オーダー会で受注生産するデザイナーズニット、ナヤットを知ってますか?

  • 写真・文:一史
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アトリエでニットのサンプルを手に取る、ナヤット依田聖彦デザイナー。

ニットウェアがいま大人気なのは、幾つかの要素が重なった結果だと考えてます。

1. コロナ禍以降にリラックスできる服が必要になった。
2. 10年前に主流だったタイトフィットが、いまやゆったりダボダボに様変わり。ニットは大きめを選べばトレンドに左右されにくい。
3. ゆったりニットはかつて女性的、子供っぽいなどと思われたが、現代はジェンダーレスな服が浸透。
4. ほどくと糸にまで戻せる“編み”はSGDs。
5. Tシャツやスウエットより大人っぽい。

そんなニットの世界に、独自のあり方で勝負を挑むブランドがあります。
その名はナヤット(NAHYAT)
手掛ける創業者&デザイナーは依田聖彦(よだ・まさひこ)さん。
6年半のヨウジヤマモトでのニット担当を経て独立した人です。
ナヤットのスタンスが独特なのは、大きくわけて3つあるでしょう。

1. 顧客による完全受注生産(オンラインも含め一般販売しない)。
2. 年間で約10型のみの少数先鋭デザイン。
3. アルパカ、キャメル、麻などを糸からつくるオリジナリティ。

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3月に東京で行われた受注会の様子。特別な空間を3日間借り切り顧客を招いた。

「全国で受注会を行うニットブランド」と聞くと、ほっこりムードが頭に思い浮かびませんか?
みんな笑顔でニコニコしてる、温かコミュニティのイメージ。
一方でナヤットのデザイン力や追求心はモードブランドの領域です。
イギリスのポール・ハーデンやドイツのフランク・リーダーといった職人的、作家的な作風に近いもの。
購入するには受注会に参加して、半年後に納品される服を選ぶ必要があります。
ナヤットはセレクトショップに卸しをせず、自身のオンラインストアも持ちません(ごく一部の店とパートナーシップでつくる限定商品はあり)。
客が選んだ服がパーソナルな存在になり、毎年一着ずつ買い足したくなるロングライフなブランド。
ファッション性が高いのに流行とは距離を置く稀有な存在です。

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「近くで見たときの素材のニュアンス」が依田さんのデザインの流儀。

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「糸をたしなむ」思想がナヤットのベース。一着一着の服には採取した動物や植物が描かれた下げ札が。
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服が内包する情報を顧客に伝え、奥深さを楽しんでもらう下げ札。

糸のサンプルを自分で撚るなどのプロセスを経てまず糸をつくり、編地サンプルを多数用意します。
そこから発想を広げていき、ニットウエアに落とし込むのがデザイナー依田さんのデザインプロセス。
テイストの根底にあるのは“味わい深さ”でしょう。
ここに掲載している2023年度のコレクションはスモーキーな色合いで揃っています。
これまで展開してきた6シーズンのなかには強い色が用いられたときもありますが、糸自体にゆらぎのあるニュアンスはずっと変わらず。
糸一本つくるのに長い期間がかかることが依田さんいわく、「大手メーカーではつくりにくい服」なのです。

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ナヤットの基本型数は年間にニット10型。今季は新たに布帛の服が10型加わりました。
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表面のグラフィックは、アトリエでスタッフが手刺繍したもの。

いちど編んだニットを糸の状態にまでほどき、歪んだその糸で再び編み直すといった驚きの工程もあるニット。
手仕事も多いとはいえ、価格は¥40,000~50,000ほどします。
それでも顧客がリピーターになるのは、しっかりと服を選ぶ充実感、スペシャルな受注会に行く体験、つくり手の顔が見える服を手に入れる満足感。ここでしか買えない喜びなどを得られるからでしょう。
もちろん単に、「モード感と味わいとが融合してるニットは世の中で珍しいから」という理由で買いにくる人もいるはず。
服に詳しくない人から、うるさ型の服好きまでファン層が幅広いのがナヤット。

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依田さんのアトリエの一角。社会学からデザイン関連の本までが並ぶ書斎のようなスペース。

東京にある依田さんのアトリエも尋ねたこの記事の写真は、Pen Onlineでない別取材で撮影したもの。
そちらは商業メディアではありませんので、撮り手のわたしが未使用分も含めここに掲載しても問題なし。

依田さんにお会いするとたぶん、自然体のニュートラルな人に感じるでしょう。
一方で学生時代からの人生経験を伺うと、一般人とは違うユニークなエピソードがたくさん!
次回の受注会は来年の春になってしまいますが、今年と同じなら東京、大阪、京都、福岡で開かれるはず。
どうぞ足を運び(基本は予約制)、依田さんにクリエーションライフと社会的思想を直接尋ねてみては??

NAHYAT
www.nahyat.com

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「幼い娘がつたない言葉でこの髪型を『もじゃもじゃ〜。短いほうがいいー』と(笑)。ばっさり切ろうかな」と依田さん。

All photos&text©KAZUSHI

KAZUSHI instagram
www.instagram.com/kazushikazu/?hl=ja

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【画像】オーダー会で受注生産するデザイナーズニット、ナヤットを知ってますか?

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3月に東京で行われた受注会の様子。特別な空間を3日間借り切り顧客を招いた。

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「近くで見たときの素材のニュアンス」が依田さんのデザインの流儀。

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「糸をたしなむ」思想がナヤットのベース。一着一着の服には採取した動物や植物が描かれた下げ札が。
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服が内包する情報を顧客に伝え、奥深さを楽しんでもらう下げ札。

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ナヤットの基本型数は年間にニット10型。今季は新たに布帛の服が10型加わりました。
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表面のグラフィックは、アトリエでスタッフが手刺繍したもの。

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依田さんのアトリエの一角。社会学からデザイン関連の本までが並ぶ書斎のようなスペース。
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「幼い娘がつたない言葉でこの髪型を『もじゃもじゃ〜。短いほうがいいー』と(笑)。ばっさり切ろうかな」と依田さん。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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