まさにアメトラの王道。200年を超える伝統が息づくブルックス ブラザーズのブレザー

  • 文:小暮昌弘(LOST & FOUND)
  • 写真:宇田川 淳
  • スタイリング:井藤成一
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トロフィーモヘアとミラクルクリンプウールをミックスした極上の素材を使ったシングルブレストのネイビーブレザー。「MADISON FIT」と呼ばれる、ウエストに絞りがないボックス型のシルエット。フロントは3ボタン段返りで、いちばん上のボタンがラペルの返から少しだけ覗く。袖ボタンは2個。裾に入ったベントはセンター。まさにアメリカントラッドの王道とも言うべきブレザーではないか。¥103,400/ブルックス ブラザーズ

「大人の名品図鑑」ブレザー編 #1

正統な味わいとスポーティさを兼ね備えたトラッドアイテムの代表がブレザーだ。英国に出自を持ち、やがてアメリカに渡り、アメリカントラッドを象徴としての地位を確立する。日本にはアイビーブームのころに紹介され、何度かの流行を経て、いま再び注目を浴びている。今回は、世界各国から集めたブレザーの名品をお届けする。

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ひと昔前、例えば昭和の時代ならば、中学や高校の制服は男子ならば学ラン、女子ならばセーラー服が一般的だった。しかし最近では男子も女子も制服はブレザースタイルが主流。卒業したら多くの人は制服的なものは着たくないと思うもの、若い人がファッションでブレザーを着用するケースはあまり見掛けなくなった。

しかし昨今のアメリカントラディショナル、略して「アメトラ」のブームもあってか、ワードローブにない新しいアイテムとして、再びブレザーが注目されている。特に女性の間ではその傾向が顕著と言える。日本ではファッションの流行は女性から始まるのが常だ。その影響は男性にも波及していくとみて間違いないだろう。

では「ブレザー」とはどんな服を指すのだろう。1981年に初版が発行された『エスカイア版20世紀メンズ・ファッション百科事典』(スタイル社)によれば、「濃紺、または他の色の無地、あるいは縞柄の生地でつくった、金属ボタン付きのシングル、またはダブルのスポーツ・ジャケット。無地のブレードの縁飾りが付けられることもある。英国の各連隊にはそれぞれの連隊専用のブレザーがあり、それは必ず濃紺のダブルだが袖口の金属ボタンの数が異なる」と解説されている。つまり多くの紳士服同様、ブレザーは英国で生まれたものだ。

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「ブレザー」の名前の由来とは?

そのブレザーの出自については、いくつかの説があるが、そのひとつが1984年に初版が発行された『MEN’S CLUB BOOKS No.1ブレザー』(婦人画報社)に掲載されている。英国の名門大学であるオックスフォードとケンブリッジがテムズ川で対抗のボートレースを行っていたが、1877年のレースにケンブリッジから出場したのは、セント・ジョーンズ・カレッジ校のレディ・マーガレット・ボート・クラブ(以下レディ・マーガレット)。

スタート前に両校の選手が並ぶが、レディ・マーガレットの選手が揃って着用していたのが真紅のユニフォーム。その色は1511年開校の古い学寮であるレディ・マーガレットのスクールカラーであった。そして選手たちはレースのためにボートに乗り移る際に、一斉に真紅の上着を脱ぎ捨てた。その光景が燃えるように見えたので、観客たちから「おお、ブレイザー(blazer)!」と声が沸き上がり、これがブレザーの名前になったと同書に解説されている。つまりブレザーはスポーツにおけるユニフォームとして誕生したのだ。

前述の『20世紀 メンズ・ファッション百科事典』には、ブレザーの流行は英国からアメリカへと広がり、「1925年には東海岸だけでなく、西海岸までその流行は広がり、“まるで野火のように”全米をなめつくした」とまで書かれている。英国で生まれたブレザーはSNSもない時代に、全米のお洒落な男たちまでたちまち虜にしたのである。 

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ブルックス ブラザーズのスタイルを象徴する「ネイビーブレザー」

「大人の名品図鑑 ブレザー編」の第1回で紹介するのが、老舗ブルックス ブラザーズのネイビーブレザーだ。1818年創業の現存するリテイルストアでは世界最古の歴史をもち、ポロカラーシャツ(ボタンダウンシャツ)やレップタイ、シアサッカーやハリスツイードの素材など、このブランドが考案、あるいは初めてアメリカに紹介したものも多い。

