フォルクスワーゲンが、2023年3月15日に、ドイツはハンブルグで「ID.2 all(アイディツーオール)」という電気自動車を発表。これが興味ぶかいモデルなのだ。
フォルクスワーゲンはそもそも、2019年のID.3にはじまり、ID.というバッテリー駆動のピュア電動車(BEV=ベブ)に力を入れてきている。
日本でも(ご存知のように)ID.4なる全長4585ミリ、全高1640ミリのクロスオーバー型のBEVを導入。2022年に発売した初期限定モデルは、すぐに売り切れたという。
ID.2 allは現時点では「showcar」、つまりコンセプトモデルとされている。でも、発売は2025年と発表されていて、今回お披露目されたモデルは「量産車に近いデザイン」という。
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なぜ、ID.2 allが興味ぶかいのか。ひとことで説明すると、ポロやゴルフといったエンジン車と並べても、まったく違和感がなさそうだからだ。
「電気自動車として存在感を出すより、フォルクスワーゲン車のファミリーであることを意識しました」。ハンブルグの会場で話を聞いたヘッドオブデザインのアンドレアス・ミント氏の言葉だ。
先述のとおり、今回のショーカーは量産車に近いと教えてくれたミント氏が強調した「フォルクスワーゲンらしさ」は「all」というサブネームにも表れている。
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発表会場いたるところに掲げられたパネルには、ユーモラスに表現された人々の顔とともに「FOR THE PEOPLE」の文字。
人民のクルマというフォルクスワーゲン本来の社名の意味を想い起こさせてくれる。発表会では、オリジナルビートルやゴルフなど、過去のモデルが舞台を走る演出もあった。
ミント氏によると「好かれる(likeable)」ことがテーマだったんだそう。
「必要だと思ったのは、フレンドリーな眼(ヘッドランプ)であり、笑顔(に見えるフロントマスクの造型)です」
それこそ、いまのフォルクスワーゲンの電動車が向かっている方向なのだそうだ。
「(かつてのタイプ2と呼ばれたマイクロバスをイメージした)ID.BUZZを見てみてください。スーパーフレンドリーでしょう。みんな好きになってくれます」
フォルクスワーゲンの電動車のすべてが同様のデザインを踏襲するかは不明。少なくともID.2 allは「ID.BUZZと同様、過去と未来をつなぐモデルになるでしょう」とシェーファーCEOは言う。
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コンパクトカーのデザインって本当にむずかしい、とミント氏。
「私はベントレーのデザイナーもやっていたので、よくわかるのですが、大きなクーペより、魅力的なコンパクトカーをデザインするほうがはるかに困難なのです」
ID.2 allは、初代ゴルフから踏襲されてきた太いリアクォーターパネルは踏襲。20インチのロードホイールと組み合わされたタイヤを四隅に配し、魅力的なBEVというより魅力的なVW車になった。
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初代ゴルフやフィアット・パンダは天才の仕事(ともにジョルジェット・ジュジャーロ)、と持ち上げたあと、ID.2 allも、6週間とごく短期間で仕上げたものの、たいへん自信がある、とする。
ボディ全長は4050ミリ、全高は1530ミリのID.2 all。VWポロ(全長4085ミリ)より少しコンパクトで、いっぽう2600ミリのホイールベースはゴルフ(2620ミリ)に迫る。
「エントリーMEBという前輪駆動のプラットフォームは、下に電池を敷き詰めて、上にアパーボディを載せる構造。通常は全高が高くなりますが、それを1.5メートル台で抑えました」
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頭がおかしくなりそうなぐらいたいへんな作業だった、とミント氏は苦笑する。でも達成感が強く感じられる。自分が”こうあるべき”と思った次世代のコンパクトカーが作れたからだ。
マーケティングを強く意識したモデルであることは間違いない。外寸と室内空間に折り合いをつけるパッケージングも、デザイン同様、市場での成功にはたいへん重要のようだ。
ID.2 allは、フロントモーターで前輪駆動。従来のID.シリーズは、リアモーターの後輪駆動(前にもモーターを搭載した4WDモデルもある)なので、まさに180度の転換だ。
なぜかというと、「トランク容量を出来るだけ稼ぐため」。技術開発担当のカイ・グリューニッツ取締役は理由をそう説明してくれた。
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ポロやゴルフをはじめ、競合他社のハッチバックに乗っているオーナーに自然に受け入れてもらえる。つまり、可能なかぎりフツウに使える、が企画の主旨なんだろう。
さらにもうひとつ、注目したいのが価格。「2万5000ユーロ以下になります」。フォルクスワーゲン自動車部門のトマス・シェーファー最高責任者(CEO)は、得意げな様子でそう発表した。
欧州の市場だけで考えれば、生活感覚として1ユーロはだいたい100円ともいう。かりにそれで計算すると、ID.2 allは250万円以下となってしまう。欧州で話題を呼んでいるわけだ。
一充電あたりの走行距離は450キロとされているので、そうなるとお買い得感が強い。
為替レートは橫においといて、250万円と仮定すると、日本でそれに近い価格で買えるBEVは日産サクラと三菱ekクロスEV。ともに走行距離は180キロだ。
これまでのID.シリーズと同様、リチウムイオンのバッテリーを敷き詰めたMEBと呼ばれるプラットフォーが基本になる従来のモデルよりバッテリーの数は減ることもあるが、それでも今回発表された諸元では、出力が166kW(トルクは未発表)で、最高速は時速160キロというから、性能はけっして低くない。
インテリアはじつはまだ出来上がっていなかった。公開されたのは画像だけ。
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「インテリアはシンプルな造型。素材はこのクルマに合ったイメージのいいかんじのものを使います。室内スペースを強調するデザインです」
ミント氏の言葉を裏付けるように、画像を見るかぎり、ダッシュボードはかぎりなく、というかんじでシンプルな造型。
10.9インチの液晶モニターの計器盤と、12.9インチのインフォテイメントシステムのモニターがあるぐらいだ。センターコンソールには、円筒形のインフォテイメント用コントローラーがあるぐらい。
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助手席のシートバックは折りたたみ式。、後席シートのバックレストもたためば、長さ 2.2 メートルの長尺物を積載することも可能という。
「年間を通して毎日使える電気自動車」と、フォルクスワーゲンではプレスリリースでID.2 allを定義している。ハンブルグで説明を聞いていたら、なるほど、と納得がいった気になった。
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Specifications
Volkswagen ID.2 all showcar
全長×全幅×全高 4050x1812x1530mm
ホイールベース 2600mm
1モーター 前輪駆動
出力 166kW
航続距離 約450km
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【画像】ゴルフよりも魅力的? 「ID.2 all」は、フォルクスワーゲンの本気が作りあげたコンパクトEVだ
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