高橋龍太郎のコレクションから探る、日本の現代アートのDNA。WHAT MUSEUMにて展覧会が開催中!

  • 文・写真:はろるど

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鴻池朋子『無題』(2010年) ドローイング、彫刻、歌、毛皮、アニメーション、絵本など様々なメディアを通して作品を制作する鴻池。2022年から個展『みる誕生』を、高松市美術館や静岡県立美術館などにてリレー形式で開いている。

精神科医の高橋龍太郎が収集した現代美術からなる高橋龍太郎コレクション。草間彌生、合田佐和子を起点として、1997年から本格的に収集をはじめると、日本の現代美術にフォーカスし、奈良美智に村上隆、そして名和晃平といった国際的に活躍する作家を含め、実に3000点を超える作品を所有している。またコレクションは絶え間なく現在も続き、常に新たな作家の発掘や作品の再評価を精力的に行っている。1990年代以降の日本の現代アートシーンを語る上で絶対に欠かすことのできない重要なコレクションだ。

 

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華雪『木』(2021年) 文字の由来を綿密にリサーチし、現代の事象との交錯を漢字一文字とテキストの組み合わせで表現する華雪。作品の制作だけでなくワークショップを手がけるほか、近年は舞台美術にも取り組んでいる。

WHAT MUSEUMにて開催中の『高橋龍太郎コレクション「ART de チャチャチャー日本現代アートのDNAを探るー」展』では、日本の歴史の中で築かれた文化や芸術、それに価値観を継承しつつ、独自の視点で再解釈して新たに表現している作家をピックアップ。岡村桂三郎に鴻池朋子、また山口晃や横尾忠則といった33作家の作品、約40点を展示している。同コレクションは2008年以降、国内外23の公立・私立美術館でも公開されてきたが、華雪の墨と紙のインスタレーションや束芋の掛け軸を用いた映像など、約20点の初出展作品も見どころといえる。

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手前から岡村桂三郎『白象03-1』(2003年)、『獅子08-1』(2008年) 20代にて山種美術館賞優秀賞を受賞し、新進気鋭の日本画家としてデビューした岡村。巨大な屏風状の板絵を用いたインスタレーションなどを手がけている。

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町田久美『郵便配達夫』(1999〜2005年) 町田は日本画の伝統的な画材を用いながら、現代の感性やテーマを取りこんだ作品を制作している。

バーナーで焦がした杉板に白象や獅子を描いた岡村桂三郎の作品が迫力満点だ。闇夜を連想させる暗がりの空間の中、白象が怪しげな目を向けているが、同じ展示室には自然や生命の要素を取り入れた杉本博司や井上有一らの作品が並んでいて、光と陰の中にて共鳴するような光景を見ることができる。一方で鴻池朋子は左右へと広がる4面の襖に、墨や胡粉、金箔などを用いて、鹿や髑髏によるシュールな光景を表現。また町田久美は墨の滑らかな線や岩絵具の質感を活かし、伊藤若冲の雄鶏を彷彿させるようなイメージを描いている。ともに日本で継承されてきた建築様式や素材に向き合いながら、現代アートへと昇華させた作品だ。

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山口英紀『動脈』(2008年) 大学時代に書道と篆刻を学んだ山口。そして中国美術学院に留学して水墨画を本格的に学ぶと、帰国後は高校で講師として働きながら作品を制作している。

高度な技術や手法を意味する「超絶技巧」をテーマとする展示も見逃せない。このうち山口英紀は『動脈』において、ビルの合間を高速道路が走る都市風景を水墨にて描出。写真かと見間違うほどに精緻な表現に思わずため息が出てしまう。また江戸時代の九谷焼の赤絵の技術を用いつつ、アラベスクや中世のヨーロッパを思わせる幾何学模様を表した見附正康の作品も細やかだ。「ただ心が熱く動く、好きな作品を買ってきた。」とする高橋。しかしそこには「日本文化の結晶であり、人間の心の本質であり、今の社会の姿」があったとも述べている。日本の現代アートのDNAと最前線をWHAT MUSEUMにて体感したい。

『高橋龍太郎コレクション「ART de チャチャチャー日本現代アートのDNAを探るー」展』
開催期間:2023年4月28日(金)〜8月27日(日)
開催場所:WHAT MUSEUM Space 1, 2F
東京都品川区東品川2-6-10 寺⽥倉庫G号
TEL:03-5769-2133
開館時間:11時〜18時 ※入館は閉館1時間前まで
休館日:月 ※祝日の場合、翌火曜休館
入場料:一般¥1,500
https://what.warehouseofart.org