年収600万円世帯は、いくら貯蓄したらいいのか?

  • 文:川畑明美

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年収600万円の世帯では、どのくらい貯蓄したらいいのか。世帯年収600万円、夫婦とも年齢が35歳、生まれたばかりの赤ちゃんがいると仮定して具体的に考えてみよう。まず、平均の貯蓄額を調べてみた。金融広報中央委員会の『家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](2022年)』によると金融資産保有世帯における「500〜750万円未満」の収入帯の金融資産保有額は30歳代で500~700万円の金融資産を持っている方が最多だ。

続いてどんな金融商品を保有しているのかを見ていくと預貯金が57.7%と、最も多いのだが、続いて株式が28.6%、投資信託が21.3%になっている。預金だけでなく、資産を増やすことを考えている方が多くなってきたのだ。次に世帯年収600万円の手取りを考えてみよう。ご夫婦ともそれぞれ年収が300万円とすると手取りでは455円~485万円くらいになる。手取りは、ひとり235万円として今後どのくらい貯蓄していったらよいのかを考察していこう。

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まずは老後資金を考えてみよう

貯蓄の目的は、一括で購入できないモノを買うことだ。人生の中で最も費用が高いといわれる「人生の3大費用」で考えていく。人生の3大費用は下記の3つになる。


①住宅取得用の頭金

②教育費

③老後資金


まず老後資金から考えてみよう。なぜ老後資金から考えるのかというと、教育費や住宅の取得には、優遇処置があるからだ。教育費は奨学金制度もあるし、住宅の取得には、減税策や親からの援助に対しての税制の緩和もあるが、老後資金にはそういったものが少ないからだ。また、早く準備することで少額で大きく増やすことも可能なので、一番最初に考えて欲しい。

老後資金を仮に2000万円として試算してみよう。ここでは退職金は考慮せずに考えてみた。再雇用で65歳まで働くとしても、定年退職時の60歳までに2000万円準備するとして試算する。なぜなら退職金は一度に受け取らない方が節税できる可能性があるからだ。iDeCoを受け取ってから5年以上経ってから退職金を受け取ることにより、退職所得控除の制限を受けなくなるので税金を少なく抑えることができるのだ。

老後資金を年利5%で25年間積立したとすると、毎月の積立額は3万3400円必要となる。試算はウェルスアドバイザーの金融電卓を活用した。ご夫婦ならば、1人1万6,700円だ。iDeCoを利用して運用すると節税にもつながるので効率もいい。

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マイホームの頭金の準備はかなり負担

次に住宅取得のための頭金の貯め方を考えてみよう。借りられる住宅ローンの金額は、年収の7~8倍まで借入れ可能だ。しかし借りられる金額でローンを組んでしまっては、その後の生活が苦しくなってしまう。住宅は、手取り年収の5倍程度で考えるといいだろう。世帯年収600万円だと、ご夫婦それぞれで手取り235万円、2人で470万円の場合は2,350万円程度が上限としたい。

頭金と諸費用で、販売価格の20%は最低限準備したい金額だ。2,350万円の住宅ならば、頭金+諸経費で470万円だ。35歳のご夫婦ならば、準備期間は5年がギリギリだ。40歳で購入して30年ローンを組むと完済できるのは70歳になってしまうからだ。途中で繰上げ返済をするとしても40歳にはマイホームを購入したい。

準備期間が5年の場合、元本割れは避けたいので預金で準備した方が良い。470万円÷5年間で年間94万円、月7.8万円の貯蓄が必要だ。ご夫婦それぞれで準備すると3.9万円になる。毎月の給料からでは負担が大きいので、積極的にボーナスを利用したい。

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教育費は住宅費と老後資金のバランスもみて考える

人生3大費用の①住宅取得用の頭金で7万8000円と③老後資金の準備で3万3400円。合計で11万1,400円と毎月貯蓄するのには厳しい金額だ。夫婦で別々に負担しても1人分で5万5,700円。これだけでも年収に対して28%の貯蓄額になる。負担はかなり大きい。住宅取得の頭金を貯めるまでは、教育費を確保するのは難しいだろう。

5年間は住宅の頭金の確保についやして、子どもが5歳になった時点で本格的に教育費を貯蓄するとしてシミュレーションしよう。大学入学までの運用期間は13年。手取り年収の470万円の20%を貯蓄に回せるとしたら94万円。老後資金は月3万3400円で年間では約40万円なので、94万円-40万円の50万円が教育費に充てられる。月額だと約4万2000円。

再度、ウェルスアドバイザーの金融電卓を活用して試算してみよう。大学費用として700万円準備すると仮定すると13年間1.1%の利回りで準備できる。将来的にもう一人子どもが欲しいと考えると、大学費用は2人分で1400万円、年数は16年間とすると6.4%の利回りが必要になる。子どもが2人以上の場合は、資産運用も必要になるということだ。

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年収600万円の世帯でも修学支援

文部科学省が4月4日に発表した、大学などの授業料減免と給付型奨学金がセットになった「高等教育の修学支援制度」をご存じだろうか。中間層の支援拡大のため、対象となる年収上限を現行の約380万円から600万円程度に引き上げることになったのだ。ただし対象が限られている。年収600万円までの世帯のうち、扶養する子どもが3人以上いる世帯と、私立の理工農系学部に進学する場合が対象なのだ。

3人以上の子どもがいる世帯の場合、全額支援を受けられる年収270万円未満への支援額の4分の1となる。私立の理工農系への進学については、文系との授業料の差額の支援となる。制度の変更は、2024年度から。

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具体的にはいくらの支援になるのか?

具体的な金額で考えてみよう。年収が約270万円未満の住民税非課税世帯では、最大年約161万円の支援が受けられる。支援額は年収に応じて減額され、年収約300万円未満では3分の2の約108万円が最大。年収約380万円未満では3分の1になり、約53万円が最大となる。そして来年から拡大する年収約600万円の世帯は、両親と子どもが3人以上であれば最大で約40万円の支援が受けられる。理工農系の進学では、文系の授業料平均との差額が支援される予定で、30万円前後と見込まれている。

支援はありがたいが、なんとも微妙な金額なのだ。支援だけをあてにはできない。できれば独身時代から、将来のマイホームの資金を貯めておくこと。さらに子どもが生まれたら、18年後に大学費用の負担が予測できるのだから、できる限り早くから準備することだ。年収600万円は、子育て世帯の平均的な年収額。平均だから大丈夫と安心するのではなく、しっかりとお金の計画を立てていかないと教育費を支払ったら、後は何も残らずに老後破綻となってしまう可能性も十分にある。しっかりとお金の計画を立てたい。

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【執筆者】
川畑明美●ファイナンシャルプランナー 「私立中学に行きたいと」子どもに言われてから、お金に向き合い赤字家計からたった6年で2000万円を貯蓄した経験をもとに家計管理と資産運用を教えている。HP:https://www.akemikawabata.com/