ヨンクひと筋のジープが手がけるラングラー・ルビコン4xeは、電気モーター搭載で岩場も楽々

  • 文:小川フミオ
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ジープを象徴するモデルといえるラングラー・ルビコン。もっともジープの伝統に忠実とされるモデルだ。

 

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機能美の極致ともいえるデザインを評価するファンに支えられてきた。

もうひとつ、ラングラーが高い人気を維持してきたのは、機能性。なかでも、ルビコンというモデルは、悪路での高い走破性をめざして開発されたスペシャルだ。

2023年2月に、ラングラー・ルビコンの20周年を記念するというエディションが登場。

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マイクロクライメートというのか移動中に天気がめまぐるしく変わったキャニオンランズ国立公園

 

私は、2023年3月のおわり、このプラグインハイブリッドモデル「4xe(フォー・バイ・イー)」に試乗した。場所は、北米ユタ州モアブの岩山コース。

そこであらためて感じたのは、先述のとおり、ジープ人気の背景ともいえる走行性能の高さ。

砂地、がれき、泥濘地、岩場、雪道……あらゆる条件の路面を走破できると謳うだけあって、試乗では、その走りっぷりに感心させられた。

1941年に量産化が開始されたオリジナル・ジープは、ランドローバーの誕生にも影響を与えた存在(「英国でもあんなオフローダーが作れないだろうか」と当時の設計者は話しあったとか)。

馬がひく荷車の代わりに荷物をたくさん運べるようにとか、サイドカー付き自動二輪より人員を運べるようにとか、米国の軍隊では1930年代には早くも、多目的車へのニーズが出ていた。

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ラングラーのオリジンともいうべき1944年のウィリスMB

 

第二次大戦終了後、当時ジープを生産していたウィリスはCJ(Civilian Jeep)を発売。そこから徐々に販路を拡大していった。

シャシーの上にボディを載せたセパレートフレーム、前後とも固定式のサスペンション、副変速機など、道なき道で威力を発揮する機能をそなえているからだ。

ルビコンは、ラングラーシリーズの高性能なグレード。ひとことでいうと、悪路走破性を高めたモデルである。

私がドライブしたのは、モアブの街中から50キロぐらい走ったキャニオンランズ国立公園。コロラド高原に位置し、1366平方キロと広大。

一部にはごく低い木で構成されたブッシュと、そのあいだを縫う細い道があり、また一部はレッドロックと呼ばれる巨岩だけの荒涼とした場所で、そこには道らしき道はない。

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雪のなかを走ったあとはキャニオンランズの岩場を越えていく

 

そんなきびしい条件ゆえ、トレッカーやMTB乗りやモトクロッサー、そしてクロスカントリー型4WDのドライバーにとっては”聖地”のような場所である。

ルビコン4xe(フォー・バイ・イー)は、2リッターガソリンエンジンに、外部充電式のバッテリーをそなえたモーター駆動を組み合わせている。

そもそもエンジンは400Nmもの大トルクを持つうえに、モーターを2基、補助的に使うシステムだ。

ひとつは「P1」モーターといい、発進時や加速時にトルクを上乗せする。

もうひとつは「P2」モーターといい、「エレクトリック」モードを選べば、約33キロを排ガスゼロの電気走行する。

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20周年エディションは赤を効果的に使った内装

 

「ハイブリッド」モードなら、アクセルの踏み方やバッテリー残量に応じてモーターとエンジンが協調制御される。

ジープのエンジニアから勧められたのは、ふだんは「E-SAVE」というエンジンモードにしてバッテリー容量を温存すること。

急峻な登り坂などオフロードで満を持して「ハイブリッド」にすれば、エンジンとモーター2つの動力を使って走れるのだ。

ジープが”本格的オフローダー”とよばれるゆえんは、副変速機システムにある。

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右のレバーが副変速機のもの(赤いスイッチは前輪のスタビライザーを切り離してホイールストロークを拡大させるロックトラックフルタイム4×4システム作動用)

 

オートマチック変速機用のギアセレクターレバーの隣りに、もう1本レバーがあり、後輪駆動と4WD、それにギアを悪路用のL(低速用)ギアか、一般道用のH(高速用)と切り替えられる。

いまさらにオートモードまで選べてフールプルーフ化されているものの、電子制御のボタンにしないのは、おそらく、故障を減らすためだろう。機械式のほうが乗り手にも安心感をもたらす。

キャニオンランズ国立公園では、基本的にATのギアはDで、副変速機は「4L」。あとはアクセルペダルを踏むだけで、壁のように見える岩山も登っていくし、谷底に落ちるような下りもこなす。

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車体は泥だらけになっても、前席のサイドウィンドウとリアコンビネーションランプは汚れないという驚くべき設計

 

道がでこぼこでも、乗員のからだの揺さぶられかたはかなり少ない。これは操縦性にとって重要なことで、つまりは安全設計につながる。

現在のラングラー・ルビコンには「392」と排気量(キュービックインチ)で呼ばれる6.4リッターV8モデルもあるが(日本未導入)、2リッターでも走破性の高さはばつぐんとわかった。

ルーフは外せるし、ひとによってはドアを外してしまうこともある。なるべくスケルトンに近い状態にしてオフロードを走るのが、北米のジープ乗りのスタイルというのはおもしろい。

しかもオーディオにも凝っている(日本でもラングラー・ルビコンにはアルパイン製サブウーファー付き9スピーカーシステム)。

好きな音楽を聴きながら、岩場を走るなんて、日本にいたら非現実的とも思える楽しみも堪能できる。そういうわけで、ラングラー・ルビコン4xeは、広い可能性をもったモデルなのだ。

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独自デザインの7スロットグリルを与えられた20周年エディション

 

Specifications
Jeep Wrangler Unlimited Rubicon 4xe(日本仕様の参考データ)
全長×全幅×全高 4870x1930x1855mm
ホイールベース 3010mm
車重 2350kg
1995cc 直列4気筒ガソリン+電気モーター(PHEV)4輪駆動
最高出力 200kW@5250rpm+107kW(P2モーター)
最大トルク 400Nm@3000rpm+255Nm(P2モーター)
変速機 8段オートマチック
燃費 8.6km@l(WLTC)
電気モーターによる最大走行距離 42km
価格 1030万円