SUVのスポーツモデルはどうして生まれたのか?

  • 文:多田 潤

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大型SUVとは思えないほど正確なハンドリングをもつ新型レンジローバースポーツ

SUVのスポーツモデルはいつ生まれたのか?

1975年に登場したフォルクスワーゲン・ゴルフGTIや1985年に登場したE30型のBMW M3など、ハッチバックやセダンにスポーツカー並みの性能を盛り込むことで成功したクルマは数多いもの。日本ではスカイラインのGTRがそんな存在の代表格でしょう。

そんな「スポーツ」というキーワードがいまでも大流行しているのがSUVの世界。スポーツSUVが生まれたのは90年代の後半、メルセデス・ベンツMクラスやレクサスRX、BMW X5が登場したころです。乗用車と同じようなハンドリングと乗り心地を実現し、高速道路はもとより、ワインディングでも軽快に走るそれらのモデルは、広くSUVと呼ばれ認知されるようになります。

普通の乗用車のように軽快に走るようになった理由は、モノコックボディを採用したから。それまでトラックのような堅牢なラダーフレームにボディを載せるセパレートボディでないと耐久性を確保できなかったオフロード車にも、ボディ鋼板の進化や強度解析などによってモノコックボディが採用できるようになったのです。英国の伝統的なオフロードモデル、ランドローバー社のレンジローバーも3世代目にモデルチェンジした2001年にモノコックボディを手に入れています。その走りは革新的でした。そしてそのレンジローバーをさらにスポーティに進化させたのが05年に登場する初代の「レンジローバースポーツ」なのです。

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試乗会の舞台となったのは、日本とは思えないダイナミックな風景が広がる山口県の秋吉台。

「運転してもらうクルマ」か「運転するクルマ」か?

レンジローバーより引き締められた足回りにクーペを彷彿とさせる流線型のボディ。レンジローバーより若々しくカジュアルな弟分といった存在のレンジローバースポーツはレンジローバーという高級ブランドの中核を担っていきます。

そして兄貴分のレンジローバーが21年に5代目へと生まれ変わったのにあわせて、3代目のレンジローバースポーツが昨年発表されました。

新型レンジローバーのハンドリングが正確で高級に進化したのにあわせて、最新のレンジローバースポーツも、ハンドリングや乗り心地を大きく進化しています。直線は矢のように走り、コーナーではスポーティモデルのように思い通りのラインをトレースする感覚は背の高いスポーティセダンのよう。車内は静粛で乗り心地もよく、オンロードを走る限りまったく不満はありません。

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レンジローバーのレイアウトを踏襲したレンジローバースポーツのコクピット。

ですが、兄貴分のレンジローバーと弟分レンジローバースポーツに乗り比べるとその差は明確。単純にラグジュアリーとスポーツの違いと言えますが、レンジローバーは運転手に運転してもらうショーファーカー。そしてレンジローバースポーツは自分で運転する高級車という表現がしっくりきます。

「運転してもらうクルマ」か「運転するクルマか」。そんな違いを「スポーツ」という言葉で表現するモダンラグジュアリーな世界観に、英国ならではのクルマへの明確な表現力を感じたのです。

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後部座席は兄貴分のレンジローバーと大きく違います。ここがまさにドリブンカーか、ショーファーカーかの違いです。

 

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日本では3リッター直6ディーゼルターボエンジンと3リッターガソリン直6ターボエンジンの2種類のパワートレインで展開。ともにマイルドハイブリッドの機構を備えます。価格は1068万円(税込)〜

 

多田 潤

『Pen』所属のエディター、クルマ担当

1970年、東京都生まれ。日本大学卒業後、出版社へ。モノ系雑誌に関わり、『Pen』の編集者に。20年ほど前からイタリアの小さなスポーツカーに目覚め、アルファロメオやランチア、アバルトの60年代モデルを所有し、自分でメンテナンスまで手がける。2019年、CCCカーライフラボよりクラシックカー専門誌『Vマガジン』の創刊に携わった。

多田 潤

『Pen』所属のエディター、クルマ担当

1970年、東京都生まれ。日本大学卒業後、出版社へ。モノ系雑誌に関わり、『Pen』の編集者に。20年ほど前からイタリアの小さなスポーツカーに目覚め、アルファロメオやランチア、アバルトの60年代モデルを所有し、自分でメンテナンスまで手がける。2019年、CCCカーライフラボよりクラシックカー専門誌『Vマガジン』の創刊に携わった。