不動産価格の上昇で「ペアローン」を組んだことによる悲劇

  • 文:川畑明美

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結婚して子どもが生まれてマイホームを買う。当たり前のようだが不動産価格が上昇していることもあり、思わぬ落とし穴に気を付けて欲しい。 istock

新駅ができたり再開発が進んだりすると、その街の地価が上がる傾向がある。筆者が住んでいる最寄り駅は、10年前に開業し、今まさに再開発ラッシュだ。行政も入って古いビルを取り壊して新しい区画を作っていたりしている。タワーマンションも複数建築中だ。この再開発時にマンションを購入しないと、今後はマンションが建つ立地がほとんどないだろうと考えられるくらいの勢いだ。


筆者もマンションのモデルルームを何件か見学に回ったが、ファミリー向けの3LDKはどの物件も1億円超えだ。さらに上階になると2億円以上になる。2億円となると世帯総年収が高いパワーカップルでも購入後の生活は苦しくなる可能性がある。


パワーカップルの厳密な定義はないのだが、一般的に共働きの世帯総収入が1000万円以上の世帯を指すことが多く、夫婦合計の年収が2000万円とするケースもある。ただし2億円の物件を購入するのであれば世帯総収入が2000万円以上でないと購入後の生活が苦しくなってしまうのは、火を見るより明らかだ。

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パワーカップルが利用するペアローンについて


家計における住宅ローンの割合は、20~25%くらいが理想だ。1人で2000万円稼ぐ場合よりも夫婦で2000万円の方が手取りは高くなると考えられるが、手取りは1300万円から1400万円くらいだろう。1400万円の25%は350万円、月約29万円の返済額が理想的だ。しかし実際2億円の住宅ローンの返済は、月額29万円よりも重たくなってしまう。


2億円の借入れを変動金利0.5%で借りて35年間返済するとしたら、年間返済額は約623万円、月額は約52万円になるのだ。頭金を9000万円入れて借入れ額が1億1000万円になれば、やっと25%以内に収まると試算できる。世帯総収入が2000万円でも2億円の物件のローンの負担は、かなり大きい。


さらに、パワーカップルが利用するペアローンのメリットとデメリットをよく考えて欲しい。ペアローンとは、夫婦それぞれが住宅ローンの申し込みをする方法だ。契約する住宅ローンは2本になり、それぞれが相手のローンの連帯保証人になる。


融資が2人分なので、住宅ローン控除も夫婦それぞれの税金から住宅ローン控除が受けられ税金の還付が高くなる。この点はペアローンの大きなメリットだ。ただし注意したいのは、妻が出産によって収入が減った時のこともシミュレーションしておくことだ。途中で夫婦の債務の比率を変更することはできないからだ。

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ペアローンにおける団信のメリットとデメリット

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最近多いのは夫婦ともにローンを組むペアローンで住宅を購入しているケースだ。ペアローンはメリットもあるが致命的なデメリットもある。 istock

他にもメリットがそのままデメリットになってしまうのは団体信用生命保険(団信)の加入だ。団体信用生命保険とは、契約者に万が一のことがあった場合、住宅ローンを返済してくれる保険だ。団体信用生命保険に加入しておけば、残債務を保険会社が返済してくれるので、万が一の時に残された家族は購入した住宅で安心して生活を続けられる。


ペアローンの契約者は、それぞれがこの保険に加入できるというメリットがある。ところがこの点がデメリットにもなってしまうのだ。ペアローンの場合、万が一の事態があったときに支払われるのは、すべての住宅ローンの債務残高ではない。死亡した者の住宅ローンの残債のみが返済される。夫婦のどちらか一方が住宅ローンを組んでいれば、その住宅ローンの残債は全て保険でまかなえるので残された家族は住宅ローンを支払う必要はなくなる。ところがペアローンの場合は、残された側の住宅ローンの返済は変わらず続くのだ。


もちろん対策がないわけではない。各自が借入相当にあたる生命保険に加入することも対策のひとつだ。しかしペアローンのデメリットは、パートナーの万が一の時だけではない。「離婚」すると、かなりやっかいなのだ。

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ペアローンを組んでいるのに離婚すると地獄をみる?


