1950年代のル・マンカーが、現代に蘇る、究極のレースカー、ジャガーCタイプ、Dタイプコンティニュエーションに乗る!

  • 写真:ジャガー・ランドローバー・ジャパン
  • 文:藤原彦雄
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今年、2023年に記念すべき100周年を迎えたル・マン24時間耐久レース。F1モナコGP、インディ500マイルと並ぶ世界3大レースのひとつに数えられるル・マンは、数々の名車を生み出してきた。

そのひとつが1950年代のヒーローというべき「ジャガー」のレーシングカーだ。

48年に発表した2シーター・スポーツカー「XK120」は、デビューするやいなやロードカーとしてだけでなくレースにおいても大きな成功を収めることになる。それを受けジャガーはXK120をベースとした本格的なレーシングカーの開発を開始。ウィリアムズ・ヘインズ設計のチューブラー・フレーム・シャシーにXK譲りの3.4リッター直6DOHCエンジンを搭載し、マルコム・セイヤーの手による流麗なボディを被せた「XK120C(Cはコンペティションの意)」をつくり上げた。

ほどなく「Cタイプ」と呼ばれるようになったこの2シーター・スポーツ・レーサーは、デビューイヤーとなった51年のル・マンでいきなり総合優勝。その他にも52 年のランスGPなど数多くのレースで勝利を挙げたほか、4輪に先進的なダンロップ製ディスクブレーキを装着し臨んだ53年のル・マンでも2度目の総合優勝を挙げている。

そして続く54年にCタイプの後継として発表されたのが「Dタイプ」だ。最大の特徴は、航空機技術を応用したセンターモノコックをもつシャシー、そしてセイヤーの手がけた巨大なテールフィンを備えたコンパクトで空力的なボディスタイルにあった。また搭載するXKエンジンもビッグバルブや45口径ウェーバー・キャブレターなどの採用で大幅にパワーアップされただけでなく、低重心とボディの空力処理を優先するためドライサンプ化した上に8.5度傾けて搭載されたのも特徴といえた。

こうして完成したDタイプは54年のル・マンこそ2位に終わったものの、55〜57年まで驚異的な3連覇を達成。そのほか世界各地のスポーツカー・レースでも猛威をふるい、ジャガーに黄金期をもたらしたのである。

しかしDタイプの歴史はすべてが順風満帆とはいかなかった。ジャガーではCタイプ同様、Dタイプもカスタマー用に製造するのだが、販売はかんばしくなく工場には引き取り手のないDタイプが溢れる結果となった。そこで彼らは25台のDタイプをロードカーにコンバージョンした「XKSS」を開発し、販売を開始する。ところが57年2月12日、ブラウンズレーン工場で大火災が発生。9台のXKSSとともにDタイプの生産設備も焼失してしまった。

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1953年のワークスカーをモチーフにした「Cタイプ・コンティニュエーション」。1台につき9カ月かけて製作される。

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現在のジャガー、ヘリテイジ部門である「ジャガー・クラシック」では2014年の設立以来、「Eタイプ・ライトウェイト」(14年)、「XKSS」(17年)に加え、20年に本来100台製造する予定だったというDタイプの未生産分25台、そして21年には16台のCタイプのコンティニュエーション・モデルの製造を行なってきた。

コンティニュエーション・モデルとは、外観はもちろん、シャシーやサスペンションなどの構造から内装まで、オリジナルと寸分違わず再現されたうえで、メーカーや製作者などから正式な認証を受けた、公認の復刻モデルのことだ。

今回日本に持ち込まれたCタイプは53年のル・マン優勝車、Dタイプは56年のロングノーズ仕様をモチーフに製作されたものだが、FIAのホモロゲーションを取得するために4点式シートベルト、自動消火装置、安全タンクといった現代のヒストリックカー・レースに対応する安全装備を備えていること、そして耐久性を考慮しオリジナルより肉厚が若干厚いアルミパネルを使用している以外は、オリジナルと同様に仕上げられている。

 世界的にコンティニュエーション・モデルを製造することには賛否があるように、長らくヒストリックカーの世界に携わってきた人間として、メーカー自身が歴史を書き換えてまで“本物”を追加製造することには、正直違和感がある。

ではコンティニュエーション・モデルをどう評価すべきか?

