フェラーリのすべてを見せましょう。「ウニベルソ・フェラーリUniverso Ferrari」なるイベントが、2022年11月26日から29日にかけて、豪州シドニーで開催された。
19年のマラネロに続き、第2回めとなる。私も足を運んでみた。なかなかおもしろい内容だ。
フェラーリはじつはナゾに包まれたブランドかもしれない。イタリアはマラネロにある本社のなかに足を踏み入れられるのは、上顧客だけ。いくらクルマが好きだったり、F1を応援したりしていても、ショールームだって敷居が高い……。
フェラーリ本社は、そんな状態はブランド価値を毀損するかもしれない、と考えているようだ。そこで、モータースポーツ活動、過去のモデル、現在のモデル、オーダーメイドプログラムといった、いまのフェラーリのコンテンツを一般に公開するイベントとして企画されたのが「ウニベルソ」。
会場は、シドニー郊外(といっても銀座と品川ぐらいの距離感覚)のロイヤルランドウィック競馬場。広くてきれいな競馬場だ。そこの一部を使って、いっときの会場としたのだ。壁も真っ赤、そこに赤いじゅうたん。ぜいたくだなあと感心させられる演出だ。
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「マラネロがシドニーにやってきた、と考えてください。ふだんはめったにお見せできないコンテンツを、一般の方々に楽しんでもらうのが目的です」
フェラーリ本社でスポークスパーソンとして活躍する、チーフマーケティング&コマーシャルオフィサーのエンリコ・ガリエラ氏は、晴天のシドニーで、そう語った。
会場は、いくつもの展示室に分けられている。F1、モータースポーツ、クラシックモデル、新車、スペシャルオーダー、といったぐあいだ。
F1の展示は、「F2004」。フェラーリが6年連続してF1選手権を獲得した2004年に、ミシャエル・シューマッハがドライブしたモデルだ。この頃はスタイリング的にも美しいなあと、あらためて思わせられた。壁にはオーストラリアGPでのトロフィーの数かず。
モータースポーツはフェラーリのビジネスの大きな柱。F1やルマン24時間レース(23年はLMHというトップクラスにエントリーする)は別格として、一般のオーナーを対象にしたシリーズは多岐にわたる。
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なかには、往年のF1マシンを販売して、そのオーナーたちによるレースもあれば、かなりの腕前を持つひとたちで競うカテゴリーもある。日本でも、23年には「フェラーリ・チャレンジカップ・ジャパン」という4戦のシリーズ戦が始まる。
いっぽう、レースは興味ないけれど、サーキットは楽しみたいというオーナー向けのイベントもあるし、ばあいによっては、トレーナーが橫に乗って走り方、クルマの楽しみ方をを伝授してくれるコースも選べる。
「サーキットを楽しむのに年齢制限はありません。じっさい、63歳で初めてフェラーリでサーキットを走ったというひともいます。そのひとは、よっぽど楽しかったようで、そこから、どんどんステップアップ。最終的にはルマン24時間レースに出走して、2013 年はGTE-AMクラスで3位として表彰台に上がってしまいました」
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会場でモータースポーツの説明をしてくれたのはフェラーリ本社のフィリッポ・ザニエール氏。ヘッド・オブ・コルソクリエンティ・アジアパシフィックの肩書きをもつひとだ。
コルソクリエンティ Corso Clientiは、F1以外のモータースポーツ活動のプログラムを管理している部門である。
クラシックモデルは、1968年の「365GTB/4デイトナ」と、87年の「F40」。前者は、ピニンファリーナがデザインした美しいボディを持つクーペで、発表されるや大きな人気を獲得し、いまもファンが多い。
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ザ・カーペンターズの名盤「ナウ・アンド・ゼン」(73年)のジャケットもこのクルマ。リチャード・カーペンターはそのあと手放すが「ずっと後悔していて95年に73年モデルを手に入れた」と自分のホームページで書いている。
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F40もエポックメーキングなモデル。フェラーリの40周年記念として、87年に発表された限定モデルだ。V8ツインターボエンジンをリアに搭載。プレクシグラス製のエンジンカバーを透かして、赤いカムカバーが見えるデザインは、いまにいたるまで踏襲されている。
スタイリングはユニーク。エレガントというより超迫力。低いノーズのウェッジシェイプで、完全に”内側”からデザインされたように見える。
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当時フェラーリは、「スポーツカーはこうでなくてはいけないという決まりはない。自分たちがスポーツカーを創った(!)のだから、自分たちのプロダクトがあらたなスタンダードになるのだ」という意味のことを自動車ショーなどで”豪語”していたものだ。
「クラシケ」は、クラシックモデルの保存がひとつの業務。とくにさいきんは、23年には公開予定のハリウッド映画「Ferrari」(マイケル・マン監督)など、歴史的モデルの出番が増えているので、仕事は忙しいようだ。
この映画は、アダム・ドライバーが往年のエンツォ・フェラーリ(1898−1988年)に扮しているもので、モデナを中心にロケが行われていた。私が秋にマラネロを訪れた際、「ロケ現場観たいかい?」とフェラーリのひとに誘われたこともある。
