
マクラーレン・アルトゥーラは、次の10年を見据えた新しい時代のスーパースポーツだ。外部電源から充電できるプラグインハイブリッドシステムを採用していることに目を奪われがちであるけれど、それだけではない。電動化に最適化した基本骨格をゼロから開発するなど、クルマづくりそのものを見直している。次代のスーパースポーツがどのようなドライブフィールを提供するのか。軽井沢で行われた試乗会での印象をお伝えする。
まず写真をご覧いただくとわかるように、アルトゥーラはデザインから個性的だ。ひけらかすような造形はあえて避け、シンプルではあるけれど有機的なラインでまとめている。このブランドのデザイン哲学は「機能のためのフォルム」というもの。細部に至るまで、それぞれの形には「空気抵抗の削減」や「軽量化」あるいは「エンジンの冷却」など、必ず意味があるのだ。

ドライバーズシートに座った瞬間、背中から腰にかけて、ふんわりと包まれるような掛け心地に感心させられる。クラブスポーツ・シートと呼ばれる新たに開発されたシートの快適性は抜群で、数時間におよぶドライブでも疲労をまったく感じさせなかった。
システムを起動するとデフォルトでEモードが選択され、モーターの力だけで走りだす。いわゆるEV走行で無音、無振動。スムーズな加速は、まさに新時代のスーパースポーツだと感じさせられる。


スピードメーターが60km/hを超えたあたりで最高出力3ℓのV型6気筒エンジンが目覚め、モーターとのコラボが始まる。モーターとエンジンの連携はすばらしくシームレスで、エンジン車とも電気自動車とも違う、新鮮なファン・トゥ・ドライブがある。
一般に欧米の高性能ハイブリッド車は「燃費のために仕方なくモーターを付けました」と感じさせるケースが多い。いわば後ろ向きのハイブリッドだ。けれどもこのクルマは違う。「モーターを使って速くて楽しいクルマをつくろう」という意気込みが伝わってくるのだ。

スポーツドライビング時に強い横Gを受けても身体をしっかりホールドするサポート性能と、快適性能を併せ持つ、新開発のクラブスポーツ・シート。
抜群に乗り心地がいいのも、アルトゥーラの特徴だ。乗り心地のいい理由はふたつ。まず、超軽量、低重心を極めた強靭な車体だから、サスペンションを硬くしなくても安定するのだ。しなやかな足まわりでも、コーナーで踏ん張る。
もうひとつ、マクラーレン・プロアクティブ・ダンピング・コントロールの手柄も見逃せない。これは各種センサーから送られる加速度などの情報を処理して、瞬時にサスペンションをセッティングする先進テクノロジー。さらに、前述したシートの出来のよさもあって、東京〜大阪ぐらいならノンストップで走れると思えるほどの快適性を実現している。

パワートレインとシャシーのドライブモードを切り替えるダイヤルは、メーターパネルの左右の上隅に位置する。視線を動かさずに操作できるから安全だ。
「静か」とか「快適」という点に驚かされたけれど、そこはマクラーレン。ドライブモードを「Track」に切り替えてアクセルペダルを踏み込むと、脳天に突き抜けるようなエグゾーストノートとともに、怒涛の加速を味わわせてくれる。ハンドリングの正確さは、さすがF1との血縁を感じさせるもので、まさに意のままにコントロールできる。
物腰のやわらかい洗練された紳士と、圧巻のアスリート。マクラーレン・アルトゥーラは、ふたつの顔を持つスーパースポーツなのだ。

「Sport」モードや「Track」モードでたっぷりとバッテリーに充電して、ホテルの車寄せや住宅地などでは静かにEV走行をするという、周辺に配慮したスマートな使い方もできる。
マクラーレン・アルトゥーラ
サイズ(全長☓全幅☓全高):4539☓1913☓1193mm
排気量:2993cc
エンジン:V型6気筒ツインターボ
最高出力:585ps/7500rpm
最大トルク:585Nm/2250〜7000rpm
システム最高出力:680ps/7500rom
システム最大トルク:720Nm/2250rpm-7,000rpm
駆動方式:MR(ミドシップ・リア駆動)
車両価格:¥30,700,000(税込)〜
マクラーレン https://cars.mclaren.com