酒漬けコーヒー豆でほろ酔い気分!? コーヒーコンサルタントの実験的ラボショップがオープン

  • 写真・文:一史

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川崎市の新興住宅地にオープンした「ロースト デザイン コーヒー B-side」。

ハンドドリップでお湯を注ぎいれたとき、ふわっと酒のラムやウイスキーの香りが立ち上る。コーヒーを淹れる動作が止まるほどの不思議な体験だ。カップに注ぎ口に含むとまたもや驚きが。舌でも酒の風味を感じ、同時にコーヒーの甘みやコクもしっかりと味わえる。豆はアフリカのエチオピア産やグアテマラ産のシングルオリジン。すっきりとした味わいは良質な単一品種ならではかもしれない。開発したコーヒーコンサルタントの三神 亮(以下、亮)がこの“酒漬けコーヒー豆”製造の秘訣を次のように教えてくれた。
「酒のコーヒーである『インフューズド』が知られるようになったのは、2015年にアメリカの『セレモニー・コーヒー・ロースターズ(Ceremony Coffee Roasters)』によるウィスキーの樽に入れた豆がきっかけだと思います。そのやり方の名称は『バレルエイジド』といいます。面白い試みでしたが樽だと香りだけがつき酒の味にはならない難点がありました。そこで僕は自分で直接酒に浸すことにしました。ただし浅煎りスペシャルティコーヒーを使うと、香りも味も酒に負けてしまって。そこで生豆選び、焙煎、コーヒーに合う酒を研究し実現させたのが、わたしたちの店『ロースト デザイン コーヒー(Roast Design Coffee)』が提供している、『インフューズドコーヒー』と名付け商品化した3種類です」
それぞれスコッチウイスキー、バーボンウイスキー、ラムとの組み合わせで、アルコール成分はほぼ飛んでいる。車の運転時や、酒を受け付けない体質の人でも安心だろう。このコーヒーは少量のミルクや甘味を足したりアレンジレシピもよく似合う。重要なのはコーヒーと酒の風味との最適なバランス。そのバランスこそ亮さんが試行錯誤で導き出した黄金比率である。

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生豆を酒に漬けて長期間寝かせ、その後に焙煎したインフューズドコーヒー「スコッチ ウイスキー・エチオピア イルガチェフェ イディド」。

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グアテマラ産高級ラム酒に漬け込んだ「ロン・グアテマラ サンタクルス」。

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亮さんはワールドロースティングチャンピオンシップ日本代表焙煎コーチ、ジャパンバリスタチャンピオンシップ認定審査員といった実績を持つスペシャルティコーヒーの専門家。妻であるベテラン焙煎士の三神仁美(以下、仁美)が経営を担当し、自身が商品開発したコーヒーを扱う店「ロースト デザイン コーヒー(Roast Design Coffee)」が神奈川県川崎市の新百合ヶ丘にある。あえてローカルなエリアに特別なシングルオリジンの豆を運んだ彼らが2023年6月5日(月)、近隣エリアである向ヶ丘遊園/登戸に第2号店「ロースト デザイン コーヒー B-side」をオープン。スタイリッシュなカフェをつくるため席数が多い店にしたのかと思いきや仁美さんいわく、
「この店構えですとカフェに見えますよね。でもコーヒー豆の販売やワークショップを主目的にした空間なんです」
豆はネット購入もできるが、スタッフが客と対話するコーヒー店が目指されている。ワークショップやセミナーは焙煎士、バリスタらの業界人が主な対象だ。

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1フロアの店内は写真より横に広く、壁面にも座れるシートが用意されている。

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焙煎と店の運営を手掛ける三神夫妻。右が三神 亮、左が三神仁美。2022年に文芸社より刊行された亮さんの著作「Coffee Fanatic三神のスペシャルティコーヒー攻略本 “コーヒー・ファナティクス"(概論/焙煎/抽出) 」のレビューはAmazonにて。
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レギュラーで扱うシングルオリジン3種。右から、「エチオピア イルガチェフェ イディド」、「エチオピア グジ ウラガ ナチュラル」、「グアテマラ サンタクルス」。
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「白い花の香りと紅茶のような風味」と同店が表現する華やか&爽やかな「エチオピア イルガチェフェ イディド」は、オンラインストアでもトップクラスの人気。

ロースト デザイン コーヒーの基本的な豆は浅煎りのシングルオリジン。ほぼ通年で展開する品種以外は、仕入れ状況によりランダムに入れ替わる。 価格は平均的に100gで税込¥900〜1,200で、シングルオリジンの自家焙煎をする他店と比べると平均的か、やや高めといったところか。プロ中のプロが手掛けた本物志向の焙煎豆と思うと買い得に感じてしまう。コーヒー道を歩む基準として、さまざまな豆をここで購入して味を知るのも楽しそうだ。

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仁美さんがハンドドリップを実演。店の抽出器具の基本はペーパードリップ。「お客さまに親しみのある器具を使うようにしています」とのこと。
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カフェではないためフード類はテイクアウト用クッキーなどごくわずか。インフュージョンのコーヒー豆で酒のフレーバを入れたティラミスのみがB-sideのレギュラースイーツ。
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B-side店長の宮澤陽介。IT業界のコンサルタントからコーヒー分野に転職し、ロースト デザイン コーヒーのファンになった経歴の持ち主。

