「東京オートサロン2023」なる自動車のイベントが、2023年1月15日から17日にかけての週末に開催された。
幕張メッセを舞台にした、通称オートサロンは、出展者数341社、展示車両は789台。約18万人の来場者を集めたと主催者が発表する、大規模なショー。
注目点は、多種多様なクルマが集まること。クルマのデザインにおける多様性の見本市といってもいいかもしれない。
「世界最大級のカスタムカーショー」(主催者)とされるオートサロン。
1983年のスタートからしばらくは、量産車をベースに性能アップをはかったり、内外装に手を入れたりする、いわゆるチューニングカーが主体。
昨今は、量産車メーカーが新車を発表するなど、東京モーターショー(現在はJAPAN MOBILITY SHOW)をしのぐ存在ととらえるひとも少なくない。
このショーで見るデザインのおもしろさは、ひとつはメーカーによるコンセプトカー。人気が出れば生産することもあるので「参考出品車」と呼ばれることもある。
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たとえば、23年のショーで大きな人気を集めていたのが、ダイハツ工業の「ハイゼットトラック・ジャンボエクテンド」。
軽トラのハイゼットトラックをベースに、仕上げたコンセプトモデル。
「コペン・クラブスポーツ(コンセプトモデル)とともに、レースのシーンを想定してデザインしました」
デザインを担当したダイハツのデザイン部の里舘ひなの氏は、そう教えてくれた。
ユニークな点は、ハイゼットトラックの荷台に載せたモーターホーム部分が伸縮すること。
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同時に発表された「コペン・クラブスポーツ」(コンセプト)のドライバーが休憩をとるために利用するときは、上記の部分を伸ばすことができるというのがデザインコンセプト。
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「世界最小のモーターホーム」と里舘氏は定義する。キュートで、細部まで凝っていって、かつ、グレイとあざやかなレッドのコンビネーションが目を惹くモデルだ。
ダイハツでは、やはり女性デザイナーが手がけた「タントカスタム・レッド/ブラック」なる軽乗用のタントをベースにしたモデルも興味ぶかかった。
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赤と黒に塗り分けたボディカラーは、(簡易的な)ラッピングでなくて、手吹きの塗装、とデザインを担当した秦麻衣香(はた・まいか)氏は語る。
「そもそも元気のいいイメージだったタント・カスタムをベースに、年齢に関係なくロックが好きなひとに乗ってもらいたいとデザインしました」(秦氏)
内装も、赤と黒で仕上げているばかりか、シフトレバーは眼の部分が赤く点灯するしゃれこうべ。ダッシュボードにはレザーストラップと、いわゆるブラックメタルファッションを連想させる。
クルマはファッションなどより先行開発期間が長いので、”世はクルマにつれ、クルマは世につれ”とはなりにくいが、市販車を上記のように徹底的に仕立てるのは、おもしろいのでは。
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コンパクトカーのコンセプトモデルでがんばるダイハツは、さらにもう1台、「アトレー・ワイルドレンジャー」もユニークだ。
全高が1.8メートルを超えるスーパーハイトワゴンであるアトレーをベースにしたコンセプトモデルだ。
「開発当初は災害救助における初動支援車がコンセプトでしたが、そこにジャングルなどで人命救助をするレンジャーのイメージを取り込みました」
ダイハツのデザイン部の芝垣登志男氏の言葉だ。注目点は、ルーフにボートが乗っていること。これは水辺での人命救助を想定したコンセプトなのだそう。
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側面にオールがとりつけてある中空の浮力あるボートで、ひとりでもおろせるように軽量化されている。ボートのデザインは初めてだったので大変だった、と芝垣氏は教えてくれた。
個人のショップの出展は、オートサロンが始まったときからの目玉であることに変わりはない。
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市販のスポーツモデルを、サーキットでより速く走れるようにチューンナップしたり、あるいは、そのクルマの魅力を独自解釈してさらに拡張するようなデザインを施したり。
意外な発見は、テスラ車を素材に、内外装に手を入れたドレスアップ仕様に力を入れるショップが複数あったこと。
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「テスラ車のファンは多くて、私たちもその一員。今年はテスラオーナーのミーティングをやって、イーロン・マスク氏を呼びたいです」
名古屋からきた「POLISH GARAGE」の大知稔尚氏は話していた。
EVとしては、中国のBYDもブースを出展したりしていたが、トヨタ自動車(出展はトヨタガズーレーシング=GR)の出展も目をひいた。
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1980年代のスポーツクーペ「レビン」を電気自動車に、同「トレノ」を水素燃料車に改造した「コンバージョン」のアイディアを披露したのだ。
これから売り出す新車をEVにするだけでは2050年のゼロカーボンは達成できない、としつつ、「この86のように”コンバージョンの先にカーボンニュートラルの実現がある”」と、プレスカンファレンスに登壇した豊田章男社長。
「クルマ好き達がカーボンニュートラルで大好きなクルマに乗れなくなっちゃう…と寂しく思うのではなく、クルマ好きだからこそやれるカーボンニュートラルがある」と語ったのだ。
モータースポーツも、オートサロンの大きなテーマ。トヨタGRは、コンバージョンモデルのアイディアを披露するいっぽう、GRヤリス RZハイパフォーマンスのさらなる高性能車を発表。
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「セバスチャン・オジエ・エディション」と「カッレ・ロバンペラ・エディション」。
世界ラリー選手権において、2021年ドライバーズタイトル獲得のオジエ選手と、22年にライバーズタイトルをものにしたロバンペラ選手の監修とされる。
2車のちがいは、いろいろありそうだけれど、いま分かっているのは、4WDモードの設定が、両選手の好み(?)に合わせて、ことなることぐらい。この先、発売時期などが発表されるそう。
いまラリー選手権ではハイブリッドのGRヤリスラリー1が走っているが、同時に国内のラリー競技などに向けての「ラリー2コンセプト」も展示されていた。
モータースポーツは、究極の機能主義的デザイン。速く走るための空力処理なども、アスリートが動く姿にも似た、ある種の美といっていいだろう。
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日産自動車がやはりこのショーでお披露目した「GT-R」2024年モデルは、GT-Rを好む来場者が多いオートサロンで、おおいなる注目を集めた。
ドライブトレインやサスペンションに手が加えられて動力性能が上がっているうえに、ボディの空力処理にさらに手が入っている。
フロントバンパーまわりの空力処理、新開発の大型リアスポイラー、さらにリアの形状など見直して、ダウンフォース増加とハンドリング向上が目指されている。
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