老けることは悪なのか。「アメリカの恋人」メグ・ライアンに向けられる無邪気な悪意

  • 文:中川真知子

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誰かに向かって「老けた」というのは失礼だ。だが、なぜ相手が有名人だと例外だと思うのだろう——こう考えさせられるような出来事があった。

長らく公の場に姿を現さなかったメグ・ライアンが、友人のマイケル・J・フォックスとその妻と一緒に写った写真がインスタグラム上に公開された。久しぶりのメグ・ライアンの登場に、メディアだけでなくファンも沸き立ったが、なにより注目されたのは彼女の“顔”。すぐさま「認識不可能」などというコメントが書き込まれたのだ。 

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Michael SimonのInstagramより

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押し付けられた「アメリカの恋人」のレッテル

1981年から演技のキャリアを始めたメグ・ライアンは、86年の『トップ・ガン』で注目されはじめた。不動の地位を築くきっかけとなったのは、89年の『恋人たちの予感』。カフェでフェイクオーガズムを演じて見せ、観客の度肝を抜いた。また、その演技がメグのアドリブだったことで、映画関係者からも女優として高い評価を得たのだ。この作品をきっかけに、メグは「American Sweetheart(アメリカの恋人)」と呼ばれるようになる。メディアは彼女のクスクス笑いや成人でありながらあどけなさを残すフェイスを一斉に褒め称えた。

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91年には、映画『インナースペース』(87年)で共演したデニス・クエイドと結婚。キャリアのアップダウンはありつつも、主演女優として立て続けにロマンティック・コメディに出演した。『ジョー、満月の島へ行く』(1990)で共演したトム・ハンクスとは画面上の相性がよく、その後も『めぐり逢えたら』(1993)、『ユー・ガット・メール』(1998)で恋人役を演じている。90年代のメグは多忙を極め、キャリアも順風満帆に思えた。

だが2000年、『プルーフ・オブ・ライフ』(00年)で共演したラッセル・クロウとの不倫騒動が原因で「アメリカの恋人」としての人気を失ってしまった。「アメリカの恋人」は、愛くるしく親しみを感じさせる半面、スキャンダルとは無縁の存在であってほしいと思われていたのだろう。強いバッシングを受けたのだ。

では、メグは「アメリカの恋人」でなくなってしまたことをどう捉えていたのだろうか。2018年に開催されたIn Goop Healthというイベントに参加したメグは、グウィネス・パルトローに「アメリカの恋人と呼ばれていた当時、ほとんどの場合は楽しかった」とした上で、次のように語っている。

「自分が複雑であろうとなんだろうと、人はそれをそんなに知りたくないのです。人々は、最高か最悪かを想像したいわけ。人生には色々あって、人にも様々な複雑性があるのに、タブロイドやジャーナリズムのヘッドラインはそうではないでしょう。ツイートも同じ。アメリカの恋人なんてラベリングされたとき、私はそれが何を意味しているのかすら理解できなかった。それっていいことなのかすらわからなかった」

つまりメグは、「アメリカの恋人」という言葉で単純化されたイメージの中で生きることを強いられ、持ち上げられ、勝手に失望されたことになる。彼女が注目とキャリアの成功を楽しんでいるうちは良かったのかもしれない。だが、「有名人になりたかったわけではない」と公言している彼女は、世間の“手のひら返し”をどう見ていたのだろうか。

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激しいバッシングと「整形疑惑」

2000年のスキャンダル以降、メグのキャリアは徐々に失速し始める。と同時に、メグの“顔”に対するコメントが増え始めた。40代にもなると年齢が顔に出始めるのは当然なのだが、それをわざわざ「老けた」「劣化した」とメディアが書き立てたのだ。こういった心無い外見への誹謗中傷はメグに限ったことではないが、彼女の場合は「アメリカの恋人」だった頃の好感度の高さがマイナスに作用したのか、特にひどかったように感じる。

出演作品の減少に伴い、メディア露出も激減。本人は整形に関して否定も肯定もしていないにもかかわらず、「整形に失敗して女優のキャリアを失った」という新たなレッテルも貼られてしまった。そんなことから、メグが表舞台に立てば、顔の変化ばかりが話題になるようになった。

そんな中、メグは2015年には主演兼初監督作品の『涙のメッセンジャー 14歳の約束』でトム・ハンクスと4度目の共演を果たす。だが、再共演が話題になっただけで、映画としての成功には至らなかった。

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老けることは悪なのか

今回、メグ・ライアンが公に姿をあらわしたのは、マイケル・J・フォックスのドキュメンタリー『STILL』のスクリーニングに参加するためであり、もちろん人々に中傷されるのを目的にはしていない。その覚悟はあったのかもしれないが、若かりし頃と比較した写真を掲載して「変わった」と言われるのにはゲンナリしたのではないだろうか。というのも、人は当然老けるからだ。

ファンは、こういったメディアやSNSの書き込みに対してすぐに行動に出た。

「メグ・ライアンを放っておいてやってほしい。老化は誰にだって起こる。あなたが言うところの『認識不可能な顔』はいつの日か、鏡の中のあなたになるんだ」「口を慎んでほしい。人は老ける。美人だって老ける。老ける権利を!」「自分には、今でもメグ・ライアンはメグ・ライアンに見える。確かに老けたけれど、すごくいいと思う」

こういった擁護のコメントに共通しているのは、老いを受け入れる重要性を説いていることだ。メグ・ライアンが整形疑惑にコメントを出していないことはすでに書いたが、セレブリティの中には老化に抗うために整形を公言している人もいる。本人が満足しているのなら別だが、有名人の外見に対する過度な期待が引き起こした結果なら、老化への安易な言及は慎むべきだろう。いや、面と向かって誰かに向かって「老けた」と言うことが失礼なら、それは有名人に対しても同じだろう。

最後に、もうひとつIn Goop Healthでのメグの発言を紹介しておく。

「人は最高か最悪かを想像したがります。その中には、自分とは無関係の反応もあれば、そうでないものもあって面白いんです。だから、自分がどの鏡を見るべきかを見極める柔術の達人にならないといけないんですよ」

この言葉を額面通り受け取るなら、彼女は柔術の達人のように、メディアやSNSのレッテルやイメージをうまくかわしているのだろう。ネガティブなコメントの多さを考えると、そうであってほしいと願わずにはいられない。

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Michael SimonのInstagramより

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