カフェを目的にする店ではなくても、コーヒーメニューは豊富だ。販売中の豆が提供されるから、気になる豆を体感できる。
最寄り駅が小田急線・新百合ヶ丘駅の1号店も、向ヶ丘遊園駅/登戸駅(ともに駅から徒歩5分ほど)の2号店も、三神夫妻は意図的にローカルエリアへ出店している。なぜならサードウェーブコーヒーの流れをつくったアメリカの流儀を尊重しているから。二人の意見を代表して亮さんが現代のコーヒーカルチャーを語った。
「オリジナルの焙煎豆で世界的に知られるロースターは、アメリカのなかでも先鋭都市から離れた場所で誕生してきました。サンフランシスコ、シアトルといった街であり、ニューヨークではなかったんです。例えば『スタンプタウン・コーヒー・ロースターズ(Stumptown Coffee Roasters)』はオレゴン州ポートランドが発祥。自宅のガレージでの焙煎から活動をはじめてます。スターバックスの流行が落ち着いてきた20年ほど前のこと。地域のコミュニティを大切にしたローカルさがコーヒー文化でしょう。地域とともに成長していくものです。わたしたちもそのような存在でありたいと願っています」
コーヒー豆専門輸入商社に勤めていた亮さんも、「ノージーコーヒー(NOZY COFFEE)」出身の仁美さんも、 家での焙煎から独立のキャリアを積んできた。

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2023年6月現在の店内メニュー。チャイラテ、キッズ向け、ティラミスを除きすべてシングルオリジンコーヒーだ。

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夏のメニューに加わる予定のアイスドリンクを亮さんがいち早く披露。炭酸ガス仕様のビールサーバーで注がれたものは一体……!?
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見た目も味わいもまるでビール!コーヒー豆の酸味がこのような味を生むとは驚きの体験だった。

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主たる焙煎は新百合ヶ丘の店で行い、こちらにはコンパクトなマシンのみを置いている。自家焙煎を行うプロ向けセミナーで使う予定だ。
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豆を購入するともらえるミニパンフに書かれたドリップマニュアル。「難しいと思う人は、ともかく豆の分量をきちんと測ることを心がけてください。それだけで大きく違います」と亮さん。

店の運営を担う仁美さんにとって、ローカルエリアへの出店は大きなチャレンジだったようだ。
「スペシャルティコーヒー、シングルオリジンコーヒーがまだ有名でないなかで、最初の店はわたしたちの“攻めの姿勢”でした。普通のコーヒーとの違いを地域のお客さまにお伝えしたくて現在まで続いています。2号店のB-sideは店内が広く、イベントを開催しやすくなりました。住宅地から発信していく目標に近づく店になれたと思っています」
“わざわざ行きたい店”を狙った戦略でなく、コーヒーカルチャーの文脈に沿ったロースターであるロースト デザイン コーヒー。新店「B-side」で新たなフィールドに歩みを進めるに違いない。

Roast Design Coffee B-side

神奈川県川崎市多摩区登戸2499 GRANT’s48 102号室
営業:11時~19時
定休:水曜(祝日時は営業)
https://roast-design-coffee.com
www.instagram.com/roastdesigncoffee.b.side

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【画像】酒漬けコーヒー豆でほろ酔い気分!? コーヒーコンサルタントの実験的ラボショップがオープン

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川崎市の新興住宅地にオープンした「ロースト デザイン コーヒー B-side」。

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生豆を酒に漬けて長期間寝かせ、その後に焙煎したインフューズドコーヒー「スコッチ ウイスキー・エチオピア イルガチェフェ イディド」。

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グアテマラ産高級ラム酒に漬け込んだ「ロン・グアテマラ サンタクルス」。

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1フロアの店内は写真より横に広く、壁面にも座れるシートが用意されている。

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焙煎と店の運営を手掛ける三神夫妻。右が三神 亮、左が三神仁美。2022年に文芸社より刊行された亮さんの著作「Coffee Fanatic三神のスペシャルティコーヒー攻略本 “コーヒー・ファナティクス"(概論/焙煎/抽出) 」のレビューはAmazonにて。
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レギュラーで扱うシングルオリジン3種。右から、「エチオピア イルガチェフェ イディド」、「エチオピア グジ ウラガ ナチュラル」、「グアテマラ サンタクルス」。
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「白い花の香りと紅茶のような風味」と同店が表現する華やか&爽やかな「エチオピア イルガチェフェ イディド」は、オンラインストアでもトップクラスの人気。

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仁美さんがハンドドリップを実演。店の抽出器具の基本はペーパードリップ。「お客さまに親しみのある器具を使うようにしています」とのこと。
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カフェではないためフード類はテイクアウト用クッキーなどごくわずか。インフュージョンのコーヒー豆で酒のフレーバを入れたティラミスのみがB-sideのレギュラースイーツ。
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B-side店長の宮澤陽介。IT業界のコンサルタントからコーヒー分野に転職し、ロースト デザイン コーヒーのファンになった経歴の持ち主。

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2023年6月現在の店内メニュー。チャイラテ、キッズ向け、ティラミスを除きすべてシングルオリジンコーヒーだ。

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夏のメニューに加わる予定のアイスドリンクを亮さんがいち早く披露。炭酸ガス仕様のビールサーバーで注がれたものは一体……!?
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見た目も味わいもまるでビール!コーヒー豆の酸味がこのような味を生むとは驚きの体験だった。

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主たる焙煎は新百合ヶ丘の店で行い、こちらにはコンパクトなマシンのみを置いている。自家焙煎を行うプロ向けセミナーで使う予定だ。
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豆を購入するともらえるミニパンフに書かれたドリップマニュアル。「難しいと思う人は、ともかく豆の分量をきちんと測ることを心がけてください。それだけで大きく違います」と亮さん。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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