スタジオジブリの原点とは?松屋銀座にて『アニメージュとジブリ展』が開催!

  • 文・写真:はろるど

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「1984年ごろのアニメージュ編集部午前1時」展示風景。60人はいたという、全盛期の編集部の入稿前夜の忙しい様子がイラストとして描かれている。©︎Studio Ghibli

2023年に創刊45周年を迎えた日本初の本格的商業アニメ雑誌、アニメージュ(徳間書店)。1970年代末の空前のアニメブームの中で生まれると、作家や制作に関わる人々をクローズアップし、場面写真や制作の舞台裏を見ることができるインタビュー記事を掲載するなど、ファンの心を捉えていく。そして高畑勲と宮﨑駿のふたりの才能を見出すと、アニメージュの連載から『風の谷のナウシカ』を世に送り出す。その成功を受けてスタジオジブリが設立され、オリジナルの第1作『天空の城ラピュタ』が誕生した。

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『超時空要塞マクロス』展示風景。シリーズ累計100万個を達成した完全変形戦闘機の玩具(1/55スケール)などが展示されている。このキャクターデザインのイラストを速報で見た鈴木敏夫は、放送前に異例の1ページ大で掲載。予感通りに『マクロス』は大ヒットした。©︎Studio Ghibli

松屋銀座にて開かれている『アニメージュとジブリ展』では、アニメージュの1978年創刊当時から80年代を中心に、スタジオジブリの原点へと至る活動を豊富な誌面や制作資料にて紹介している。かつて「子どもが観るもの」とされたテレビアニメは、1974年に『宇宙戦艦ヤマト』が放送されたことなどをきっかけに若者世代へと浸透。またアニメージュは『機動戦士ガンダム』(1979年に放送開始)を雑誌をあげて応援し、美術やデザインに係る人々や声優などを繰り返し特集していく。そして編集長を担った鈴木敏夫(現、株式会社スタジオジブリ代表取締役プロデューサー)の方針に基づき、アニメファンと同世代の若者らをスタッフに投入。交流イベントやラジオ番組、それにビデオやムック本などが次々と生み出され、活動の範囲を広めていく。

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高畑勲が監督を担った『赤毛のアン』や『じゃりン子チエ』などの特集記事や絵コンテなどが並んでいる。高畑監督は人の日常生活を丁寧に描写するアニメーションを得意としていて、アニメージュではそうした高畑への共感を押し出して作品を紹介した。©︎Studio Ghibli

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映画『風の谷のナウシカ』 1984年 セル画 アニメージュ誌上で連載がはじまった『風の谷のナウシカ』はアニメ誌に留まらず、新聞や雑誌などでも高い評価を得ると、アニメージュ編集部の中で映像化に向けて動いていった。©︎Studio Ghibli

アニメージュの功績のひとつはアニメブームの中、鈴木が才能のある作家たちを発掘しつつ、誌面で取り上げながら育てていったことにある。鈴木はアニメージュの編集を通して高畑勲と宮﨑駿に出会うと、ガンダムや宇宙戦艦ヤマトが大人気だった81年8月号にて宮﨑の31ページにもわたる大特集を掲載し、高畑と宮﨑に寄りそう路線をとることを宣言する。そして『風の谷のナウシカ』が翌年2月号より原作マンガの連載がはじまり、84年に映画として公開される。今回初めて展示されるセル画をはじめ、作品の世界観を深く感じられる造形コーナーにも注目したい。

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『天空の城ラピュタ』から『となりのトトロ』に関する展示風景。『風の谷のナウシカ』は宮﨑駿の漫画連載が先にあったが、『天空の城ラピュタ』はいきなり劇場にて勝負するオリジナル作品だった。©︎Studio Ghibli

展覧会は2021年4月に一度、松屋銀座にて開幕するも、緊急事態宣言の発令を受けてわずか10日間で閉幕し、その後、宮城や大阪など全国6会場の巡回を経て、銀座松屋にて再び開催されたものだ。そして再開催にあたっては展示と物販内容をバージョンアップし、『風の谷のナウシカ』と『天空の城ラピュタ』だけでなく、『となりのトトロ』や『魔女の宅急便』までのスタジオジブリ作品の紹介も加わっている。無念の打ち切りとなって以来、約1年9カ月。前回見逃してしまった場合はもちろん、以前に来場していてもまた楽しめる内容だ。貴重なレイアウトや原画から美術ボードをはじめ、ガンプラにジオラマ、それに雑誌の付録に鈴木の仕事術に関する資料と、展示は想像以上に膨大。時間に余裕を持って出かけることをおすすめしたい。

『アニメージュとジブリ展』
開催期間:2023年1月3日(火)~1月23日(月)
開催場所:松屋銀座8階イベントスクエア
東京都中央区銀座3-6-1
TEL:03-3567-1211
開館時間:10時~20時 ※最終日は午後17時閉場、入場は閉場の30分前まで。1月9日(月・祝)、15日(日)、22日(日)は19時半まで
無休
料金:一般¥1,500
https://animage-ghibli.jp