20〜30代で100万円を貯められない人の危険な末路

  • 文:川畑明美
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貯蓄ができない人にとって、100万円を貯めるまでが最も大変だろう。貯蓄額を大きくするには、毎月コツコツした努力が必要だからだ。ダイエットで急激に体重が落ちることが無いように貯蓄額も少しずつしか貯まらない。例えば1年で100万円を貯めるには毎月8.3万円の貯蓄が必要だ。貯蓄がゼロの人が、翌月から8.3万円を貯蓄に回せるようになるとは考えにくい。


100万円を貯蓄するには、ダイエットと同じで生活習慣を変えなければならない。最初は頑張れるのに、50万円近くになると気が緩んでお金を使ってしまったりする。ダイエットのリバウンドと同じことだ。太りすぎていると中年以降に病気のリスクが高くなるように、お金の使い方も20〜30代の若い頃にお金の使い方をマスターしておかなければ、中年以降にお金に困る生活になってしまう。


お金持ちに共通しているのは、収入が多いということ以上に、お金の使い方が上手ということだ。「お金持ちはケチ」といわれるようにお金の使い方にこだわっている。マイクロソフトの元会長ビル・ゲイツ氏がマクドナルドでハンバーガーを買う時は必ず割引クーポンを使うように、お金持ちほどお金の使い方にこだわりがある。

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100万円の貯蓄で心の安心を得た


貯蓄額を増やすには、ムダをなくさなければならない。そのためには、自分にとって何がムダなのか、それを一生懸命に考える必要がある。ムダな出費が分かれば、逆に必要な出費は何なのか、良いお金の使い方が自然と身に付く。「100万円を貯める」ことが達成できれば「良いお金の使い方」という能力がある程度身に付いてきたという証拠なのだ。必要なモノや価値あるモノにお金を使うお金持ちと同じ能力だ。将来的にもずっと使える最強のスキルといえよう。若い頃に必ず身に付けたいスキルともいえる。


貯蓄ゼロから100万円を貯められると200万円、300万円は自然と貯めることができるようになる。筆者は社会人1年生の時に、この100万円の貯蓄を達成した。それは学生時代に貧乏で、いつもお金がなく毎日がとても不安だったからだ。学生時代は、バイトをしないと生活できなかったから、風邪などひいて体調が悪いと、すぐに食事にも困ってしまう程だった。毎月カツカツの生活は、とても大きなストレスだった。安心できるお金としても100万円をできるだけ早く達成したかったのだ。100万円の貯蓄ができて、心の余裕ができた。

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お金の使い方を真剣に考える

また、お金の使い方を必死で考えていないと、すぐにお金は煙のようにあなたのお財布から消えてしまう。なぜなら、買い物をするためのお店を経営している企業は、行動経済学をよく学んでいるからだ。店舗の陳列も常に工夫をしている。そして広告も巧みだ。テレビだけでなくSNSやYouTubeなどのメディアでも広告が入っている。そういう広告には、将来の不安などを刺激するような商品やサービスもたくさんある。


「いかにお金を支払ってもらえるのか?」企業では、真剣に考え売上を伸ばそうとしている。あなたが、お金の使い方を考えていなければ、誘惑に負けてムダなお金を支払うことになってしまうのだ。そのため「貯蓄に回すお金がない」状態になってしまう。


以前、筆者の講座を学んだ方で、学ぶ前は借金をして買い物をするのが当たり前だった、という方がいらっしゃった。自動車もマイカーローン、子どもの学費も教育ローンを借りていた。節約や貯金を考えたこともなく「なんとかなる」「いざとなったらローンで」と、先のことを考えずにやってきたそうだ。

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お金の使い方はあなたの人生そのもの

筆者はよく「お金の使い方は、あなたの人生そのものなんですよ」と、話す。お金の使い方を見ると、その人の生き方や人柄がそれとなくわかるものなのだ。良いお金の使い方ができれば、幸せな気持ちになれる。筆者のそういう話を聴いて人生が180度変わったのだそうだ。欲しいものはローンで買うという行動をしていても、心の奥では「心配」して必死に働いていたことを意識したそうだ。そして住宅ローン以外の負債の完済をしたのだ。今では負債ではなく「資産」が貯まる家計に変わっている。


借金にお金を使えば使う程、あなたの損失が多くなる。世の中には、お金を使えば使う程損失が広がるものがある。宝くじなどは、その代表的なものだ。多くの方が病気や亡くなった時の不安から保険に加入しているが、保険も貯蓄があれば不必要なものも多い。使えば使うほどお金が減ってしまうものにお金を使っていたのでは、お金を減らす一方だ。お金の使い方は真剣に考えて欲しい。

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たった1年で100万円を貯めるには?


