ファンとFaceTimeも…アーノルド・シュワルツェネッガーから学びたいSNS活用法

  • 文:中川真知子
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ハリウッドの大物スターが一般人とFaceTimeする時代がきた。彼らは友人関係ではないし、チャリティーでスターと過ごす権利を買ったのでもない。スターのニュースレターをサブスクして指示に従ったからだ。

その時の様子をご覧いただきたい。

ファンに語りかけるアーノルド・シュワルツェネッガー

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アーノルド・シュワルツェネッガーはファンサービスに熱心なことで知られる。偶然、彼を見かけたファンが急に話しかけても快く応じてもらえた、なんて話も聞いたことがある。ただ、それはあくまで、映画のプロモーションで回っている時のサービスであるとか、たまたま遭遇した時の幸運でしかないと思っていた。

だが、昨今はSNSの発達に伴い、ファンの距離が驚くほど近くなっているようなのだ。

筆者は、子どもの頃からシュワルツェネッガーの熱心なファンで、彼に会って直接話したいがために独学で英語を勉強し、彼の出身校に留学し、彼の経営するオーストリア料理レストランに通い、最終的に映画ライターにまでなった。約30年努力してやっと彼と対面できたので、FaceTimeでファンが交流できる時代がきたことに驚きを隠せない。

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遠い存在だったハリウッドの映画スター

今はSNSでスターの名前を検索すれば、私生活を垣間見れるが、インターネットが一般的になる前は雲の上の存在だった。特にアメリカでは、映画俳優はテレビに出ることも極めて稀で、コマーシャルはスーパーボウルで流れるものに限定する、といった具合だったのだ。

2000年にブラッド・ピットとジェニファー・アニストンが結婚した時、世間の人たちは映画スターのブラッド・ピットの方が地位も高く稼いでいるはずだと考えた。中には直接的な質問をぶつけたインタビュアーもいた。その質問に対し、ドラマに出演しているアニストンの方が遥かに稼ぎがいい、といった内容のコメントをブラッド・ピットがして、話数単位で支払いが生じるテレビドラマの報酬の高さにスポットライトが当たったことがあった。

日本では、80〜90年代に名だたるハリウッドスターが日本の企業のCMに出演していたので、映画スターの方がテレビスターよりも格上というイメージを持っていないかもしれない。だが、それは当時の日本企業が破格の出演料を出していたのと、CMが日本国内でしか流れない契約だったためにハリウッドスターがお忍びでバイトをしにきていただけ。インターネットが一般的になり、当時のハリウッドスターのCMを動画サイトなどで目にした外国人はとても驚いたという。それくらい映画スターは特別な存在だったのだ。

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スターとSNSの関係

ところが、SNSが広まり、スターとファンの距離は一気に縮まった。ジャスティン・ビーバーのように、YouTubeで人気を集めた結果デビューするアーティストも出てきたために、これまで以上にファンを大切に、ファンの声に耳を傾けるセレブリティが増えた。

ジェニファー・ロペスやドウェイン・ジョンソン、セレーナ・ゴメス、キム・カーダシアン、ヴァネッサ・ハジェンズなどはSNSを積極的に活用してファンを増やしていった人たちで、自身の活動のプロモーションにとどまらず、日々の記録を積極的に投稿した(それが裏目となって自分自身を追い詰めたケースもあった)。

そして、メジャーなSNSが誕生してから約20年が経過しようとしている今、さまざまな経験を通して、スターはSNSを活用する人としない人に大きく分かれている。

使わないことで有名なのは、ジュリア・ロバーツ、ベネディクト・カンバーバッチ、ジェニファー・ローレンス、ケイト・ウィンスレット、エマ・ストーン、サンドラ・ブロックなど。彼らがSNSを使わないのは、決してお高くとまっているからではなく、上手く使いこなせないから、といった理由が多い。また、SNS疲れが理由で離れるセレブもいる。そのタイプのセレブだとセリーナ・ゴメスが有名だが、頻繁に更新していたトム・ホランドも去年の夏にSNS離れを宣言して話題になったのは記憶に新しい。

キアヌ・リーブスやウッディ・ハレルソン、ハリソン・フォードなどはSNSを使っていないが、Redditを代表するオンラインコミュニティにやってきてファンからの質問に応じていた。RedditでAMAA(Ask Me Almost Anything:なんでも聞いての略)を検索すると、ハリウッドの匿名Aリストスター(名前だけで映画観客を呼べる人気監督、俳優のこと)を名乗る人物が数多く登場する。もし自称Aリストスターが本物なのであれば、ファンとの交流は楽しみたいのだろう。

このようにSNSの使い方に気を遣うスターが多い中で、一気にファンと距離を詰めて、FaceTimeまでしたアーノルド・シュワルツェネッガーは珍しいタイプだと言える。

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より多くの人々を健康にしたいから

シュワルツェネッガーはTwitterやInstagramを積極的に活用するだけでなく、筋トレやダイエットを頑張りたい人を対象としたサブスクも運営している。

このサブスクは、シュワルツェネッガーが過去50年にわたって行ってきた「できるだけ多くの人々をより健康にする」活動の一環で、毎日15分以下のエクササイズを促すニュースレターだ。THE PUMP DAILYと題されたニュースレターは毎日届く。内容は、エクササイズを続ける上でのモチベーションとなる言葉や、科学的根拠に基づいた運動の方法など。だが、どんなにいい内容だとしてもニュースレターを受信するだけで放置してしまっては意味がない。

そこで、内容をしっかり読んで、エクササイズを続けてもらうために、SNSで30日間のタスクチャレンジを行うことを発表。このキャンペーンのご褒美がアーニーとのFaceTimeというわけだ。

シュワルツェネッガーはモチベーショナルスピーカーとしても有名で、格言も多い。このFaceTimeでは、「考えるな」と繰り返し伝えている。「考えるな、行動しろ」は数多くの映画でも使われているお決まりのフレーズだが、エクササイズにおいての「考えるな」とシュワルツェネッガーが断言する理由は、ダラダラと考えていると怠惰な方向に進んでいくからだそうだ。

FaceTimeを褒美とした30日間のエクササイズチャレンジは大成功を納め、多くのサブスクライバーが自分の体と向き合って努力を重ねた。体を鍛えている人が言うには、人は3週間ほど真面目にエクササイズすれば体つきが随分と変わるので、楽しくなって続けられるらしい。つまり、このキャンペーンは、FaceTimeができてもできなくても、ファンとシュワルツェネッガーの双方が幸せになるというわけだ。

アーノルド・シュワルツェネッガーはハリウッドスターの中でもかなり上手くSNSを使いこなしているが、コツは、使う目的がファンの獲得でも自己顕示欲でもなく、人々の健康というより大きな目標に向かっているからなのだろう。

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