もうひとつ、「クラシケ」の業務は”純正”フェラーリの管理。20年以上前のモデルが対象で、自分のフェラーリが正しい部品を使ってメインテナンスされているか。資産価値を考えるオーナーは、「クラシケ」の認定をもらう。
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新車は、一般のひとがもっとも喜ぶ展示かもしれない。ショールームでだって、いちどに眺めるのはむずかしいモデルがずらりと並べられた。
かつてフェラーリといえば、ミドシップかフロントエンジンかぐらいの違いしかなかったものの、いまは、V12、V8、V6プラグインハイブリッドと、パワートレインは多岐にわたるうえ、ボディタイプも増えている。
フェラーリが2022年6月に投資家むけに開いたキャピタルマーケッツデイでは、「23年から26年にかけて15のニューモデル」を送り出すことが発表された。さらに25年にはピュア電動モデルまで。
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「フェラーリとしては、未来は予測不能であることから、いまの段階でパワートレインの可能性をしぼりたくないのです。あらゆるものに可能性を残しておきたいと考えています」
前出のチーフマーケティング&コマーシャルオフィサーのエンリコ・ガリエラ氏は、会場でのインタビューに応えて、そう語るのだった。
フェラーリでは、モデルの多様化も進めている。上記のエンジンや駆動系のバリエーションに加え、ごく限定生産のスペシャルモデルも、折りに触れて発表。
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「ウニベルソ」会場には「イコナ」シリーズが2台置かれた。ひとつは、2018年の「モンツァSP2」。
「最もアイコニックな歴代フェラーリ・モデルをモチーフとしつつ、時代を超越したそれらのスタイリングが現代の感覚に合うよう大胆に再解釈されたもの」というのが、フェラーリによる「イコナ」の解説。
2021年秋には「イコナ」第2弾として「デイトナSP3」が発表された。「330P3」(1966年)をスタイリングのベースにしたというこのモデル、実車はかなりの迫力だ。
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排気量6.5リッターのV12自然吸気エンジン搭載で、静止から時速100キロまでに到達するのに2.85秒しかからない。「イコナ」は性能も図抜けたモデルなのだ。
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いっぽう、「イコナ」とは言わないまでも、市販のモデルだと飽き足らず、自分の思い入れをもっとクルマに反映させたいというオーナー向けには「テイラーメイド」なるプログラムがスタートしている。
「車両のすべてのディテールをお客様のニーズに合わせてカスタマイズしていただける」とフェラーリが説明するサービス。
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「フェラーリのDNAと密接に結びついた3つのコレクション」(フェラーリのHP)として「Scuderia」「Classica」「Inedita」という3つのカテゴリーに沿ってカスタマイズが可能だ。
会場には、「296GTS」を「スクーデリア」で仕上げたサンプルが置かれていた。ブルーのボディに、イエローのアクセントカラー、それにゼッケン。オープンモデルなので内装をのぞくと、シート形状はレーサータイプであるいっぽう、色づかいがかなり洒落ている。
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「あまり奇矯なカスタマイズだとフェラーリのブランドイメージにかかわらるので、テイラーメイドでは本社のデザイナーがついてアドバイスを行いながら、顧客の希望をいいかたちで実現していきます」
会場での担当者の言葉だ。じっさい、日本のフェラーリオーナーでも「テイラーメイド」は人気という。フェラーリを自分はどう解釈しているか。長年のオーナーだと、見せたくなるんじゃないだろうか。
私が出かけた初日、「ウニベルソ」のもうひとつの大きな目玉は、4ドア4人乗りの「プロサングエ」のお披露目だった。日本いがいのアジアパシフィックでは初とあって、注目度ははんぱない。
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新開発のV12エンジンに、4WDシステムの組合せ。技術的なハイライトは、「これが出来たからこのクルマを発表することにした」と技術担当重役が言い切るアクティブサスペンションシステム。
「フェラーリはどんなかっこうとしていてもスポーツカーでなくてはならないのです」。ガリエラ氏は、初夏の風に吹かれながら、ベールがとられたプロサングエを前に、集まったプレスに、そう誇らしげに語った。
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【写真】シドニーにフェラーリ本社が移転? ファン垂涎のイベント「ウニベルソ・フェラーリ」に潜入
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ザ・カーペンターズの名盤「ナウ・アンド・ゼン」(73年)のジャケットもこのクルマ。リチャード・カーペンターはそのあと手放すが「ずっと後悔していて95年に73年モデルを手に入れた」と自分のホームページで書いている。
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