まずは500万円の貯金を…老後破綻を防ぐ「頑張る力」

  • 文:川畑明美
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子どもの運動会で、「頑張れ!」と声をかけることがある。頑張ることは良い意味にとらえている方が多いと思うが、広辞苑によると「頑張る」は、次の3つの意味がある。

1)我意を張り通す。

2)どこまでも忍耐して努力する

3)ある場所を占めて動かない

元々は、1番目の「我を張る」という意味で自分を押し通すという意味が強かったようだ。昔は「あの人頑張っているなぁ」というのは、軽蔑の意味もあったと宗教評論家のエッセイを読んだことがある。我を通すのではなく、もう少し温和になればいいのに、という意味だったという。ところが現代では、2番目の「どこまでも耐えて努力する」というように使っていると感じる。声掛けにつかう「頑張れ!」は、まさに、どこまでも耐えて努力するという意味に近いだろう。どこまでも耐えて努力したら「良い結果が得られる」というふうに使っているのではないだろうか。

ところが最近は、「頑張った」は「疲れた」というアピールに使われているように感じてならない。「頑張ったのですが、○○という結果でした」という言い訳に使われているのだ。これは、「努力しましたが成果を上げることができなかった」という意味だ。努力しても成果が上がらないのならば「頑張った」ことにはならないのではないだろうか。「頑張った」を「疲れるまでやった」と勘違いしているとしか思えない。

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成果が出るまで努力するのは楽しい

「頑張ったのですが、赤字家計なんです」と言い訳する方もいるが、成果が出ていないということは「頑張った」とは言えない。そして筆者が考える「頑張る」は、決して苦しいものではない。成果がでるまで努力できるのは「辛い」ことでは続かないからだ。特に節約生活などは、頑張ってやるものではなく、楽しんですることだと思う。

インスタグラムやブログでは、年金が月5万円でもイキイキと生活している方や、20代後半のご夫婦で月10万円で生活できている方を見る。そういう情報を発信している方は総じて今の生活を楽しんでいる。お金を使わなくても楽しむことができると発信しているのだ。

ただしお金を使わない生活になるまでは、努力を続けたことも綴られている。自分自身に「何が必要で、何が不要なのか」それを見極める時間が必要だということなのだ。そして不要なモノを捨てていくと本当に必要なモノだけが残り、お金を使わなくても生活ができるようになる。お金を使わないのだから、仕事も最低限したらいいので、早期リタイヤ生活や年金が月5万円の生活が楽しめるようになるのだ。

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あなたは何のために頑張るのか?

何のために頑張るのか。それは自分らしく生きるために努力することだと思う。筆者が投資を家計に取り入れようとしたキッカケは、子どもの夢も叶えて、自分達の生活も犠牲にしないためだった。共働きで世帯年収も割と高い方だと思っていたのに、試算をしてみると子ども2人を中学校から私立に通わせると学費と老後資金の両方を十分蓄えるには、預金だけではどう試算しても足らなかった。

18年くらい前の話しだが、当時は教育費を投資で増やしたいといとFPに相談すると烈火のごとく叱られた。ところがその頃、2000年代初頭はインターネットで株が購入できるネット証券が爆発的に普及していった時代だった。インターネット証券では、投資教育もネットで公開していたので、そういうサービスを利用しながら学んだ。

動画とテキストがネットで送られてきて課題を提出すると添削してくれるというサービスだった。聞いたことがない金融用語は難しかったが、投資を学ぶのは楽しかったのを覚えている。当時は、未就学児の子どもを育てフルタイムで働いていたので、時間を調整するのはとても大変だったが、子どもの夢を叶えるためと思うと頑張れた。だからこそ、「良い結果」が得られたのだと思う。そして500万円くらいの貯蓄ができた頃に変化が起きた。

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500万円貯められれば、可能性は広がる

20代や30代の内に500万円を貯められると、お金持ちになれる可能性が見えてくる。金融広報中央委員会が発表している「家計の金融行動に関する世論調査」[二人以上世帯調査] 令和4年調査結果によると2022年の金融資産保有者の中央値は400万円だ。つまり500万円以上の貯蓄がお金持ちへの分岐点の可能性を秘めているのだ。500万円あれば、年収500万円以下の方ならば1年以上働かなくても生活ができるということだ。つまり嫌な仕事だったら辞められるということ。これは精神的な負担が大きく変わる。

そして貯蓄額が500万円以上になれば、保険やローンも必要なくなる。生命保険文化センターの調査によると入院時の自己負担費用の平均は、19.8万円。医療保険に3000円支払っているのならば5年と半年分だ。預金があれば、医療保険は必要ないことがわかる。

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貯蓄があれば、マイナスの資産運用をしなくてよい

貯蓄があればローンも必要なくなる。300万円の車を現金で購入したら300万円だが、金利3%で5年間ローンを組んで購入すると約323万円となってしまう。ローンを組むということは、23万円も多く支払うということだ。現金で300万円で購入して、毎月の支払い分のお金を運用したら、逆に23万円増やすこともできるのだ。ローンとはマイナスの資産運用といえる。

貯蓄があれば、マイナスの資産運用をする必要がなくなる。投資をするにも、元になるお金が必要だ。10万円を10%で運用できたとしても年間に増えるのは1万円だが、500万円を10%で運用できれば年間で50万円増える。当たり前のことだが、元金が大きければ大きく増やせるのだ。500万円を投資に回せれば、10年くらいで倍の1000万円に増やせる可能性もあるのだ。

もし、20代で500万円貯められれば30代で1000万円に増やせる可能性が見えてくる。そしてそのまま、20年、30年と運用をつづければ3倍、4倍と増えていく。元になる500万円を早く準備できるようになることが重要だ。お金がある人ほど、お金を増やすスピードが早くなる。20代30代で500万円の貯蓄ができていれば、老後破綻の恐れもなくなるのだ。

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お金の管理を「頑張った」人がお金持ちになれる

平均的な高齢無職世帯では、年金だけでは老後の生活資金が足りないことが明らかになっている。また、退職金もあてにはできない。コロナ禍のような経済ショックが起きると、長年勤めていた企業を退職金なしで解雇されるケースもあるからだ。お金を貯められるようになるには、ある程度の時間がかかる。100万円を貯めるにも1年だと毎月8万円以上貯める必要がある。20代、30代でお金が貯められる習慣をつくることが大事だ。

100万円貯められれば、500万円を貯められる可能性が見えてくる。お金持ちとは、必ずしも大金を稼いでいる人ではない。お金の大切さやお金の構造をよく理解している人なのだ。500万円を貯蓄して資産運用で増やすことができれば、お金が貯まるスピードが早くなる。そういう域に達するまで、お金の管理を「頑張った」人がお金持ちなのだ。

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【執筆者】
川畑明美●ファイナンシャルプランナー 「私立中学に行きたいと」子どもに言われてから、お金に向き合い赤字家計からたった6年で2000万円を貯蓄した経験をもとに家計管理と資産運用を教えている。HP:https://www.akemikawabata.com/