「大谷の配慮が格別だった…」開催に批判もあったWBCで“意味ある”試合を見せたとアメリカで賞賛の声

  • 文:山川真智子

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日本中を興奮させた野球のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)だが、アメリカでは当初関心は低く、開催自体にも多くの批判があったという。そんな中、同僚ガチンコ対決で決勝戦を盛り上げた大谷翔平とマイク・トラウトを米メディアは賞賛。特に投打に奮闘し、野球のあるべき姿を示した大谷の姿勢は、感銘を与えたようだ。

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インスタではマイナー?若者に受けないメジャーの野球

CNNによれば、アメリカの野球人気は下降している。2021年の好きなスポーツを尋ねた調査では、アメフトと答えた人が34%で、野球は11%しかいなかった。特に若者に人気がなく、その理由は、「退屈・面白くない(31%)」「試合の展開が遅い・長い(21%)」だった。

若者の利用が多いインスタグラムのフォロワー数を見れば、人気が低いのは明白だ。メジャーリーグ・ベースボール(MLB)のスーパースターであるマイク・トラウトのフォロワーは209万人だが、フットボール(NFL)のオデル・ベッカムには1700万人、バスケットボール(NBA)のレブロン・ジェームズには1.4億人のフォロワーがいる。強力なスター不在で、このままではさらに人気は低下しそうだとCNNは述べている。

フォロワー桁違いのレブロン・ジェームズのインスタ

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WBCは野球マーケットの拡大と収益化を目指して、2006年に始まった。メジャーリーグの発表では、今年の決勝戦は全米で520万人の視聴者を集め、WBCの試合としては過去最高となり、視聴率も2017年大会から69%アップとなった。参加国の多くでも視聴率は上昇しており、大会としては成功したと言える。

視聴率がプラス151%となった台湾の様子

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日本でも“可愛すぎる”と人気になった台湾チアガール

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 メキシコも視聴率100%アップ。大谷選手の同僚のサンドバル投手

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意味のないエキシビション? イマイチ盛り上がらない理由

もっともワシントン・ポスト紙によれば、自国の優勝決定戦をワールドシリーズと呼ぶアメリカでは、WBCは単なる「エキシビション」だと見る人も多いという。日本と違い関心も薄く、地上波の放送はほとんどなかった。

開催日程がメジャーリーグの開幕に近いことから、ケガや故障を心配して出場しない一流選手も多い。今年はトラウトら人気選手も参加しているが、トップクラスの参加は十分とは言えなかった。

それでもトラウトを中心に、米チームは短期間で体制を整えて参加。壮絶な打撃戦となった準々決勝のベネズエラ戦などを経て決勝に進み、アメリカ人のWBCへの注目度も増した。ケガの危険を冒してまで“意味のないエキシビション”に出るのかという批判に対しても、トラウトは「ケガはトレーニング中だって起こり得る」と反論。むしろWBCは「これまでで最も楽しい経験で、国を代表し特別な雰囲気だ」とポジティブに語った。

トラウト選手と会見に臨んだムーキー・ベッツ(左)も楽しさをアピール。試合を見ている他の選手にも参加を薦めた

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ベネズエラ戦で満塁ホームランを放ったトレイ・ターナー選手。会場大盛り上がり

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本来の野球のあり方を示した…大谷の奮闘に大御所も感謝 

批評家や選手たちから「やる意味があるのか」と叩かれたWBCをアメリカで盛り上げたのは、トラウトや大谷という選手の本気だとワシントン・ポスト紙は述べる。特に大谷の場合はプレーに加え、配慮が格別だったと指摘。決勝前に「相手に憧れないように。憧れれば越えられないから」と言った仲間へのスピーチは、WBCが「エキシビション」ではないことを示してくれたと述べている。

ロサンゼルス・タイムズの記者が翻訳を投稿し、拡散された大谷の言葉

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ニューヨーカー誌は、決勝戦の9回の大谷とトラウトのガチンコ勝負こそ、野球が最も華やかで楽しいスポーツであると感じた時だったとした。ゲームに意味を与えるものは、MLBの命令でも解説者の視点でもなく、プレーする選手たちとそれを見る人たちだと指摘。日本での侍ジャパンの試合の視聴率が40%を超えた理由は、ここにあると見ている。

日本中が歓喜した村上選手のサヨナラヒットの場面。視聴者ばりのアナウンサーの絶叫は、アメリカでもニュースになった

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 アメリカで声援を送った日本のファン

大谷の野球への献身に対し、米球界の大御所ペドロ・マルチネス氏は「野球、選手、ファンを代表し、君がしてくれたすべてのことに感謝する。君を誇りに思う。君は特別な人だ」と感謝の意を伝えた。

マルチネス氏の謝意に頷く大谷選手

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次のWBCは2026年だが、ケガやお金を気にする選手ばかりでは、野球の未来の発展はない。大谷やトラウトに続き、胸高鳴る試合を見せてくれる一流メジャーリーガーの出場を次回は期待したい。

実はアメリカではレポーター役も務めていたニュートバー選手。優勝は信じられないと喜びのコメント

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米チームの立役者、トラウトの終わりのメッセージ。“この数週間は言葉でうまくまとめきれないほどの意味があった…キャプテンになれて光栄だった”

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【動画・画像】「大谷の配慮が格別だった…」開催に批判もあったWBCで“意味ある”試合を見せたとアメリカで賞賛の声

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フォロワー桁違いのレブロン・ジェームズのインスタ

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意味のないエキシビション? イマイチ盛り上がらない理由

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