いくらあれば会社をやめても安心なのか? スマホに奪われた2つの大事なモノ

  • 文:川畑明美

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 「会社に縛られないお金」の金額について考えてみたことはあるだろうか? 年収500万円の方が500万円の貯蓄があれば1年間生活はできるが、たった1年では少し心もとない。では、どのくらいの金額があれば会社をやめても安心できるのか。ここは考え方が分かれるところだ。仕事とは、お給料をもらえるからやっているものではなく、社会的報酬をもらえるという側面もあるからだ。

社会的報酬とは「あなたのお陰です」とか、「感謝します」などと人から褒められたり尊敬されたりすること。金銭的な報酬に対して社会的報酬と呼ばれている。仕事をして社会的報酬が得られているのならば、お金があっても会社を辞めたいと考えにくくなる。筆者は基本的に仕事が好きだ。それは社会的報酬を得ることができるからに他ならない。

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生活費が少なければ、少ない金額でもリタイアできる

年収と同じくらいの貯蓄があるというのは「自分の自由な意思で仕事をやめられる」という選択肢ができるという効果があるということだ。何かあれば「ノー」といえるためにも、お金が必要になるということだ。もしも「自分は正当に評価されていない」と感じたのなら貯蓄があれば、我慢する必要もなくなるということ。500万円の貯蓄は会社に縛られないためのお金ともいえるだろう。

また現在の年収が500万円であっても、年間300万円で生活ができるのであれば年間300万円の利益が享受できればいいということだ。年利5%で運用できるのであれば、6000万円の資金が必要となる(税金は考慮せず)。運用には波があるが、年間300万円で生活ができるのであれば6000万円くらいの資金があれば、多少運用のリターンが悪くなったらまた働けばいいわけだ。年間の生活費がすくなければ、自分の好きなように生きられるようになるのに、たくさんのお金を必要としない。ひとり暮らしで年間200万円で生活できるのであれば、4000万円の貯蓄があれば十分なのだ。

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昔より便利になったはずなのに…

なぜ、会社をやめても安心できる金額を考える必要があるのか。スマートフォンが普及して生活がとても便利になったのと引き換えに失ったモノを考えてみて欲しい。以前、筆者が営業職だった頃に新規の会社に伺う時は、必ず地図をコピーしてから出かけたものだ。今はスマホがあるので住所や電話番号、会社名だけでも検索できる。さらにマップが道案内までしてくれる便利な時代になった。

ところが昔よりラクになったはずなのに疲れている人が多くなっていないだろうか? それはスマホやノートパソコンといったモバイル機器が、仕事の道具になってしまったからだ。筆者が地図をコピーしていた時代は、パソコンはデスクトップ型が主流だった。少なくとも会社を出てから、パソコンで仕事をしたくてもできなかったのだ。不便ではあったが、仕事とプライベートが区切られていた。

ところが、今ではノートパソコン、またはスマホでも仕事ができてしまう。常に頭の片隅で仕事の事を考え、仕事とプライベートの区別がつかなくなってしまったのだ。会社を出ても完全に仕事が頭から離れることがなくなってしまったのだ。

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スマホによって失われたモノその1 
「時間」がなくなった?


スマホの普及でとても便利になった。ソニー生命保険が1000人に調査した「スマートフォンに関する意識・実態調査」によるとスマートフォンのおかげで手に入れたものを聞いたところ1位は「知識・情報」、2位は「便利さ」、3位は複数あり「時間」「友達」「連絡手段」となっている。

では、逆にスマートフォンによって失われたものはなにだったのか。最も多かったのが「時間」だった。次の2位は「お金」、3位「視力・目の健康」、4位「人との会話・コミュニケーション」、5位が「自由」となっている。興味深いのは、失った「時間」がダントツに多いのに対して「時間」が得られたと回答している方もいるということだ。

時間を失ったと感じるのは、コミュニケーションや好きなコンテンツに長時間没頭してしまうからだろう。逆に便利に使いこなして効率よく時間を確保できたと思える人も多いということだ。

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スマホによって失われたモノその2 
お金を奪う?

そして問題なのは、スマートフォンのせいで失った2位にお金が入っていることだ。スマホのゲームで課金してしまったり、アプリによっては課金タイプもある。または、簡単にネットショップで買い物もできてしまうのもお金を失う原因になるだろう。スマホでお金を失ってしまう原因は、暇つぶしをスマホでしているからに他ならない。暇だからスマホで友人とコミュニケーションしたりネットショップを覗いてみたりゲームをしてしまうのだ。スマホは時間の無駄遣いを増長するツールであるとアンケート調査でも明らかになっている。

ちなみに筆者は普段スマホを手元に置いていない。スマホを持たずに外出してしまうこともあるくらいだ。初めて行く場所で、スマホを忘れてしまい道を尋ねたら「スマホ持ってないの?」と、聞かれてしまった。素直に「忘れたので困っています」といったところ、かなり同情された。普通の人はスマホを忘れると、喪失感に襲われる。多大な精神的なダメージを受けるから心配されたのだろう。その日は、スマホがないのでとお金も使わなかった。モバイル決済ができず、小銭をいちいち支払うのが面倒だったので買い物も控えたのだ。モバイル決済は便利だけれども、管理をしないと使い過ぎてしまうので注意したい。

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時間をコントロールできる唯一のものは「お金」

スマホは便利だけれども、お金を使い込み、時間もコントロールできなくなってしまう可能性もあるのだ。そして時間を自分の好きに使えないので、疲れてしまう。現代人は、豊かさと引き換えに「お金」と「時間」を失ってしまったのだ。人間が幸福感を感じるのは、「人生を自分でコントロールできた」という感覚ではないだろうか。

「好きな時に、好きな人と、好きな事ができる」ことに、最も幸福感を感じると思う。時間をコントロールするには、お金がかかわってくる。たとえば年収500万円の人の貯蓄額が500万円ならば1年間仕事をしなくても生活できるということだ。つまり年収500万円の人ならば貯蓄額が500万円あれば、仕事をやめても1年間自分の自由に時間が使えるということになる。

そう考えるとお金というのは、時間をコントロールできる唯一のものなのだ。時間をコントロールできる唯一のものがお金なのにスマホで時間とお金を無駄遣いしてしまうのは残念な行為といえる。お金を稼ぐには、自分の時間を切り売りすることだ。その大事な時間を使って稼いだお金と時間をスマホで消費してしまうのはかなり矛盾している行為だろう。ここに気付かないと、お金に縁のない生活になってしまう。

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【執筆者】
川畑明美●ファイナンシャルプランナー 「私立中学に行きたいと」子どもに言われてから、お金に向き合い赤字家計からたった6年で2000万円を貯蓄した経験をもとに家計管理と資産運用を教えている。HP:https://www.akemikawabata.com/