「お金で幸せは買える」 幸せになる正しいお金の使い方“8つのルール”とは?

  • 文:川畑明美
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お金があれば、自分の人生をコントロールすることができるが「お金で幸せは買えない」という格言がある。ところが「お金で幸せは買えない」ことが、ほぼ間違いだとハーバード大学の心理学者ダニエル・ギルバート氏は論文で述べている。


論文のタイトルにもなっているように『お金があなたを幸せにしないなら、あなたは恐らくそれを正しく使っていない(If Money Doesn't Make You Happy Then You Probably Aren't Spending It Right)』ということらしい。お金を正しく使うことが大事なのに、多くの人はお金の使い方を間違っている。前回の記事にも書いたが、インフレ率を考えていないこともそのひとつだ。お金の構造を理解していないと値上がりするかもしれない教育費を利率が増えない学資保険で準備したり、低い金利で確定している住宅ローンの繰上げ返済をしたりしてお金を減らしてしまう。労働の対価として得た大事なお金を正しく使いたい。

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“幸せになる”お金の使い方8つのルール

ダニエル・ギルバート氏の論文では、お金の使い方の8つのルールもアドバイスしている。それは下記の8つのアドバイスだ。

1)モノを購入するよりも体験を買う

2)自分のためではなく他人のためにお金を使う

3)大きな楽しみよりも小さな楽しみを買う

4)高額な保険を避ける

5)後払いをやめて今すぐ支払う

6)購入したものが日常生活に与える影響を考える

7)比較して購入するのをやめる

8)お金を使う時は友人に相談する


この中で少しわかりにくい3)の「大きな楽しみよりも小さな楽しみを買う」について補足しておこう。私達には適応力があり高価な買い物もしばらくしたら慣れてしまうということだ。最新式のスマートフォンを購入しても数週間で慣れてしまう。お金には限りがあるので、高いモノでなく頻繁に素敵なものを買う方が経済的だということのようだ。ただし安価なものでも限度を考えて購入することは前提だ。


7)の「比較して購入するのをやめる」も少し解説しておこう。比較検討すると高性能なモノを選ぶ傾向があるということ。比較すると結局性能の高い高価な方が欲しくなってしまうことをいっている。

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映画『フォレストガンプ』のお金の使い方

前述のルールを読んでいて、筆者は、ある映画を思い出した。「フォレスト・ガンプ」だ。1994年に公開された少し古い映画だ。知能指数が低いガンプ(トム・ハンクス)が、純真な心を武器にして人生を切り開いていくストーリー。邦題では「一期一会」と副題がついているが、筆者はガンプのお金の使い方の方が印象に残っている。


一期一会を大切に生きるガンプが、その縁によって成功し大金を得ることを経験する。アップルの株で儲けたお金を戦死した友人の家族に渡したり、様々な団体に寄付をする。純真な心からお金持ちになっても、自分のために使うのではなく気持ちよく他の人のためにお金を使っている、そういう記憶が蘇った。お金の使い方の8つのルールをすべて守っている生き方のようだったと思う。ガンプのように純真な心でいるのは意識しないと難しいが、お金の使い方だけでも、純真になりたい。

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「お金」があるから自由に生きられる


『父が娘に伝える自由に生きるための30の投資の教え』という書籍を読んだことは、あるだろうか。1975年から投資をしている個人投資家が娘宛てに「お金と投資」について書いた手紙の内容をブログに発表し、それを元に書かれた書籍だ。その元となったブログは、世界中から注目された。会社にしばられない人生を送るためのお金の貯め方と、そのお金で投資するヒントが書かれている。


著者のジェイエル・コリンズ氏もその方法で夫婦のどちらも働かずに暮らせるようになっている。「自由に生きる」ことをお金で買ったともいえるだろう。お金があれば、人生の選択肢を増やすことができ、自分らしく生きることができるのだ。


ただし金利がほとんどつかない預金では「自由に生きる」ためのお金を貯めるのにとても長い時間がかかってしまう。お金を運用することで、その時間を短縮できるし大きな金額になれば、その運用益だけで生活することも可能になる。筆者もまとまったお金があったので、嫌だと思っていた会社を辞めることができた。お金があって、資産運用できるスキルがあれば自由に人生を選ぶことも可能なのだ。

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貯蓄があれば仕事に縛られない


私達大人は、生活するために収入を得ている。別の言い方をすると、労働の対価としてお金を得ている。体が健康で体力もあれば、ずっとお金を得ることができるが、病気やケガ・加齢により衰えるとお金を得ることができなくなってしまう。そういう、お金を得ることができなくなる「不安」からお金を貯めている側面もある。そして多くの人は、収入を得るための「仕事」でストレスを感じることもある。


なので働かなくても「ある程度生活できるお金」があれば、仕事に縛られなくてよくなるのだ。筆者は、子どものPTA活動をしたことで社長から「クビ」といわれ、会社員として働くことをやめた。クビを言い渡した社長の年金は、筆者の子ども達が働いたお金が回ることになる。社長の老後を助けてくれる子どもに必要な活動をしてクビといわれるのに心底腹が立ったのと、お金も十分に貯まっていたのでそんな社長がいる会社にすがる必要がなかった。貯蓄があったから、自分の人生をコントロールすることができたのだ。

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お金を貯蓄する理由は何だろう?


お金を貯める理由は、様々あるだろう。高校生の頃は、どんなふうに考えていただろうか。(公財)消費者教育支援センターと(公財)生命保険文化センターの共同調査による『高校生の消費生活と生活設計に関するアンケート調査』を見ると欲しいものを買うためという回答が最も多く進学など将来のためという回答もあった。大人の場合も見てみよう。金融広報中央委員会が2020年に調査した『家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]』によると老後の生活資金が70%と最も高く、次いで「病気や不時の災害の備え」となっている。ちなみに2020年以降は、金融資産保有の目的の設問はなくなった。


高校生と大人では、違いがある。高校生は、お小遣いで一括購入できないものを買うためにお金を貯めているようだ。そして多くの大人は、お金を貯めることで「安心」を得ているように感じる。お金を貯める理由としては、どちらも正解だ。貯金をするのは、一括で購入できないものを購入するために貯めるものであるし、お金があることで「安心」できる。お金で買えないものもあるかもしれないが、多くのことはお金があることで解決もできるのだ。

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【執筆者】
川畑明美●ファイナンシャルプランナー 「私立中学に行きたいと」子どもに言われてから、お金に向き合い赤字家計からたった6年で2000万円を貯蓄した経験をもとに家計管理と資産運用を教えている。HP:https://www.akemikawabata.com/