同ブランドのHPにはこれらのアイコンとも言えるアイテムを紹介する「TIMELESS CLASSICS—革新的商品—」というサイトがあるが、この中に「ネイビーブレザー」が紹介されている。その解説によれば、ブレザーが英国からアメリカに伝わり、ブルックス ブラザーズのラインナップに加えられたのは1930年代。すぐに大きな流行になったという。さらに「老若男女が楽しめ、ビジネスからスポーツシーンまで、あらゆるシーン、さまざまな着こなしで活用できるブレザーは、ポロカラーシャツ、レップタイと同様に、ブルックス ブラザーズのスタイルを象徴するアイテムです」とまで書かれている。

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上着の内側に付いた伝統の織りネーム。裏地にも同ブランドの象徴であるゴールデン フリースが織り込まれている。そして仕立てはポケットまわりを生地で覆う「お台場仕立て」が採用されている。型崩れや芯地のズレなどを防ぐ職人的な仕立てで、丁寧に仕立てていることがわかる。織りネームに「1818」とあるモデルは日本製。
 

今シーズンのラインナップを見ても、多くのブレザーがラインナップされている。その中で特に注目したのは「MADISON FIT」と名付けられたブルックス ブラザーズの王道とも言えるモデル(記事トップの写真)。ナチュラルショルダーでウエストに絞りのないボックス型で、「3ボタン段返り」と呼ばれるオーセンティックな仕様がいちばんの特徴。同ブランドのアイコンとも言えるゴールデン フリースのマークが入ったゴールドのメタルボタンがフロントに3個、袖には2個ずつ付けられている。トラッドファンならずともこれぞアメトラのブレザーと呼べるデザイン。

さらに生地に使われているのがトロフィーモヘアとミラクルクリンプウールのミックス素材。ミラクルクリンプウールは芸術品とも呼ばれる素材で、弾力性に富み、ソフトでハリとコシがある。またトロフィーモヘアは世界No.1と称されるモヘアで、生後一年未満の仔山羊から年に一度刈り取られたキッドモヘアから厳しい審査によって選ばれた、最高の原毛=トロフィーモヘアが原料となる。ブレザーの素材に美しいドレープをもたらし、ネイビーの色も鮮やか。極上の素材と王道のデザイン、まさに一生モノの名ブレザーと断言できる。

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「MAISON FIT」ボックス型のシルエットだから、カジュアルなアイテムと合わせて、ブルゾン代わりにも着られる。それでも正統さを失わないのは老舗のブレザーの強みだろう。ブレザー¥103,400、ポロシャツ¥17,600、Tシャツ¥8,800、ハーフパンツ¥15,400、腰に巻いたチェックシャツ¥16,500、ベースボールキャップ¥7,700、ベルト¥15,400/すべてブルックス ブラザーズ
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メタルボタンに刻印されたゴールデン フリースのマーク。1430年、ブルゴーニュ侯爵フィリップ3世が花嫁を称えようと創設した創設したゴールデン フリース騎士団。その騎士団の一員である証となったのが、リボンに吊り下げられた子羊が描かれたこの紋章だ。この紋章はブルゴーニュ地方に繁栄をもたらし、英国の毛織物産業のシンボルにまでなった。
 

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今シーズンに誕生した「TOKYO」モデル

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今シーズンから登場した「TOKYO」モデルのブレザー。弾力性に富み、ソフトでハリがあり、3シーン着用できるミラクルクリンプウールを生地に採用し、伝統の3ボタン段返りのデザインながら、ウエストを絞ってモダンな印象に仕上げている。袖ボタンも4個にし、メタルボタンはシルバー。幅広い着こなしに活用できる、現代的なデザインのブレザーと言えよう。¥81,400/ブルックス ブラザーズ

さらに今シーズンに誕生したのが、「TOKYO」と名付けられたブレザー。「3ボタン段返り」のモデルに、ウエストにダーツを入れることでウエストラインをスッキリ見せるように仕上げた、日本オリジナルの型紙を採用しているモデル。ラペル幅も広く、ゴージラインを高め設定することでより洗練された印象に仕上げている。

また、メタルボタンもゴールドからシルバーに変更。袖ボタンも4個の仕様に変えている。シルバーのメタルボタンは渋く見えるものだ。ビジネススタイルで着用するのに最適で、モダンな雰囲気を併せ持っている。カジュアルな装いにもマッチするだろう。この2つのモデル以外にも「REGENT FIT」や「MILANO FIT」など多彩なシルエットが用意されている。ブレザーをアイコンに挙げるトラッドの老舗らしいラインナップ。さあ、あなたはどのネイビーブレザーがお好みだろうか。

問い合わせ先/ブルックス ブラザーズ ジャパン TEL: 0120-02-1818

https://www.brooksbrothers.co.jp

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