ボルボが年内に発売するピュア電動「EX30」は、都市にぴったりのコンパクトSUVだ

  • 文:小川フミオ
  • Photography Volvo Cars
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さいきん、1970年代から80年代にかけての四角いボルボが一部で流行っているようだけれど、じっさいのボルボカーズは、未来に向けてどんどん進化中だ。

2030年にはラインナップをすべてピュアEVにすると以前から”公言”していたボルボ。尖兵は22年秋に発表した大型SUVのEX90だ。

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ボルボとしては4台目になるピュアEVで、全長4.2メートルのコンパクトさはブランド初

 

続いて23年6月。ボルボは、EX90とは対照的にコンパクトなモデル、EX30を送りだした。発表されたのは、ミラノのチェントラーレ地区。

一帯で有名な建築は、ステファノ・ボエリによる「垂直の森」。歩いて5分ぐらいの中央駅そばには、ジオ・ポンティの「ピレリビル」がある。

Pen Onlineをチェックしている方にとって興味ぶかいんじゃないかと思うのは、やっぱり、EX30のデザインだろう。

 

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人間的な表情を感じさせることに心を砕いたとはデザイナーの弁

 

ひとつは外観。なにしろ、「スターウォーズの大ファンなので、ボバ・フェットをイメージしてデザインした」と、エクステリアデザインを統括するT・ジョン・メイヤー氏の証言がある。

ピュア電動車であることを強調するため、エンジン車のような開口部(グリルともいう)をもたないのが特徴だ。

かつヘッドランプカバーはなく、パネルにLEDライトが埋め込まれ、印象的なT字型を形作る。ボルボが「トール(神が雷を起こすための)ハンマー」とするモチーフだ。

 

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外装色も内装色も落ち着いた北欧の自然からインスピレーションを得たものという

 

もうひとつ、デザイン上の特徴は、インテリア。スカンディナビアンデザインと強調される、自然をモチーフにしたような、ゆるやかなカーブが全体に見られる。

ずいぶんシンプルなテーマだ。そこで目を惹くのは12.3インチの大型モニター。

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12.3インチのモニターは縦にいくつかのレイヤーで機能が分けられ触れる機会の多いものは下に、ぱっと見て情報を得る必要があるものは上にとデザインされている

 

バッテリー残量の表示にはじまり、ナビゲーション、音楽、各種コマンドが音声でできるグーグルアシスタントの操作など、多くのことが、ここで出来る。

室内は「ルーム」と呼ばれる4つのデザインテーマから選べる。スポーティなものもあれば、リラックスを目指したものも。

 

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デニム再生時に出る糸を使った素材とボルボ独自の手ざわりのいい人工皮革とを組み合わせたシート表皮(写真=筆者)

 

地球環境保全(サステナビリティ)を重視するボルボでは、車体に使う金属をはじめ、リサイクル素材に積極的と謳う。

室内では、窓枠に使う合成樹脂をリサイクルしたダッシュボードの加飾パーツをはじめ、再生プラスチックを混ぜたウールや、デニムをリサイクルするときに出る糸を使ったシート表皮などが採用された。

じっさい私が感心したのは、リサイクル素材のシート素材の風合いのよさ。

立体的で造型的にも美しいシートを覆う素材として、手触りもいいし、色も落ち着いていて、ボルボの魅力は内装、とする従来のオーナーたちの興味も惹くと思う。

 

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シートファブリックのデザインを担当したレカ・メーナ氏(写真=筆者)

 

全長4.2メートルと、トヨタでいうとヤリスクロスよりわずかに大きいだけのEX30。

安全、高い環境適合性、スポーティ、スカンディナビアンデザインと、従来からボルボ車が強調してきたポイントの数かずに、今回は「都市で扱いやすいコンパクトさ」を、壇上に立ったジム・ローワンCEOはつけ加えた。

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ダイソンCEOからボルボカーズCEOへと移ったスコットランド出身のジム・ローワンCEO

 

「東京だととくにこのぐらいのサイズが扱いやすいでしょう?」。会場で会ったローワンCEOは、ニコニコ笑いながら、そう話しかけてきた。

もちろん、東京のためだけに開発されたわけではなく、世界の各都市で全長4メートルを少し超えるぐらいの小型電動SUVの需要が増えていくという見通しに基づいてのこと。

 

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車体のリアセクションは厚みを感じさせるデザインなのが特徴的で、背景には「垂直の森」(写真=筆者)

 

じっさいにミラノのど真ん中を会場に選んだのは、これからのマーケットとの関連性を印象づけるため。そういう意味のことを、ボルボの広報担当者は話してくれた。

EX30のデザインコンセプトは、都市型のコンパクトカー。ただし「オフロードにも行けるイメージも大切」(デザイナーのメイヤー氏)ということで、車体全高は1.5メートルを超える。

