「時は金なり」という格言は、知らない人がいないくらい有名だ。この格言は、時間の大切さを説いたもの。時間はお金と同じように貴重なので、大切に使いましょうといった意味だが、この関係を深く理解している人がお金持ちになれるのだ。時間とお金の関係性を考察してみよう。
時間とお金は、正比例の関係にあることを意識して欲しい。勘違いしてはいけないのは、時間が増えればお金が増えるということではない。時間の使い方が下手ならば、お金を稼ぐのに時間をかけて働かなければならないということだ。逆に時間の使い方がうまい人は、より少ない時間で他の人より大きな成果を上げられる。それが、時間とお金の使い方が正比例するということだ。
また、時間の使い方が同等の人であれば「お金」を追求すれば「時間」を犠牲にせざるを得ず、「時間」を追求すれば「お金」が犠牲になる。具体的にいうと、勤務時間が長いけれど給料の良い仕事に就くか、給料は安いけれども休みの多い仕事に就くかという選択になる。
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時間は有限でお金は無限
人間には寿命がある。そう考えると時間は「有限」なのだ。一方のお金は「無限」だ。あなたが亡くなっても、お金は残るからだ。お金持ちでもお金がない人でも時間は均等だ。1日は24時間と決まっている。ところが、お金の無駄遣いをしないように気を付ける人はいても、時間を無駄遣いすることには抵抗がない人が多い。時間が有限であることを意識して欲しい。
時間の使い方がうまい人は、同じ時間を使っても何倍、何十倍もの成果を得ている。最短で成果が出せる人は「時間の投資効率」がいいということになる。時間の使い方がうまい人は、お金についても大きな成果を得られる行動をしている。同じお金を貯めるにしても金利のつかない預金だけを利用している人と、資産運用も取り入れてお金の貯まるスピードをアップしている人の違いだ。
時間をうまく使うから、お金の使い方がうまくなるのか? お金をうまく使うから、時間の使い方がうまくなるのか? どちらからはじめても、「お金」か「時間」の使い方がうまい人は、もう一方もうまくなる。逆にいうと、お金も時間も使い方が悪いと、時間もなくお金もない状態になってしまうのだ。
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人生の3大費用の準備も「時間」が必要
貯蓄をするのにも「時間」が関係してくる。大きなお金というのは、すぐには貯まらないからだ。時間をかけてコツコツ貯めていくしかない。人生の3大費用といわれる「住宅費」「教育費」「老後資金」は、一括で支払うことができない費用だ。
たとえば平均的な費用について考えてみよう。フラット35利用者調査によると、住宅の平均購入価格は、建売住宅は3,605万円、マンションは約4,528万円。教育費は文部科学省の「令和3年度子供の学習費調査」によると幼稚園からオール公立でも約816万円必要だ。老後資金はライフスタイルにもよるが、過去話題となった生活費の不足分でも2000万円かかる。これらの費用を一括で支払える人はいないだろう。時間をかけて準備しなければならない。年収は、すぐに上がることはないので収入から必要な資金を差し引いて貯蓄可能な金額をコツコツ貯めていくしかないのだ。
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資産運用をするなら預金も必要
また、前述の金額はあくまで平均。年収が高い人ならば、住宅費や教育費、老後費用も平均よりは高くなるだろう。貯金だけでは、時間がかかるのでリターンを高めればお金を早く貯めることも可能になる。リターンを上げるには、資産運用が必要になる。運用したら、そのお金が貯まっていくスピードは早くなるが、運用中のお金は使えない期間があることに注意して欲しい。使えない期間は、預金だけが頼りになる。
お金を増やす時間を短縮できるが、いつでも使えるくらいに安定してくるのには、ある程度の時間が必要になる。そこを理解しないで資産運用にお金を回してしまうと、使いたい時にマイナスになっていても使わざるを得なくなり結局はお金を減らしてしまう。資産運用するのならば、預金も必要なのだ。お金の計画を立てる時には預金の立ち位置も考えて欲しい。
運用の利益は経済状況や景気に左右されるので、住宅購入のための頭金や教育費の入学金など必ず必要な資金は、預金で確保することになる。もちろん10年くらいかけて運用をしてから、使う前の1~2年前に現金化し貯金に変えておくのでもいい。
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なぜ貯蓄をするのか?
大きな金額はすぐには貯まらないのだが、なぜ私達は貯蓄をするのか。私達が貯蓄すると得られるものがあるからだ。たとえば、ある程度のお金があれば嫌だと思った会社を辞めることもできる。または、お金が十分にあれば早期退職も可能だ。つまり雇われて働くことから開放され自由な時間が手に入るのだ。
貯蓄額が増えるにしたがって自由な未来が近づいてくるのだ。ここに早く気付いた人は、有限な時間を上手に使い、できるだけ早く自由になるための資金を貯めている。そのためには、人生の計画が必要だ。
「ファイナンシャルゴール」という言葉を聞いたことはないだろうか。ファイナンシャルゴールとは、人生設計における経済面の目標だ。たとえば、次のような目標があったとする。
・35歳までにマイホームを購入したい。そのための頭金500万円を貯める
・家族4人で海外旅行に行くために100万円が必要
・資格取得のために30万円を準備する
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ファイナンシャルゴールを決める
目標が決まったら、それを達成するためのキャッシュフロー表を作る。キャッシュフロー表とは、現在の収支状況と今後のライフプランをもとに、将来の収支状況を予想し、その結果増減する貯蓄残高の推移を時系列にした表のこと。日本FP協会のHPからダウンロードするといいだろう。
キャッシュフロー表を使って、具体的な解決策を考えてみよう。たとえば月々1万円貯蓄額を増やすとか、マイホームの購入時期をずらすなど改善計画を立てるのだ。その上でファイナンシャルゴールを決める。毎月いくらで生活できるのかが分かれば、収入が途絶えた時に、いまある貯蓄額で何ヶ月・何年生活できるのか。キャッシュフロー表でシミュレーションしながらファイナンシャルゴールを考えてみよう。
人は「幸せになりたい」から経済的に豊かになろうとする。幸せとは、喜びの源だからだ。人間に幸福感をもたらすのは「人生を自分でコントロールできた」という感覚だろう。好きな時に、好きな人と、好きな事ができることに、最も幸福感を感じると思う。そのためにも、お金と時間をうまく使えるようになりたいものだ。
【執筆者】
川畑明美●ファイナンシャルプランナー 「私立中学に行きたいと」子どもに言われてから、お金に向き合い赤字家計からたった6年で2000万円を貯蓄した経験をもとに家計管理と資産運用を教えている。HP:https://www.akemikawabata.com/