今年2月に行われた2023年秋冬ニューヨーク・ファッション・ウィーク(NYFW)でも顕著だったファッションのジェンダーレス化。この動きは今に始まったことではない。ダイバーシティ&インクルージョンが叫ばれるようになった数年前から徐々にファッション業界の中でも浸透してきている。さまざまな人種の入り混じるニューヨークは、他の都市に比べてもジェンダーに対しての表現が自由なのではないだろうか。ジェンダーレスなファッションを提案するニューヨークのファッションシーンにフォーカスする。
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スカートを履くのは女性だけではない
2023年秋冬のニューヨーク・ファッション・ウィークでは、メンズがいわゆる女性のスカートルックを着用しているブランドをいくつも目にした。多くの場合、細身の体型の男性モデルがスカートを履いても違和感がなく、「ウィメンズのルックは、女性が着ないといけないのではなく、着たい人が着ればいい」ということでメンズが着用しているんだなという理解に落ち着いた。
多くは若手のブランドがこうした提案をしているのだが、「コーチ」や「トム・ブラウン」などのビッグブランドがジェンダーレスな着こなしを提案しているのが新鮮だった。これらのブランドは取り立ててユニセックスを謳っている訳ではなく、ウィメンズにカテゴリーされるルックをメンズが着ているもので、ファッションがジェンダーに捉われず、着る人の意志で自由な着こなしができるというメッセージを発信しているようだった。
スコットランドではキルトと呼ばれるスカートの民族衣装を男性たちが着用することで有名だが、スカートを履くのは女性だけではないという考えは徐々に浸透してきているようだ。
LGBTQなどといった多様な性に関する言葉が浸透してきている現代。ジェンダーレスなファッションはある種、業界にとってトレンド的なものでもある。だが、何を持ってジェンダーレスブランドというのかなど、明確でない部分も多い。最近ではニューヨークでコレクションを発表している老舗ブランドの「ノーマカマリ」がジェンダーレスブランドに転換するなど、いくつかのブランドではユニセックスレーベルなども発売されているが、まだまだ定義が明確ではないことも確かだ。
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LGBTQ向けのブランドもマーケットに波及
ジェンダーレスブランドだけではない。ニューヨークを拠点にする「ゴーゴー・グラハム」は、トランスジェンダーの女性がトランスジェンダーの女性向けの服をデザインし、スタートしたブランドだ。2023年秋冬のテーマは「Birthday Boy」で、クラフト感のあるユニークなドレスが多い。トランスジェンダー女性のためのブランドとは言うが、女性が着こなすことのできるコレクションである。
ファッションだけでなく、ビューティーブランドでもジェンダーレスなメーキャップを販売するブランドも出てきている。ドラァグクイーンのKim Chiによって2019年にスタートしたKimChi Chic BeautyやRebecca RichardsとSaba Greyによってスタートした「 BioGlitz」など、LGBTQオーターによるビューティーブランドも増え、性別に関係なくメイクを楽しめるようになってきている。
トランスジェンダーコミュニティに向けた商品やジェンダーレスと謳わずとも、下着のブランドでキャンペーン画像の中に男性が混じり、女性用と思われる下着を身に着けるなど、マーケティングの手法でダイバーシティを表現するブランドも増えている。さまざまな人種の入り混じる街では、自分自身が心地よくファッションを楽しめるかが一番重要なのだろう。
文:菅 礼子
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