1年で100万円を貯めるには毎月8万3,333円貯金しなければならない。1年間の投資では、景気の状態によっては、月に8万円積立投資をしても100万円を達成するのは難しい。今のように株価が下がっている状態では100万円どころか元本割れになる可能性もある(もっともそういう時が安く買うチャンスでもあるのだが)。1年で100万円を貯めるとなるとそれなりの金額を毎月貯蓄することになるのだ。


あなたは、毎月8万円を貯蓄に回せるだろうか。まずは、毎月いくら貯蓄できるのか、それを調べてみて欲しい。毎月の収入と支出の差が分かれば、どの程度貯蓄できるのかが分かる。8万円をベースに考えてみるといい。毎月4万円貯蓄できるのならば、2年でほぼ100万円貯蓄できる。毎月2万円ならば、4年かかる。100万円を貯めるのに、自分は何年かかるのか調べてみよう。

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月2万円の貯蓄とボーナスで?


また、毎月の貯蓄だけでなくボーナスを貯蓄に回せれば100万円に到達するのが加速する。毎月2万円貯蓄していて、ボーナスで夏冬10万円ずつ貯蓄できれば100万円÷(2万円×12ヶ月+20万円)=2年3ヶ月だ。グッと時間が短縮できる。こういう試算をするのも「お金の計画」だ。「お金の計画を立ててください」というと、何も手をつけられない方もいらっしゃるが、お金の計画は実は楽しいものなのだ。


生活に支障がない範囲で毎月の貯蓄額を増やす工夫をしてみてみよう。筆者も毎月6万円もの赤字家計だった頃にした試算だ。子どもの教育費を貯めるという目標ができたことで赤字家計は、割と早く解消できた。子ども達が未就学児の時はタクシーをかなり使っていた。それをカッコは悪いけれど次女を背負って長女を自転車に乗せ移動することにした。土日の朝食はコンビニで買い物していたのを、土日だけ夫が朝食を作ってくれるようになった。これだけでも赤字がだいぶ解消され、月2万円の貯蓄ができるようになったのだ。

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「ない」と不安を抱える人「ある」と幸福に感じる人

また「ない」ものに注目して「ある」ものを大事にしない人は考え方をかえてみよう。たとえば来年、自分の子どもが大学に進学することになったとする。現在の貯金は100万円。あなたは、「100万円しかなくて不安」と考えるか「100万円あるからなんとかなる」と考えるのか、どちらだろうか? どちらが正解ということではないが、ネガティブに考えると、あまり良い方向に進まない。


楽観的過ぎるのもよくないが、ネガティブに考え過ぎると誤った行動を取りがちなので気を付けたい。来年受験するとして100万円あればとりあえず入学金は支払えそうだ。100万円をどう考えるのかは、自分がどう考えるのかによって決まるもの。大学の4年間で500万円くらい必要だったとしても、一度に500万円が必要になるわけではない。100万円あれば、受験費用と入学金はなんとかなりそうなのだから、今年は初年度の授業料のもう100万円を準備したらいい。

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ないことを数えてリスクを背負ってしまう人

500万円必要なのに「100万円しかない」「これだけでは足りない」と「ない」「ない」を数えてネガティブな感情を大きくする人と「とりあえず受験はできる」「入学金もなんとかなる」と「ある」「ある」とポジティブに考えて前向きな人。どちらの人の方が、幸福感を感じるだろうか。明らかに後者だろう。「ある」「ある」と考えられれば「来年まで頑張ってもう100万円貯めよう!」と、前向きに考えられる。毎月の収支を細かく点検をしてムダを徹底的になくして、毎月の貯蓄額を増やせれば100万円を貯蓄できる可能性も高くなる。


ところが「ない」「ない」の感情でいると「どうにかこの100万円を増やせないか?」という考えに至りリスクを取った投資をしてしまいお金を減らしてしまう人もいる。来年使う100万円ならば、どう考えても投資に回せるお金ではない。ところが「ない」「ない」と、「ない」ものを数える人は、そんな当たり前のことも見えなくなってしまうのだ。そもそも子どもが生まれた時点で、18年後に大学費用が必要になるのは分かっていることだ。若い頃からお金の使い方を真剣に考えてこないと不幸な末路になりかねない。

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【執筆者】
川畑明美●ファイナンシャルプランナー 「私立中学に行きたいと」子どもに言われてから、お金に向き合い赤字家計からたった6年で2000万円を貯蓄した経験をもとに家計管理と資産運用を教えている。HP:https://www.akemikawabata.com/