京都・建仁寺のアート展、今年27歳で他界した髙橋大雅の遺作が寺と一体になって

  • 写真・文:一史

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庭を臨む室内にて鏡の台座の上に置かれたガラス彫刻。

京都「建仁寺」におけるこの展覧会は、12月11日(日)で終了します。
皆さんが京都近辺にお住まいなら、またはこの期間に旅や出張が決まっているなら、週末に自由な時間があるなら、ぜひここを訪れてみましょう。
日本の美や寺の造形に関心がある人が、新しい目線に目覚めるかもしれません。
寺と調和するアートのあり方への解答も発見できるでしょう。

建仁寺の敷地内にある独立した寺「両足院 」住職と作家が対話を重ね、ここに作品展示することをともに計画したイベント。
作家の名は、髙橋大雅(たかはし・たいが)。
活動の軸はメンズファッション。
アパレル業界でも知る人ぞ知る存在です。
20世紀初頭前後のアメリカやヨーロッパの大衆衣服を数千着も収集して研究。
自らをデザイナーでなく設計者と呼ぶ、永遠性のある服装を追う若者でした。

その彼の突然の訃報がメディアに流れたのが今年5月。
致死性不整脈により、4月にわずか27年の生涯を終えました。
21年、京都・祇園に彼のブランド、タイガ タカハシの店がオープン。
店内に「イサム・ノグチ日本財団」の協力を得た自作の彫刻作品も置き、アーティストとしての活躍も期待された矢先の出来事でした。

彼がよく訪れた両足院でアート展を行うことは生前から決まっており、どこにどの作品を置くかといった話し合いもされていたそうです。
没後となる12月3日〜11日の展覧会「不在のなかの不在」は遺作であり意志でもあるもの。
大雅さんの活動を支えたご両親も会場に来て、訪れた人に思想や作品の成り立ちを会話で伝えています。
ファッションブランドのタイガ タカハシ周辺の人も会場スタッフとして運営をサポート。
アート展でありつつ、ここにいる人たちはシック&スタイリッシュな服装の人が大半というユニークな光景を目にできます。

ここではわたしが12月6日の昼頃に訪れた様子を16枚の写真でご覧いただきましょう。
(うち1点はタイガ タカハシの店)

コンセプチュアルな詳細解説やインフォメーションはFASHIONSNAP.COMの「受け継がれる意志、27歳の若さで急逝したデザイナー・現代美術家の髙橋大雅がこの世界に遺したもの」が最適かと思いますのでこちらをお読みいただければ。
ここでは作品鑑賞のヒントを幾つかお伝えしておきます。

1. 素材は石膏、ガラス、ブロンズ、玄武岩。
2. モチーフは、布のドレープ(うねり)。
3. 発想の源は、彫像や絵画の人物が着る布の質感が古来より表現されてきたことから。
4. すべての作品は両足院での展示を目的に制作されたもの。
5. イギリスのアートスクールでファッションを学び、ニューヨークでブランドを立ち上げた彼が帰国して見出したのが日本の美。

現代アートと古典ファッションの間を行き来して、朽ちて味わいが増すものを愛でる日本の美学に心酔した高橋大雅さん。
ほぼ完全に彼の意志による展覧会は、たぶん最初で最後になるでしょう。
作品があることで浮かび上がる両足院の美しさを感じるにも最高のイベントになっています。

私的に悔やまれるのは、生前にお会いしとけばよかった、という思い。
タイガ タカハシの展示会に行けば気軽にお話できたはずなのに。
近年はファッションにおける若い人のモノづくりにさほど心惹かれず、興味の対象を狭めてました。
だめですね、まだまだ新しくイイものがある!

All photos&text©KAZUSHI

KAZUSHI instagram
www.instagram.com/kazushikazu/?hl=ja

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【画像】京都・建仁寺のアート展、今年27歳で他界した髙橋大雅の遺作が寺と一体になって

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鏡の主たる目的はガラス作品裏面の可視化。美しい構造の天井も映り作品と調和してます。

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ガラス作品は全4体が横に並べられています。

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同じ室内の対抗面に並ぶ白い石膏板。凹凸は布のドレープを型どったもの。

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通路の奥に静かに佇む石膏彫刻。寺の白壁と自然にとけこむ作品。

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大雅さんが手で布を手でたぐり寄せてつくった揺れ動くドレープが封じ込められ、時を経ても存在し続けます。

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庭に置かれたブロンズ像。鎌倉時代の菩薩像の衣紋(えもん=衣服)のパーツにインスパイアされた形。大雅さんのデザインをイサム・ノグチ日本財団の彫刻をつくる工房が没後に作品に仕上げました。

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部屋から眺めた庭。左端と右側に2対の彫刻があり、この場にいても見分けがつきにくいほど寺と一体化してます。昔からここにあり続けたかのよう。

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部屋のガラス戸で庭の彫刻2体を囲む。

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大雅さんが収集した、当麻寺建立時の木造残片。自身の彫刻のヒントになったパーツ。

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庭を臨む室内奥には「不在のなかの不在」展のベースになった大雅さんの収集品が。

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鎌倉時代の秋篠寺にあった、伝救脱菩薩像の衣紋。布のドレープが表現されてます。

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大雅さんによる展覧会のコンセプト文章。「芸術概念が存在する以前の古代ギリシャ彫刻、ルネッサンス期のミケランジェロ作品、日本の仏像などの美の共通認識として布のドレープが描かれている」(抜粋)といった内容。

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手漉き和紙に活版印刷された文章。

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縁側に置かれた寺の止め石(“この先立ち入り禁止”を示す日本の伝統のオブジェ)。※髙橋大雅作品ではありません。

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祇園の花街から一歩裏路地に入ったところにあるショップ「T.T」。12月11日までビンテージのカバーオールとデニムパンツと、それを元にしたタイガ タカハシの現行品とを比較する展示を開催中。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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