北海道砂川市に、コスメティックブランド「SHIRO」の新工場がオープンした。
札幌からは北東に約80km。SHIRO創業の地である砂川市に誕生した新工場は、日本のものづくりの現場としてほかに例のない、ユニークな施設となっている。その計画は「みんなのすながわプロジェクト」として2021年にスタート。創業以来、製造拠点を置いてきた砂川の町を活性化しようと、ブランド創設者である今井浩恵会長が自らプロジェクトの責任者となって進めてきた。

砂川市にオープンした「みんなの工場」全景。廃校となった小学校跡地に新設された。建物を手がけたのは、若手建築家のアリイイリエ・アーキテクツ。
イメージしたのは、世界中から人が集まり、ここでしかない体験と感動が得られる場所だ。「みんなの工場」と名づけられた施設は、生産設備だけでなくSHIROのショップ、誰もが利用できるカフェ、子どものための遊び場や小さな図書館、大人がゆったりくつろげるラウンジまでを備え、従業員はもちろん国内外のSHIROユーザー、さらに砂川で暮らす市民が訪れ、快適に時間を過ごせる場所だ。
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ガラス越しに眺められる、“開かれた”工場が目指すもの

驚くことに、ここでは製造現場がガラスだけで仕切られ、訪れた人からすべて見えるつくりになっている。研究開発室から素材の前処理室、調合室や包装室まで、あらゆる工程がオープンになっているのだ。
「私たちが100年後の未来に残せるもの、残したいものはなにかと考えた時、それはものをつくる風景でした。ここでものをつくっている風景こそが、尊く、唯一100年後の未来にSHIROが自信をもって残せるものだと私自身は思っています」と、今井浩恵会長は語っている。
「私たちがものをつくる景色を残し、開発から製品化までのすべての工程を開くことで、ここに来る子どもたちがものをつくっている人の姿が原体験となり、10年後、20年後、ものをつくことが当たり前になったり。頑張っている大人たちがここを訪れて、ものづくりの風景を見て、何かの気づきを得て、それを持ち帰って、社会が良くなっていく。そんなことを願い、工場を“開く”ことを決めました」


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100年後の未来に向けて、ものづくりに光を当てる
ゴールデンウィークを控えた4月25日にお披露目が行われ、道内外の関係者やメディアが数多く足を運んだ。生産施設はひと足先に稼働しており、従業員たちはこの日もいつも通りに作業を行い、一つひとつ製品を完成させていた。開かれた工場というユニークなコンセプトは、ここで働く従業員たちに対しても、見られることで自分の仕事の価値をあらためて感じたり、働くことに誇りが持てるようになったりと、様々なプラスの効果が見込まれている。


「私たちは30年間、ひたすらものづくりをおこなってきました。日本はものをつくり大きくなってきた国だと私は思っています。SIHROが工場を開くことで、100年後の未来がものづくりにあふれることを願っています」と語った今井会長。
プロジェクトのリーダーである今井は、砂川市民を中心に多くのワークショップを実施してきた。工場のあり方を議論することから始まり、建設が始まってからも参加者と植物のたねをポットに植えたり、外壁の設置作業をおこなったり。多くのひとを巻き込みながら一歩ずつ進めてきた。
オープンは迎えたものの、周囲はまだ砂利に覆われたままで、植栽もこれから少しずつ植えられていくという。本当の完成はまだまだ先だ。この「みんなの工場」は、いちブランドのものづくりにはとどまらず、地域社会を、ものづくりを、日本の未来を変えていこうとする大きな試みの中にある。その誕生に拍手を贈りつつ、これからの歩みに注目していきたい。



みんなの工場
北海道砂川市豊沼町54-1(江陽小学校跡地)
TEL:0125-52-9646
営業時間:10時〜19時
工場:10時〜17時30分(日、祝は休み)
ショップ:10時〜19時(ブレンダーラボ最終受付18時30分)
カフェ:11時〜19時(ラストオーダー18時30分)
休日:年末年始および不定休
https://shiro-shiro.jp/