【東京クルマ日記〜いっそこのままクルマれたい〜】 第170回“EVの車内をリビングにしてみたら!? 「100年の計」を 80’sデザインから始める”

  • 写真&文:青木雄介
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移動空間と居住空間の融合を目指したSUV型EV、アイオニック5。 

心待ちにしていたヒョンデのEV、「アイオニック5」に乗った。ヒュンダイ改めヒョンデとして12年ぶりに日本市場に参入。その看板車種を目にし、ステアリングを握ると再参入した自信はとてもよく理解できる。

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1970年代のポニークーペをオマージュしたエッジが際立つボディライン。

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その前のめりなデザインは、まるで鳴り物入りでデビューしたアイドルが注目をひとり占めする野心のように強い(笑)。EVデビューにあたってブランドをどう位置づけるかは自動車会社によってそれぞれ違うものの、自動車の歴史における「百年の計」の一歩ということか、自動車業界全体がEVによってある種の躁状態をかもしだしている。その渦中にあってヒョンデはまず、ひと目で理解できるデザインを優先した。

もう完全にブレイクスルーを狙ってきた挑戦的なエクステリアデザインですよ。まさか前後のライトのデザインが往年の8ビットゲーム機のピクセルアートをモチーフにしているとは思わなかった。これが最新のEVだけに、1970年代生まれにとっては最高に痺れるんだよね(笑)。

かといって世界中でブームを巻き起こしたドラマシリーズ『ストレンジャー・シングス』よろしく80年代オマージュのレトロフューチャーなコンセプトでまとめるのかと思えば、そんな単純な話でもない。足元にはピクセルアートと目線は同じながらも意趣を変えたゴージャスな造形を施した20インチの専用ホイールをあつらえる。このホイールで車格が2つぐらい上がった印象に見える。

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再生プラスチックやバイオ塗料などエコフレンドリーな仕様の室内空間。

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個人的なクライマックスはインテリアにあって、手に触れる場所を人工皮革にしたり、ウレタン加工を施したり、プラスチック部分の印象を抑えるために表面のパターンを替えたりと、とにかく丁寧な配置で抜かりがないところ。

アイオニック5はEVならではのフラットなフロアに前後席ともに足を伸ばせる解放的な空間が特徴的。その分、トランクはいくぶん狭いものの、フロントシートにはオットマンが付いていて足を中に浮かせてバスタブに浸かってるような姿勢でリラックスすることができる。

確かに仕様で「リビング」といってる訳(笑)。EVを居住空間にしたくなる理由はいたって明快で、急速充電している30分間により質の高い休憩をとりたいから。スマホを眺めながら、運転姿勢から解放される30分をイメージしたつくり込みはパンチライン風に言えば、もはや抜かりないってレベルじゃない。ライバルとの「違い」をつくり、選んでもらえる未来への投資もしている。戦略的だし、決断するにあたってリスクも(ここが重要)とっているんだ。

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ランプのデザインは「パラメトリックピクセル」と呼ばれる。

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峠に行っても305馬力、605ニュートンメートルのパワーに見合った愉しさを提供。舵角は大きめだし、ロールやアンダーもそこそこ出るものの足回りがちゃんと踏ん張ってくれるからすぐに限界がくることもない。この辺も「退屈はさせません」って開発した人の意志を感じるのね。

惜しむらくはクルマは350kw規格の超高速充電に対応しているけど、日本にはその設備がないこと。ディーラーを置かない方針のヒョンデだけど、自前のインフラだけでもつくってくれないかなと切望しちゃうよね。

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ピクセルがデザインのリソース。1980年代のレトロなテレビゲームを彷彿させるデザインとスタイルに遊び心を感じる。

ヒョンデ・アイオニック5 ラウンジ AWD

サイズ(全長×全幅×全高):4635×1890×1645㎜
バッテリー容量:72.6kW
最高出力:305PS
最大トルク:605Nm
航続可能距離(WLTCモード):577㎞
駆動方式:4WD
車両価格:¥5,890,000
問い合わせ先/Hyundaiカスタマーセンター
TEL:0120-600-066
www.hyundai.com/jp

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※この記事はPen 2023年4月号より再編集した記事です。