ペアローンを組んでいて離婚する場合、売却ができなければお互いに借金を背負ったまま、それぞれの生活を送らなければならなくなる。とても負担が大きくなってしまうのだ。ペアローンを組んでいるご夫婦が離婚する場合の問題点は主に2つある。


ひとつ目は、ペアローンということは、夫婦どちらにも家の所有権があるということだ。つまり、どちらか片方の意見だけではマイホームの売却を進めることができない。たとえば、子どもが転校するのを避けるために住み続けたいという妻と売却したい夫の場合、話し合いが平行線になってしまう可能性が高い。


2つ目は、お互いに連帯保証人になっているということだ。どちらかの返済が滞ってしまった時に相手の返済義務が発生してしまう。たとえば夫が家をでて妻が残る場合、夫がローンを必ず支払ってくれれば良いのだが、ローンの返済日になってもお金が振り込まれず連絡が取れなくなってしまったら妻が代わりに夫の分も返済することになってしまうのだ。

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家はすぐに売却できるとは限らない

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ペアローンを組んでいて離婚となると、かなり金銭的な負担が多くなってしまう。自分が住んでもいない家のローンを支払うことになってしまう。istock

実は筆者が現在住んでいる家は、前の持ち主が離婚することで手放した家だった。筆者が見つけた時は、売りに出されてから1年経過した頃だった。はじめの売却価格よりも500万円も値引きされていたのだ。ペアローンの家を売却する場合、購入時よりも高く売れれば夫婦の残りのローンもなくなり、上回った分は、夫婦の財産となる。


ところが、そう簡単には家は売れない。売却できない間は、ローンの支払いがのしかかってくる。当時は空家状態だったから、ご自身の借りている家の賃料と住んでいない家の住宅ローンの二重の支払いはとても苦しかったと思う。1年経過しても売れないので値引きしたのだろう。頭金を入れて購入しているのならばローンの残債くらいの価格まで値引きしたのだと思われる。


実際に離婚する際にペアローンで購入した家に住み続けたいというご相談をいただくことがある。ペアローンを一本化することもできるが、そもそも1人でローンを組めないからペアローンにしたはずだ。一本化するのは、現実的ではない。また養育費の代わりにペアローンを負担してもらうという方もいるが前述したように、別れた後にローンの支払いをしてくれず連絡も取れなくなる可能性も高いのだ。お別れする時は家ともお別れする方が無難な選択になる。

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やどかり戦略ならば老後も安心


ちなみにその現在住んでいる我が家も10年が経過したので住み替えをする予定だ。近所はタワマンの建設ラッシュだが、東日本大震災の時にマンションの11階に住んでいて地震の揺れに恐怖を感じたので、タワマンには住みたくない。高層の住宅が建てられないエリアの物件の予約をした。もちろん2億円の物件ではないが、それでもマンション価格が上昇していてかなりの金額だ。


ただし住宅ローンの負担は重たいが、現在住んでいる家の返済がほぼ終わっているので、この物件を賃貸にして家賃収入を得る予定だ。その家賃収入で住宅ローンの半分以上をカバーできると試算している。10年ごとに住み替えをしているので、以前住んでいた11階のマンションも購入時より高く売れたことで、住宅ローンの返済が進んだのだ。


現在の家を保有しつつ、新しい物件が購入できるのは都合がいい。もちろん空室のリスクはあるので無リスクではないが、住み替えることで、高額のマンションが購入できるのだ。さらに10年後の住み替えは、住宅ローンを組むのが年齢的に難しくなるが、子ども達が巣立つと広い間取りは不要なので、次に買うマンションを売却したお金で小さい間取りの家を現金で購入できる可能性は高い。10年後の住み替えで都心から離れるのならば、買い替えすることで老後資金も手に入ってしまうのだ。

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【執筆者】
川畑明美●ファイナンシャルプランナー 「私立中学に行きたいと」子どもに言われてから、お金に向き合い赤字家計からたった6年で2000万円を貯蓄した経験をもとに家計管理と資産運用を教えている。HP:https://www.akemikawabata.com/

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