪問者のわたしには舞台衣裳部門はとても居心地いい空間でした。
やる気のある生徒だけが集まった学校の教室のような。
熱心に仕事しながらも不自然な緊張感がなく。
この場でこそ実力を発揮できる人がいそうです。
誰が買って着るかわからないファッションアイテムに対する、役立つ未来がクリアに見える舞台衣裳の世界。

長年の取材人生のうち、記憶に焼き付けられたトップ3(現在1位)に入る素晴らしい体験でした。
また行きたい……行きたいなぁ…!

All photos&text©KAZUSHI

KAZUSHI instagram
www.instagram.com/kazushikazu/?hl=ja

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【画像】あなたは劇団四季の本社を訪れたことがあるか??

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劇団四季 衣裳部門の大部屋にて。

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『キャッツ』専用衣裳部屋にずらりと並ぶボディタイツ。
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男性マネキンに着せ付けられたタイツ。生地の縫い目をわからなくする手仕事での着色。
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人知られぬキャッツ衣裳の秘密。毛並み模様のプリント布を縫い合わせたわずかなずれを、1本1本手作業で修正。この丁寧さがステージ上でのリアリティを生みます。
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手描きのテストサンプルと裁縫道具。
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『キャッツ』_撮影:堀 勝志古.jpg
『キャッツ』の舞台。撮影:堀 勝志古

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劇場に運び込まれる直前の『ウィキッド』の衣裳。
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製造業者に発注するための衣裳サンプル制作。

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『ジーザス・クライスト=スーパースター』[ジャポネスク・バージョン]の衣裳。俳優が衣裳着用で稽古したときの着替え室。汚し染色はこの本社内で行われてます。
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こちらも『ジーザス・クライスト=スーパースター』[ジャポネスク・バージョン]の衣裳。

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工場レベルの本格的な染色室も四季芸術センターのなかに。若いスタッフたちが熱湯の湯気を浴びながら染めていました。
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ステージの強い照明で白飛びしないように、白の布もベージュに染めて使うのが劇団四季のやり方。

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俳優たちの衣裳合わせ部屋。ひとりの試着に数名の衣裳スタッフが担当してフィッティングやサイズを調整。

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役柄や俳優ごとに衣裳を箱詰めして劇場に運搬。

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今回の取材の主役である衣裳部門責任者の渡邉里花さん。四季芸術センターのエントランスすぐの壁に貼られた伝統の教訓の前にて。演出家で創立者の浅利慶太さんが掲げた教訓で、渡邉さんが好きなのは「慣れだれ崩れ=去れ」。慣れるとしだいにダレてしまい、いずれそれが崩れにつながることを戒めてます。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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