イラストレーター、宇野亞喜良が新たにコラボした特殊印刷とは? ギンザ・グラフィック・ギャラリーにて展覧会が開催中!

  • 文・写真:はろるど
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『宇野亞喜良 万華鏡』1階会場風景。俳句と少女をテーマにした作品シリーズを題材に、津田淳子の特殊印刷設計による新作22点が展示されている。

戦後日本を代表するイラストレーターでグラフィックデザイナーの宇野亞喜良(うの あきら、1934年生まれ)。カルピス食品工業、日本デザインセンター、スタジオ・イルフィルを経て独立すると、広告美術、絵本や小説の挿絵からキュレーター、舞台美術なども幅広く手がけ、1950年から半世紀以上にもわたって時代の第一線にて活躍している。特に1960年代から70年代にかけて、アングラ系の劇団を中心としたサブカルチャーと結びつくとセンセーショナルな人気を呼び、劇団人間座公演「愛奴」(作:栗田勇)のポスターが、街で貼り出されるとすべて剥がされてしまったというエピソードも残されている。

今年3月、めでたく米寿を超えた宇野の新たな創作とは?ギンザ・グラフィック・ギャラリーで開催中の『宇野亞喜良 万華鏡』では、かねてより「印刷独特の味わいには、絵画とは違う魅力がある。」と印刷の可能性を追い求める宇野の発案のもと、雑誌『デザインのひきだし』(グラフィック社)編集長の津田淳子とのコラボレーションが実現。約4半世紀前より句会を開いて親しんでいる俳句から着想を得たイメージと、宇野の代名詞とも言える少女をテーマにしたシリーズを題材に、津田の特殊印刷設計を施した新作22点が公開されている。作品から空間全体へと少女のモチーフが広がるような構成も見どころだ。

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左がタマムシフィルムを貼った『猫街』(俳句:間村俊一)。右の『ユニコーンの』(俳句:左亭)はSプリズムプリントという技法が使われていて、見る角度によって色変化が起きるように作られている。

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『美少女』(俳句:藤田湘子)。チョコレートなどの包紙に使われ、バラの模様がエンボスされたドイツ製のホイルペーパーを用いている。可憐ながらも、少しゴージャスな雰囲気だ。

青く輝いて見える『猫街』(俳句:間村俊一)は、オフセットを印刷した上に、偏光するタマムシフィルムを貼り、さらにその上からスクリーンフォイルと呼ばれる加工にて線を強調。光の当たり方によって色が大きく変化する様子を楽しめる。また『風神』(俳句:藤田湘子)は、フランスと日本の伝統工芸を組み合わせたギルディング和紙にて作られていて、金や銅の箔を腐食させて生まれる色の交わりなど、自然の風合いが活かされているのも魅力だ。さらに『襤褸市』(俳句:眞鍋呉夫)では、ボロ市の世界観を段ボールを使って演出していて、段ボールそのものの波型の凹凸も作品として取り込んでいる。このほか、レンズフィルムや新聞紙、またラメを用いた作品もあり、幻想的なイメージが津田の特殊印刷によってより重層的に昇華していく光景を見てとれる。

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『宇野亞喜良 万華鏡』地階会場風景。1960年から70年代のポスター52点が一堂に展示されている。あわせて2階にて上映されている1960年代のアニメーションも見ておきたい。※アニメーションは「お前とわたし」(10分)、「白い祭」(7分)、「午砲(ドン)」(7分)の3本。

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左:「きもの じゅらく帯」ポスター(1971年) 右:「三井信託銀行」ポスター(1971年)

こうした一連の新作に加えて地下の展示室では、今回の印刷実験による新作の原点となったポスター52点がずらりと勢揃い。「越路吹雪リサイタル」から「マックスファクター」、また劇団人間座公演NO.17「愛奴」や演劇実験室◎天井桟敷公演「星の王子さま」など、1960年代より70年代へと至る名作ポスターを目の当たりにできる。虚ろな目をしつつ、決して笑わない少女らはアンニュイに見えつつも妖艶。また確かなデザインに基づく装飾性を帯びた描写から広がるイメージは、情感にあふれながらポエティックな趣きも感じられて空想を誘う。初期作と最新作とがシンクロした『宇野亞喜良 万華鏡』にて、時代を超えて万華鏡のようにきらめく宇野の魔術的な作品世界へと身を委ねたい。

『宇野亞喜良 万華鏡』
開催期間:2022年12月9日(金)~2023年1月31日(火)
開催場所:ギンザ・グラフィック・ギャラリー
東京都中央区銀座7-7-2 DNP銀座ビル1F
TEL:03-3571-5206
開館時間:11時~19時
休館日:日、祝、年末年始(12月28日〜1月5日)
入場無料
www.dnp.co.jp/gallery/ggg/