シルク、ウール、レザーなどの天然由来の素材、そしてポリエステルやナイロンなどの合成繊維まで多種多様なファッションの素材。近年では、着心地や価格の観点だけでなく、カーボンフットプリントや生産過程でのアニマルウェルフェア、水資源への影響、洗濯や毎年約9200万トンにのぼるファッション廃棄物による環境汚染など、様々な角度から評価がなされるようになっている。
これまでも、藻などユニークな素材がアパレル産業では活用されてきたが、このところ注目されているのは最新のテクノロジーによって生み出される「食品関連廃棄物由来の素材」を使ったサステナブルなファッションだ。
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ロンドンに拠点を置くAnanas Anam社が開発するパイナップルの葉の繊維から作られた新世代レザー「Piñatex」が、バッグから靴にまで幅広く活用されている。フルーツ由来の素材でも、従来のレザーと遜色ない見た目や手触り、耐久性だという。
動物由来のレザーよりコスト高で、カラーバリエーションは8~10色しかなく、様々なパターンをプリントができないといったデザイン上の制限も現段階ではある。だが、ヒューゴボス(HUGO BOSS)がスニーカーのコレクションに加えるなど、大手人気ブランドでも自社製品に取り入れる動きを見せている。
この分野では、フルーツの産地であり、同時にファッションの中心地でもあるイタリア発の素材が目を引く。世界有数のワイン生産地としても有名なイタリアでは、H&M財団の支援を受けて、ブドウの皮や種、茎から作られるレザーを開発するVEGEA社が生まれた。
また、オレンジの産地として有名なシチリア島では、オレンジジュースを生産する際に発生する廃棄物を使ったシルクのような布地を作るOrange Fiber社が設立され、H&MのConscious Exclusiveファッションコレクションに使用された。
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フルーツ以外にファッションの代替素材として脚光を浴びているのがキノコの菌糸だ。ハイブランドとのコラボレーションの実績もある。
高品質レザーのように耐久性や柔軟性に富んでおり、廃棄時には堆肥化できるが、環境負荷の高い畜産業の副産物ではない。そんなキノコレザーを、カリフォルニア発MycoWorks社が開発している。アニマルウェルフェアやカーボンフットプリントの観点からも注目されており、米女優のナタリー・ポートマンを含む投資家から1億8700万米ドルを調達。エルメスとコラボレーションのもと「Victoria」と名付けられたキノコ製ハンドバッグをリリースした。
バレンシアガも、2022年秋冬コレクションのランウェイで、イタリアのSqim社の開発する菌糸を用いた新素材「Ephea」を使った9,000ユーロのコートを発表している。
ラルフローレンやステラ マッカートニー、グッチも、このような取り組みに意欲的ではあるが、ほとんどの提携はまだ開発段階であり、一般に消費者が購入できる段階には至っていないようだ。
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ファッションの中心地イタリアだけでなく、世界有数の繊維輸出国であるインドでも新素材は生まれている。
ムンバイを拠点としていたアクセサリーデザイナーのMayura Davda-Shahがニューヨークで立ち上げた「MAYU」は、廃棄された魚(サーモンなど)の鱗から生まれた新素材を用いて、インドの職人が手作業で制作するハンドバッグや財布やスマホカバーを展開。ユニークな質感で人気となっている。
バナナ由来の生地の丈夫さや吸湿性の高さ、オレンジや竹由来の素材の抗菌性など、それぞれの素材ならではの特性についても徐々に研究が進められており、サステナビリティ以外の魅力も徐々に発見されている食材廃棄物由来の服飾素材。
コストやデザイン面でいまだ残るハードルが克服され、より私たち消費者にとって身近な存在となる日が楽しみだ。
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