砂丘とすなば珈琲だけじゃない! 冬の鳥取で“カニ”に埋もれる

  • 文:Pen編集部
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昨年11月にオープンした「かにまつば」では、前菜の小鉢から始まり、刺身や姿盛、かにすきまで、コース仕立てで松葉ガニを堪能できる

鳥取といえば、砂丘!だけじゃない。一時は日本全国でスターバックスがない唯一の県と揶揄されることもあったが、実は冬になると、カニの解禁時期に合わせて全国から食通がやってくる“カニ王国”でもある。そんな鳥取の市街地で、最高級の松葉ガニと言われる「五輝星(いつきぼし)」をはじめとした質の高い松葉ガニを提供する、カニ料理専門が新たにオープンした。

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コースは全4種類。15品からなる最上級の「至極 -shigoku- 」(時価)のほか、「秀 -syu- 」(全15品)¥47,300、「極 -kiwami- 」(全14品)¥31,900、「輝 -kagayaki- 」(全11品)¥19,800。「至極」と「秀」は3日前までに要予約。写真はコース料理の一品「親がに姿盛」。カニの身が口の中でほどけていくほどに、旨みが広がる。

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初競りで500万円の値がついた、地元でも希少な「五輝星」

カニの解禁は例年11月〜翌年の3月まで。石川県・金沢など北陸地方もズワイガニの産地として有名だが、ズワイガニのうち、山陰地方で水揚げされるものを松葉ガニと呼ぶ。

2022年11月に、JR鳥取駅からほど違い市内中心部にオープンした「かにまつば」は、松葉ガニ漁獲量日本一を誇る岩美町・網代港で水揚げされたカニの中でもトップランクのものだけを厳選して提供するカニ専門店。

地元の水産業者が松葉ガニの魅力をより広く知ってほしいと始めた店だけに、仲介業者を挟まずに、獲れたての新鮮なカニを提供。地元でも希少と言われる、形や重さ、見た目など厳しい条件をすべてクリアした「五輝星」や相応クラスの松葉ガニをコースで存分に味わい尽くすことができると評判だ。

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コース料理の一品「浜茹で松葉がに」。芳醇な香りとプリッとした食感を堪能したい。

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通常、ズワイガニ漁において、他の漁港では漁場まで10時間以上かかるところが多い中、網代港の漁場である青谷沖までは約2時間で行けることから、松葉ガニを新鮮な状態で漁港まで保つことができるという。また漁場の青谷沖は、対馬海流とリマン海流が交わる位置で、水深250m前後の棚がある。海洋プランクトンが豊富なことから、ギュッと身が詰まった大きな松葉ガニが獲れるそうだ。

「かにまつば」を営む英弘水産の取締役で、代々にわたるカニ漁師の家業を継ぐ山根章文さんは、網代港で獲れる松葉ガニの特徴を次のように説明する。

「この漁港で水揚げされるカニは、新鮮さと身の詰まった質の高さで山陰地方で最高のものとも言われています。ズワイガニは、海の深さや海中のプランクトンの量、海流などによって身の締まりがまったく違うものになってきます。たとえばロシアで獲れるズワイガニと鳥取で獲れるズワイガニでは明らかに違いますね。食べ比べていただければ、誰でもわかるくらいに違うと思います」

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先述のコース料理のほか、単品料理や「かに飯御膳」も用意。カニの身がたっぷり乗った丼に、天ぷらや小鉢三種、カニ汁などがつく。¥5,800

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また、北陸で獲れる越前ガニともその味わいは異なるという。

「石川から福井にかけては、15トンクラスの船での日帰り漁が多いんです。対して鳥取では、100トンほどの大型船で3日間くらいかけて漁に出ます。水深200m〜300mほどの深海に網を張って収穫するのですが、カニは他の魚と違って動かないので、深海と同じ温度にできるようにキチンと設備が整っていれば鮮度は確保できます。網代港の隣にある賀露港と田後港は漁場まで10時間以上かかるため、最短で3日漁、長い場合は6日は帰ってこれない。その点、網代港から青谷沖までは2時間で行けますので、日帰り漁から3日漁まで、鮮度管理と漁獲量のバランスを見ながら選択できる利点があるのは大きいですね。鳥取の青谷沖で獲れる松葉ガニは、日本で一番美味しいカニだと自信をもって言えます」

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和食やカニ専門店で30年近く歩んできた料理長と、東京や大阪のミシュラン星付きのフレンチ店で研鑽を積んだシェフによる2頭体制で、それぞれの視点から鮮度抜群のカニを活かした料理を提供する。写真は「かにすき御膳」¥9,800

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ところで「五輝星」とはいったいどんなカニなのか? 1000枚に2枚ほどしか獲れない幻の松葉ガニで、2019年の初競りでは500万円の価格がついたほど。「甲羅の幅が13.5cm以上」「重さ1.2kg以上」「脚がすべて揃っているもの」「鮮やかな色合いをしているもの」「身がぎっしりと詰まっているもの」という5つの厳格な基準をクリアしたものだけがその名札をつけられるという。

「500万円というのは、まあご祝儀価格ですが(笑)、通常の取引価格でも10万円以上はします。五輝星は、まさに松葉ガニ界のトップスターですね」

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「五輝星」の称号を獲得した松葉ガニ。

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「かにまつば」で提供される、五輝星に匹敵する松葉ガニ。通常の松葉ガニに比べてサイズも大きく、身がぎっしり詰まっている。これらのカニはオンラインショップでも販売しているので、「鳥取に行きたくても行けない!」という人はぜひ。https://eiko-suisan-shop.com

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「松葉ガニの特徴は、他のカニに比べて臭みがない。あっさりしている上に、身詰まりがいいこと。それと足が一本一本長い。タラバガニと比べても後味にクセがないので、ずっと食べられるよさもありますね。タラバガニって、生物学的にはヤドカリの種類なんですよ。実はカニではなく、まったく別の生き物なんです。なので、カニの中のカニっていうと、やっぱり松葉ガニなんです」

カニ漁の解禁は、3月まで。それを食すためだけに旅行する価値がここにはある。

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コース料理の一品「かにすき」。

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コース料理の一品「かに刺し」。

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コース料理の一品「かにの揚物」。

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コース料理の一品「かにみそ甲羅焼」。松葉がにの活け造りをつけて食べるのも美味。濃厚な旨みとともに、ぜひ日本酒と合わせたい。地元鳥取の銘柄、鷹勇の「なかだれ」とも相性抜群。

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店内はすべて個室からなり、落ち着いた雰囲気。友人や大切な人との会話を楽しみながら、人目を気にせずカニに没頭できるのも嬉しい。

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先祖代々引き継がれた漁場を守り続ける山根章文さん。幼い頃より松葉ガニを見続けて培ったその目で、極上の松葉ガニを日々仕入れている。

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鳥取に来たらやっぱり砂丘にも! 市街地からはクルマで15〜20分ほどで到着する。

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「かにまつば」の暖簾が目印。階段を上った2階に店はある。

「かにまつば」

住所:鳥取県鳥取市弥生町302-1 2F
TEL:0857-30-6888
営業時間:11時30分〜14時L.O.、17時30分〜21時L.O
定休日:月曜、年末年始
https://www.kanimatsuba.com