じつはこれまで何度も実車に接し、どういうモデルであるかは理解していたが、CタイプもDタイプも、実際にドライブするのはこれが初めてだ。

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大径ステアリング、4速MT、スミス製メーターなど、当時のディテールを忠実に再現したコクピット。

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220psを発生する3.4リットル直6DOHCのXKユニット。キャブレーターは3基のウェーバー40DCO3を装備。

 

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1950年代の耐久レーサーらしく、ドライバー脇にはスペアのスパークプラグ・ホルダーが備わる。

 

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存分にポテンシャルを味わいたいなら、最適な選択肢

まず220PSの3.4リッター・エンジンを積むCタイプは、ベースになったXK120を一皮剥いて軽快にしたような乗り味で、コーナーではあまりシャープとは言えない大径のステアリングを力任せに回しながら、積極的にアクセルペダルを踏んで“お尻で”曲がらせるタイプ。また直進安定性がよいうえに、4輪ディスクブレーキのタッチ、制動力ともに十分なので、ル・マンではかなりのアドバンテージになったことが伺える。

一方Dタイプは、動きが明らかにCタイプよりも軽く鋭い。その要因はドライサンプ化されたエンジン、モノコックシャシーなど、Cタイプより重力物が低く、中央に纏められているからだろう。行きたい方向に軽めのステアリングを切り、アクセルペダルを踏むだけで、ミドシップのフォーミュラカーのようにクルッと面白いように向きを変えてくれるのだ。確かに早めにアクセルを開けすぎると、すぐにリヤタイヤが滑り出すのだが、動き出しが分かりやすくコントロールも容易いので不安感はまったくない。よくグッドウッドでパワースライドしながらコーナーを駆け抜けていくDタイプの姿を見たが、バイアス構造のダンロップ・レーシングを履くこのクルマの場合、グリップ走行よりあえて滑らせた方が速く走れる……ということが理解できた。

こうした各モデルの特徴、そして両車の違いをクリアに体験できたのは、この2台が当時のスペックを忠実に再現した“新車”だからだ。もし貴方が個別のヒストリーよりも、機械としての鮮度にこだわり、存分にそのポテンシャルを味わいたいと思うなら、コンティニュエーションは最適な選択肢といえる。そのためにCタイプに150万ポンド、Dタイプに175万ポンドを払う価値は十分にある。

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マルコム・セイヤーによる空力的ボディが特徴のDタイプ。1955年のショートノーズも選択可能だ。
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見た目以上に居心地のいいコクピット。ギヤボックスがクロスレシオのフルシンクロ4速MT。

 

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ビッグバルブ化された3.4リットル直6XKユニットは3基のウェーバー40DCO3キャブを備え、320psを発生。

 

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Cタイプ、Dタイプの後方に並ぶのは、1960年代を代表するEタイプ(左奥)と現代のFタイプ(右奥)。

 

ジャガーCタイプ・コンティニュエーション


エンジン:直列6気筒DOHC
排気量:3442cc
エンジン最高出力:218.5bhp/5250rpm
駆動方式:FR(フロントエンジン後輪駆動)
車両価格:1,500,000ポンド(約¥273,300,000)〜
※2023年6月23日現在

ジャガーDタイプ・コンティニュエーション

エンジン:直列6気筒DOHC
排気量:3442cc
エンジン最高出力:295bhp/6000rpm(ショートノーズ)320bhp/6000rpm(ロングノーズ)
駆動方式:FR(フロントエンジン後輪駆動)
車両価格:1,750,000ポンド(約¥318,850,000)〜
※2023年6月23日現在


問い合わせ先/ジャガーコール(フリーダイヤル)0120-050-689(9時~18時、土日祝を除く)