2022年冬のボーナスはいくらだった? インフレ時の“正しい使い道”とは

  • 文:川畑明美
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今年のボーナスは前年よりも増えた方が多いだろう。ボーナスは増えたがインフレで支出も増えている。来年もインフレは続くと見られるので、ボーナスの使い道はよく考えたい。istock

今年のボーナスはコロナ禍以前に戻ってきた。一般財団法人労務行政研究所が、東証プライム上場企業のうち184社から回答を得た集計結果によれば、2022年冬のボーナスの妥結額は、全産業平均で78万6945円。対前年同期比で8.5%増だ。ただし東証プライム上場企業は、大企業だ。中小企業では、どうだったのかも調べてみた。株式会社フリーウェイジャパンの「中小零細企業の冬のボーナス」に関する実態調査の結果によると「20万円~50万円未満」がボリュームゾーンだ。この調査でも55%の企業が「全体的に増加した・増加する」と回答している。


一方、ボーナスはアップしたが物価も上昇した。帝国データバンクによると2022年の価格改定品目は2万822品目で値上げ率平均は14%。ボーナスが14%以上上がっていればよいのだが、横這いや下がった方は、本当に苦しい生活になっているだろう。値上がりの原因は、原料高と原油高、そして円安だ。2022年の物価上昇による家計への支出負担についてみずほリサーチ&テクノロジーズの試算によると2022年は1世帯当たり9万6000円増加と試算している。ボーナスは、企業の業績などに対して支払われる特別手当。ようやくコロナ禍の不況が改善されたと考えられるが、使い方について、よく考えたい。

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ボーナスの使い道の4つの指針


住宅ローンや車のローンなどボーナス一括払いをしている方がいるが、基本的にボーナス払いはタブーだ。ボーナスは企業の業績によって支払額が変化する。最悪の場合、ボーナスの支給なしとなるケースもあるのだから、ボーナスをあてにしない返済プランを考えるようにしたい。


とはいえ筆者も以前は、毎月の赤字をボーナスで補填していた。以前の筆者のように生活費の補填にボーナスを使ってしまうのは、ボーナスの使い道としては最も避けたい使い方だ。目的を持って使い道を考えたい。次の項目にそって考えてみると良いだろう。


1)貯蓄

2)消費

3)自己投資

4)金融商品への投資


上記の目的別に、しっかり割り振って大切に使いたい。

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インフレ時代に考えたいボーナスの使い道


1)貯蓄

生活防衛費の手取りの6ヶ月分の貯金が無い人はボーナスの40%は貯金に回すべきだ。毎月の収支がカツカツだという方はボーナスでお金を貯めるしかない。預金がないから会社をやめられないというのは辛いことだ。会社をやめても再スタートできるくらいの預金の確保は必須だ。


2)消費

ボーナスは業績によって支払われるもの。それは、あなたも頑張った結果だ。ボーナスの20%くらいは自分と家族の幸せのために使いたい。特に年末のボーナスは、お正月などの支出が多くなる時期だから何に最もお金をかけたいのかを考えてワクワクすることにお金を使って欲しい。


3)自己投資

必ず予算を取って欲しいのが「自己投資」だ。ボーナスの20%くらいは自己投資に確保して欲しいところだ。これからの雇用形態は「ジョブ型」に移行すると考えられる。ジョブ型とは明確な「職務記述書」のもとに雇用されるシステムだ。


より専門的なスキルが必要になるため資格試験を受けたり、そのための勉強のお金を確保しよう。ただし注意点もある。自己投資のつもりで本や教材を購入しても「結局やらなかった」のでは浪費になってしまう。あなたの大切なお金なのだから、元が取れるくらい真剣に学んでみよう。

4)金融商品への投資

資産運用として株や投資信託を購入する資金も確保したい。ボーナスの20%は、投資に回したいところだ。預金が十分にある方は、預金分の40%も含めても良いだろう。ただし現在の相場では、購入しても必ずしもプラスになるとは限らない。投資にお金を回すと、上がったり下がったりする。初心者の方は、一括で購入するのは避けた方が良いだろう。また勉強もせずに投資をするのも危険だ。学びと実践を積み上げることで、相場観が身に付く。ただし、はじめてみないことには、相場観は身に付かないのだから、少額でもいいのでボーナスでトライして欲しい。

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貯蓄率は自分でコントロールできる

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インフレで来年の家計の負担も増える可能性が大きい。自分でコントロール可能な貯蓄率をアップしよう。istock

人生において自分でコントロールできることは、実は少ないのかもしれない。収入の良い職業につくには学歴、日本では学校歴も必要だ。学歴は勉強を頑張れば、ある程度自分でコントロールできるかもしれないが、学校歴は親の収入によって叶わないこともある。世の中にはコントロールできないことがたくさんある。例えば「天候」をコントロールすることはできないのと同様だ。


株式市場も天候と同じくらいコントロールできない。あなたがいつ病気になるのかもわからない。ただし病気になりにくくする「健康管理」は自分でコントロールできる。お金の世界も同じで収入の良い職業につくのは、自分の力だけではコントロールできないが、お金を貯める「貯蓄率」は、あなたがコントロールできる唯一のものだ。


前述のみずほリサーチ&テクノロジーズの試算によると来年2023年の家計への支出負担の予想は、今年の9万6000円からさらに4万円増えると試算している。貯蓄率をコントロールできないと生活は苦しくなってしまう。貯蓄率は、簡単に式で計算することもできる。(貯蓄額÷年収)×100=貯蓄率だ。年収500万円の方で年間20万円貯蓄できるのであれば、貯蓄率は4%となる。

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貯蓄率を上げる法則は2つある?


貯蓄率が高い人だと20%くらいになる。簡単な計算なので、あなたも今すぐ計算してみてよう。そして貯蓄率を上げるには、2つの方法がある。


1) 生活費はそのままで収入をアップする

転職する。または資格を取得して給料をアップする。副業をする。等々だ。ただ気を付けたいのは収入がアップすると生活費もアップしてしまう方も多いという点だ。また自分でコントロールできない部分もあるのもこの方法だ。もうひとつの方法の方が自分でコントロールしやすい。


2) 収入はそのままで支出を減らす

収入を増やすのは、なかなか難しいもの。できないという方も少なくない。しかし支出を減らすのは、誰でもできることなのだ。毎日なんとなく使っているお金の無駄に気付くこと。

自分でコントロールして貯蓄率を上げることができるのは、2つめの方法が確実だ。つまり経済的自由を手に入れるには収入よりも「貯める力」が大事ということだ。そして貯める力は自分でコントロールできるのだ。

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【執筆者】
川畑明美●ファイナンシャルプランナー 「私立中学に行きたいと」子どもに言われてから、お金に向き合い赤字家計からたった6年で2000万円を貯蓄した経験をもとに家計管理と資産運用を教えている。HP:https://www.akemikawabata.com/