セクション02展示風景より。岩崎貴宏が出品したのは、タオルなどをほぐし、鉄塔などとして再構築することで柔らかなランドスケープを生み出した画面左の『Out of Disorder (Layer and Folding)』(2018年、作家像)と、人新世より下の地層にある鉱物資源や化石燃料の強大な破壊力を備えたエネルギーを、清掃用具や壁面のドローイングの組み合わせで示唆する『アントロポセン』(2023年、作家蔵)。セクション02展示風景より。目[mé]がアクリル絵具や樹脂を組み合わせて制作した「アクリルガス」のシリーズを展示。地球を外部から長時間露光で撮影した画像をNASAのホームページで見たときの、「地球がまるっきりガス惑星だった」という驚きが制作の発端となったという。セクション02展示風景より。井上隆夫『ブロークンチューリップの塔』(2023年、作家蔵) ウイルスに感染し、畑から球根ごと抜かれて処分されることになったチューリップを用いたこの作品。人が排除しようとしても強かに存在し続けるものに惹かれ、そうしたものと現代社会の関係性を追求することへの興味が井上を制作に駆り立てた。セクション02展示風景より。髙橋賢悟『Re: pray』(2021年、井口靖浩氏蔵) 生花を型に埋め込んで焼成し、内部の生花が焼失した空間に溶けたアルミニウムを流し込むことで、白く輝く姿に蘇らせる「現物鋳造」の技法を発展させてきた髙橋。明治時代の金工家である鈴木長吉の「十二の鷹」に宿る生命力に感銘を受けて金工を学び、2011年の東日本大震災の被災地に足を運んだ際、絶望的な状況でも祈ることで精神を保った経験に裏付けられている。
A-POC ABLE ISSEY MIYAKEの宮前義之は、三宅一生から「一枚の布」で完成させる服作りの理念を受け継ぎ、京都の伝統的な技術と宮島達男の「時間」や「生命」の表現をブルゾンに込めた。最後の展示室に展開するのは、ニューヨーク在住のデザイナー、田村奈穂がヴェネツィアのガラス工房WonderGlass社とともに手がけたインスタレーション作品『FLOW[T]』。海と空の境をなす水平線をモチーフに、長く受け継がれてきた吹きガラスの技術によって、ものにあふれる現在に求められるものづくりのあり方をガラスの風景で提示する。
セクション04展示風景より。A-POC ABLE ISSEY MIYAKEの「TYPE-II Tatsuo Miyajima project」では、写真家の吉田多麻希が写真のコンタクトシートにダンサーの辻本知彦の動きを閉じ込めるヴィジュアル表現を行った。セクション04展示風景より。田村奈穂『フロート』(2013-15年) ガラスは生きた素材だ。素材に耳を傾け、火と空気を操り、素材そのものの自然な流れに沿わなければ壊れてしまう。つまり、完全に人間がコントロールできる素材だとはいえない。水平線をモチーフとするインスタレーションは、ガラス工房が拠点とする水の都の景色を想起させる。