天才ピアニストも言葉を失った…盲目で自閉症の少女が弾くショパンに、全英が驚愕

  • 文:山川真智子

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ナンバーワンのアマチュア・ピアニストを探すというイギリスのテレビ番組で、盲目かつ自閉症と学習障害を持つ少女が、圧巻のピアノ演奏を披露して話題になっている。音を覚えて指や鍵盤の感触だけで学習した彼女が奏でるショパンの名曲に、多くの視聴者が感動し賛辞を送っている。

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行きかう人も思わず立ち止まる 審査員も絶句…

英テレビ局、チャンネル4の新番組「ザ・ピアノ」は、全国から集まったアマチュア・ピアノ奏者が、イギリス各地の駅に設置されたピアノで演奏を披露する、タレント発掘番組だ。審査員として、ポップスターのミーカや、著名なピアニスト、ラン・ランが参加しており、勝者にはロイヤル・フェスティバルホールでの演奏の機会が与えられる。

この番組に登場し世間をあっと言わせたのが、盲目で自閉症と重い学習障害を抱えている13歳の少女、ルーシー・イリングワースさんだ。指導者に導かれてピアノの前に座ると、彼女の小さく細い指が鍵盤の上で動き始めた。ショパンの「夜想曲第1番 変ロ短調 作品9-1」をスムーズに、そして正確に奏で、目が見えないことや学習障害があることを全く感じさせない。映像を見ると、駅構内を移動する人々が足を止め、驚いた様子で彼女に見入っているのが分かる。

演奏を終えたルーシーさんには、聴衆から大きな拍手が送られた。審査員のミーカとラン・ランも、名曲をさらりと弾いてしまう彼女の才能に驚きを隠せなかったようだ。ラン・ランは困惑の表情で、「いったいどうやって学んだのか」と問い、「言葉も出ない」と感想を述べた。

演奏が始まると聴衆が集まってきた。彼女の演奏を聞き、涙する人も

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本人の学びたい気持ちを尊重 隠れた異能を引き出した指導者 

ルーシーさんは特別支援学校に通っており、そこで指導者のダニエル・バス氏からピアノを学んでいる。バス氏は初めて彼女に会った際に小さなピアノを与えたという。当時5歳ほどだった彼女が楽しそうに「きらきら星」を弾く様子を見て、この子にとってピアノが障害の突破口になるのではないかと感じたそうだ。

ルーシーさんを支援する団体、アンバー・トラストによれば、自閉症の子どもはしばしば意思決定において他人の干渉を嫌うという。そのためバス氏はルーシーさんの指導に際し、「教える」のではなく「学ばせる」ことを大切にしている。新しい曲を練習する場合、まず何度も弾いて聞かせて彼女が曲を頭に入れるまで待つ。そして左右の手の使い分けを目で確認できない彼女のために、片手ずつで弾き方を指導。また指の運びを分かりやすくするため、自分の手を彼女の手に重ね、動きを覚えてもらうのだという。さらに、語彙が限られている彼女のために、できるだけ短いフレーズで、無駄なく簡潔な表現でコミュニケーションを取るようにしているそうだ。

バス氏は様々な種類の音楽をルーシーさんに聞かせ、興味を引くようにもしている。クラシック音楽だけでなく、ブルースやジャズなどの習得にもルーシーさんは貪欲で、即興にも対応可能だという。バス氏と支援団体のおかげで、その能力は開花したと言える。

 

ジャズを演奏するルーシーさん

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凡人にはない才能 脳の多様性のお手本に

ルーシーさんの演奏はソーシャルメディアでも話題となり、「大多数の凡人のほうが彼女よりずっと下手」「久々にテレビで素晴らしいものを見た」「ものすごい才能」と驚嘆の声が寄せられている。

近年、自閉症や学習障害などを神経や脳の違いによる「個性」と捉え、ニューロ・ダイバーシティ(脳の多様性)という言葉も使われている。発達障害を持つ人々の可能性を示したルーシーさんは、ニューロ・ダイバーシティの素晴らしい例だという声もあった。 

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【動画】天才ピアニストも言葉を失った…盲目で自閉症の少女が弾くショパンに、全英が驚愕

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ジャズを演奏するルーシーさん

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