エネルギー問題を克服するために、宇宙空間への太陽光発電設置計画が進行中

  • 文:美矢川ゆき

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@Dezeen – website 

仏パリに本部があるESA欧州宇宙機関は、宇宙空間への太陽光パネル設置が可能かを調査中だ。宇宙にクリーンエネルギー源を見出す「ソラリス計画」の一環で、 地球上のエネルギー問題の克服を狙う。現在、欧州では電気代の高騰、温暖化による電気消費量の増加など、現実的なエネルギー問題に直面している。Dezeenによると、 ESA欧州宇宙機関は、24時間太陽光を取り込むことができる宇宙太陽光発電(Space-Based Solar Power : SBSP)が、将来的に「継続的に利用可能なエネルギー源」となり、気候変動対策やエネルギーの蓄積につながる可能性があるとしている。ESAのソラリス計画は、2022年11月にESA理事会から資金提供を受け、現在その基礎を固めている。 2025年の開発プログラムスタートを視野に、早ければ2030年代には、宇宙を利用した太陽光発電がヨーロッパのクリーンエネルギーの需要を満たし、ヨーロッパ大陸の温室効果ガスの排出量ゼロ目標達成に貢献する可能性があるとしている。

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宇宙から地球に電力を供給するソーラーファーム

宇宙を利用した太陽光発電は、太陽を24時間利用できるだけではなく、太陽光の強度が地表よりもはるかに高いという利点がある。また、雲に邪魔されることもないため、最大限に太陽光を取り込むことができる。ESA欧州宇宙機関は、太陽電池パネルを取り付けた衛星が地球を周回するような、大規模な太陽光発電「ソーラーファーム」を想定。SpaceX社が現在テスト中のStarshipのような、低コストで再利用可能なロケットを打ち上げ、宇宙空間でロボットによるソーラーファームの組み立てが可能だとしている。宇宙で集めた太陽光は、マイクロ波やレーザー光線の形で地球の受信ステーションに送信。地上の受信ステーションは、光電池やアンテナを使ってこのエネルギーを取り込み、電力網に供給するための電気に変換する仕組みだ。

しかし克服しなければならない課題も多い。受信局周辺の人間、動物、植物へのリスク、ビームが、電離層、大気、環境とどのように相互作用するか、ビーム干渉が航空や地上のインフラに与える影響等、さまざまな調査が必要である。ESAは現在、欧州の産業界と提携し、技術的な実現の可能性を追求。メリットとリスクの両面の研究を深めている。

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既存のエネルギーだけでは「極めて困難」

ESA欧州宇宙機関は「ヨーロッパは2050年までにネットゼロエミッションの達成を約束しました、クリーンエネルギーへの移行は急務です」とDezeenに語った。既存の再生可能エネルギーや低炭素エネルギーソリューションのみに頼っていては、この達成は極めて困難だと説明。「不安定な供給、土地利用問題、有毒廃棄物などの理由から、既存のエネルギー源を迅速かつ効果的に展開することはできません」と述べた。

宇宙技術企業Alviorの創業者であるKim Borgen氏は、Dezeenに対し、宇宙空間への太陽光発電設置は「宇宙におけるパラダイムシフト」を意味するものだと語る。「私たちがいまだに電力の大半を化石燃料でまかなっているのは、化石燃料が予測可能で、信頼性が高く、安定していて、柔軟性があるからです」と述べた。「化石燃料を置き換えるには、水力、原子力、化石燃料の特性を持つ代替電源が必要です」とBorgen氏は説明。「SBSPは、これらの特徴をすべて備えています」とした。

宇宙エネルギーの開発に携わる英エンジニアのイアン・キャッシュ氏と、スコットランド・ストラスクライド大学で宇宙太陽光発電の研究を率いたアンドリュー・ウィルソン氏はSPACE.comの取材に対し「宇宙で太陽光発電所を開発・建設するために新たに開発するべき技術はない」とし、既存の技術で可能だと説明。曇天の多い英国に設置した場合と比較して、宇宙太陽光発電は13倍の電力を生み出すことができると主張した。宇宙空間に太陽光発電所を建設するには、莫大な費用がかかるが「いったん建設されれば、地球上のどの再生可能エネルギー発電技術よりもはるかに早く元が取れるだろう」とウィルソン氏は語った。

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世界各国で進む研究 

かつてはSFの世界と考えられていた、宇宙空間への太陽光パネルの設置。しかし現在、世界中の宇宙機関が、軌道上の発電所建設の実現に向けて研究を重ねている。

米国は1978年からSBSPの調査を開始。2020年には、アメリカ海軍調査研究所が電力ビームの送電衛星の宇宙実験を行い、アメリカ空軍は2024年に「アラクネArachne」と名付けられたさらなる試験衛星の打ち上げを計画している。

一方、中国はSBSPの地上局と試験施設を開発中で、2028年に様々なターゲットへのビーム照射を試験する、出力10キロワットの実証衛星を打ち上げる予定だ。

日本も宇宙航空研究開発機構JAXAを通じてSBSPを開発しており、2015年に衛星から地上の受信機への電力送電をテストした。日本は今年、国際宇宙ステーションにソーラーパネルを展開するテストを行う予定だ。

SNS上には、「未来に希望が持てる」「素敵だけれど…宇宙からの送電に当たっても安全なのかな…」「宇宙から送られてきた電力で、地球は今より熱くならないの?」「普段使う電力を減らすことで問題を解決したい」などの声が上がっている。

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@European Space Agency, ESA - YouTube 

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