もっとお金が欲しい? 老後破綻の不安でお金を溶かしてしまう人

  • 文:川畑明美

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 「もっとお金が欲しい?」と聞かれて「いらない」と回答する人は少ないと思う。お金は便利で、持っていると安心するし、お金があれば大抵の悩みは解決される。ではどうやったら、もっとお金が増えるのか。世界的な投資家の意見が参考になる。

世界一の投資家として名高いウォーレン・バフェット氏は次のように述べている。『早いうちから貯蓄することを学ばないのは、大きな間違いだ。なぜなら、貯蓄は習慣だからだ。ゆっくりお金持ちになるのはたやすいが、手っ取り早くお金持ちになるのは極めて難しい』。バフェット氏のいうように「貯蓄は習慣」とは、まさにその通りだ。

いままで収入をすべて使い切ってしまっている習慣があるのならばその習慣をやめられれば、1万円でも2万円でも貯蓄できるようになる。その新しい貯蓄の習慣が若い頃にできていれば、ゆっくりでも、お金持ちになるのは「たやすい」とバフェット氏もいっているのだ。

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貯蓄率を上げる法則は2つあるが?

貯蓄の習慣を作る前に、あなたの家計の貯蓄率を調べてみよう。貯蓄率は、簡単に計算することができる。(貯蓄額÷年収)×100=貯蓄率の式にあてはめるだけだ。年収500万円の方で年間20万円貯蓄できるのであれば、貯蓄率は4%だ。そして貯蓄率が高い人だと20%くらいになる。簡単な計算なので、あなたも今すぐ計算してみて欲しい。その貯蓄率を上げる方法は、実はたった2つしかない。

1)生活費はそのままで収入をアップする

転職する。または資格を取得して給料をアップする。副業をする等々。しかし気を付けたいのは、収入がアップすると生活費もアップしてしまう方も多い点だ。また昇級などは自分でコントロールできない部分もある。


2)収入はそのままで支出を減らす

収入を増やすのは、なかなか難しい。できないという方も少なくない。一方、支出を減らすのは、誰でもできることだ。毎日なんとなく使っているお金の無駄に気付くこと。自分でコントロールして貯蓄率を上げることができるのは、2つ目の方法になる。

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自分でコントロールできることは、しっかりやる

人生において自分でコントロールできることは、実は少ない。たとえば「天候」は、コントロールできない代名詞ともいえよう。株式市場も天候と同じくらいコントロールできない。あなたがいつ病気になるのかも、わからない。ただし病気になりにくくする「健康管理」は自分でもコントロールできるだろう。そういう自分でコントロールできる部分は、しっかり管理することが大切だ。

そもそも収入の良い企業に就職するには、自分の力だけではコントロールできない面もあるが、お金を貯める「貯蓄率」は、あなたがコントロールできる唯一のものだ。つまり経済的自由を手に入れるには、まず自分でコントロールできる貯める力をつけることだ。貯める力はバフェット氏もいうように「習慣」をつくることになる。まずは「天引き」の習慣を作って欲しい。サラリーマンのように決まった収入のある人にとってお金を増やすために最も必要なことは、「何も考えずに貯蓄」できる方法だ。給料口座からの天引きが最も貯まりやすい。

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節約にネガティブだと貯蓄の習慣はできない

筆者は20代で貯蓄500万円を達成した。正確に覚えているわけではないが、20代は手取りで17万円くらいだった。プラスボーナスは夏冬合わせて70万円くらいだったと思う。決して高い給料ではなかった。それでも500万円は貯められるのだ。

まず食事は、ほぼ自炊だった。もちろん、お昼ご飯もお弁当。ただ、それを「辛い」と感じたことはなかった。元々料理を作るのが好きな方だという前提はあるが、辛いというよりは、節約するのは楽しかったのだ。ちなみに料理は、高校時代にバイトした喫茶店で教わった。原価を考えランチのメニューを作った経験が今でも役に立っている。原価が安くても人気メニューだった「踊る鰹節の和風パスタ」は、よく作った覚えがある。

また、家賃を抑えるために駅から遠い家にひとり暮らししていた。駅から片道を徒歩で15分から20分くらいは毎日歩く。これも毎日運動と考えると、あまり苦にならなかった。節約生活イコール「つらい」「みじめ」などのネガティブな印象を持っている方も多いが、節約を楽しめることも「貯蓄の習慣」をつくる一つの能力だ。

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手っ取り早くお金持ちになるのは極めて難しい

ところが、そうやってコツコツと貯めてお金持ちになれたとしても、お金持ちであり続けるのは難しい。貯蓄の習慣をつくることで、まとまったお金をつくることは可能だ。しかし、投資で失敗してしまう方は多い。バフェット氏がいうように「手っ取り早くお金持ちになるのは極めて難しい」のだ。

投資で失敗してから相談にくる方は多いのだが、高値で購入してしまったら打つ手は少なくなってしまう。モノの値段はよく調べて購入するのに、金融商品になると何も調べないで金融機関で提案されたものをそのまま購入してしまう方が実に多い。たとえば、どんなに美味しい牛乳でも1リットルの牛乳1パックを1万円で購入してしまう人はいないだろう。乳製品が値上がりしているといっても牛乳1リットルの価格は、高くても350円くらいだ。1万円は高過ぎるので購入する人はいない。

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なぜ割高の株を購入してしまうのか?

ところが株などの金融商品だと、350円くらいの価値の銘柄を1万円で購入してしまう人もいるのだ。牛乳を買う時に、他のお店と比較してなんとか安い価格で購入するだろう。それは、少しでも安く買うことで自分のお金が減るのを避けようとするからだ。ところが株などの金融商品になると調べることをせずに、高値で購入してしまう人がいるのだ。

投資でお金をさらに増やすことはできる。ただし、それは「リスク」を取ることが前提だ。投資をするということは「お金が減るリスクの代償として、増えるチャンスも得る」ことだ。リスクを取って投資することで、さらにお金を増やす場にエントリーできるということだ。ただし、エントリーしたら必ず増えるのではなく、お金を減らすリスクも甘んじて受けることになる。

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「お金が足りない」と思って投資して損をする人

残念なのは、「お金を増やすために投資したい」と考える人は、リスクが見えなくなってしまうことだ。お金を減らしてしまうリスクがあるのだから、余裕資金がない人は投資をしてはいけないのに、「老後資金が少ないから退職金を投資して増やさないとダメなんです」といって、全額をつぎ込もうとする方も少なくない。それでも購入前に相談をいただければ、なぜ退職金の全額を投入してはいけないのか、理解できるまで説明もできるのだが、つぎ込んだ挙句マイナスになってから相談をいただいても打つ手は少なくなってしまう。

投資してよいお金を調べるためには「資産表」を作っていただく必要がある。その資産表を作っていただいて、気付くことも多い。作った後の感想をご紹介しよう。「お金を持っていないと思っていました。母と祖母の遺産、父の生前贈与を、FX投資をして損をしてしまいました。自分の資産内容をチェックしたら、思っていたより持っていて、そんなに焦って、FX投資をする必要はなかったとわかりました」と、いうものだ。損をしてしまっても、残りの資産がある方なので良かったものの、「お金が足りない」という焦りから投資をするのは、かなり危険なのだ。

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【執筆者】
川畑明美●ファイナンシャルプランナー 「私立中学に行きたいと」子どもに言われてから、お金に向き合い赤字家計からたった6年で2000万円を貯蓄した経験をもとに家計管理と資産運用を教えている。HP:https://www.akemikawabata.com/