 

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ボルボ車のデザイン的価値のすべてを、小さなフォーマットで具現化したと謳われる

 

視覚的にも車体の厚みをあるていど強調していて、とくにリアセクションはクオーターパネルまわりの造型でボリュウム感をだしている。

リアコンビネーションランプの形状も、ボルボ車のデザインテーマであるC字型(というよりカタカナの”コ”の字)を踏襲しつつ、今回はその上にもうひとつ補助的に加えている。

リアセクションのボリュウム感をだすことは、後輪の存在感(つまりAWDのイメージ)とともに、余裕ある荷室容量、つまりSUVユーザーが重視する利便性を意識させる効果ももつ。

フロントマスクは、「ボバ・フェット」だとしても、じっさいは面の構成や、かすかに各所に入れられたキャラクターラインが緊張感を生んでいて、視覚的にはスポーティですらある。

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エクステリアデザインを統括するTジョン・メイヤー氏(写真=筆者)

 

おもしろいことを、(デザイン)業界では「ティージョン」と呼ばれているメイヤー氏は言う。

「ボバ・フェットがかぶっているのはヘルメット。その中には人間(設定はクローンってことになっていたはず)が入っています。スターウォーズを好きなひとなら、EX30を見て、同様に人間的な要素が詰まっていることを感じてくれるのではと期待しています」

人間中心でデザインした、とは今回、ローワンCEOもさかんに述べていた。

そのためにUX(ユーザーエクスペリエンス)に力を入れている。北欧的と強調される、自然のやわらかな色合いを模した車体色と、インテリアも刺激を抑えたもの。

 

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モニターのボタンで「Calm」プログラムを呼び出せる(写真=筆者)

 

とくにユニークなのは「Calm(静けさ)」と名付けられた機能。モニタースクリーンに北欧の4つの風景(森林や海やオーロラなど)を映し出すことができる。

画像はゆっくり動き、なんとなくイメージの合った音楽が、ウインドシールド下に、今回あたらしく採用されたハーマンカードンのサウンドバーを中心に車内に流れる。

「夜間にとくに有効で、目にかかる負担を減らすことができる」とはボルボの説明。まあ、ドライバー以外の乗員のための装備だろう。じっさいに試してみたい機能だと私は思った。

ボルボ・カーズでは、2030年にラインナップの完全ピュア電動化をはかるとともに、環境負荷を減らすことに熱心に取り組んでいる。

 

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ミラノ市内に(あえて)大きく、小さいことの価値を謳ったEX30のビルボードが展示されていた(写真=筆者)

 

リサイクル部品の多用もそのひとつだし、製品とともに生産過程で、再生エネルギーなどで、二酸化炭素排出量を、2018年比で約40パーセント減にする目標を掲げる。

EX30は、リアモーターの後輪駆動と、前後2基のモーターによる全輪駆動があり、バッテリーはエネルギー密度は低いけれど廉価なもの(LFP)が、都市中心の使用でいい、というひと向けのグレードに用意される。

いっぽう、「運転を楽しみたい気持ちに応えるのも大事」(チーフオペレーティングオフィサーのハビエ・バレラ氏)と、パワフルな仕様も設定。

2基のモーターと大容量のバッテリーにより、静止から時速100キロまでを、ちょっと前のスーパースポーツカーなみの3.6秒で加速するという。

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スイッチや機能はほとんどを中央部に集中させたのがデザイン上の特徴で、もの入れは、まるで日本車のようにさまざまな工夫がほどこされている

 

23年の11月から欧州を中心にデリバリーが始まり、北米や中国でも売られる。日本市場にも年内からの販売が始まるようだ。

欧州での価格は、スターティングプライスが約3万6000ユーロで、高性能仕様だと5万ユーロを超えるとか。日本での販売価格がいくらになるかは「未定」(ボルボカージャパンの広報担当者)という。

「目立たないことで目立つのがボルボの美点」。23年春からグローバルヘッド・オブ・デザインに就任したジェレミー・オファー氏が、会場でそう定義してくれた。

 

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かつて西独時代にグッドデザインで神話的な存在になった家電メーカー、ブラウンのデザインディレクターを務めていたディーター・ラムスがアイドル的存在というオファー氏(写真=筆者)

 

そんなピュアEVが欲しいひとは、少なくないんじゃないかと、私も思う。

なにはともあれ、ボルボがピュアEVに真剣に取り組んでいることの証左といえるモデルだ。

そういえば、24年には車高を上げたEX30クロスカントリーの発表も予定されている。スタイリングは早くも、ミラノでの発表会の場で公開された。

 

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ローワンCEOの肝煎りで開発されたクロスカントリー(のおそらくコンセプトモデル)も会場内に展示されて注目を集めていた