石がプラモデルに!? 新たな素材と表現に挑戦する美術家、加藤泉の創作世界

  • 文・写真:はろるど

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加藤泉『無題』(2022年) 木、プラモデル、ソフトビニール、刺繍糸、アクリル絵具、ステンレススチール。背中や頭の上にプラモデルやソフトビニールの作品がのっている。

1990年代末より画家として活動をはじめた加藤泉(1969年生まれ)。シンプルで記号的な顔のかたちにはじまり、プリミティブでかつ力強い人物表現を手がけると、2000年代から木彫作品を発表し、いまでは石やソフトビニール、それにプラモデルといった素材を用いて制作を続けている。「人間がいちばん難しい。絵でも彫刻でも、人間が人間をつくるのが最もハードルが高い。」と語る加藤は、一貫して人がたをモチーフとしていて、そのすがたは子どものようでありつつ、古代の人々や聖霊、さらに異星人を連想させ、ミステリアスな魅力に満ちている。

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加藤泉『ジオラマシリーズ』(2022年)のうちの1点。木やプラモデル、ソフトビニールなどが組み合わされ、9点1セットとして作られている。

ワタリウム美術館で開催中の『加藤泉一寄生するプラモデル』では、コロナ禍において展覧会が延期や中止になるなか、スタジオでじっくり向き合ったというプラモデルを使ったシリーズを公開している。まず目を引くのが、ビンテージプラモデルと木彫を自作に取り入れた「ジオラマ」のシリーズだ。そこでは山や海、草地などを木で象った上にソフトビニールによる人がたとプラモデルが組み込まれ、シュールな光景を生み出している。また同じくビンテージプラモデルを木彫にコラージュした大型の作品も見逃せない。人の顔をしつつ、4本の脚で馬のように立つ木彫の背中には、ゴリラや鳥などのプラモデルが新天地を見つけてやって来たかのように群れている。また通常、プラモデルはつなぎ目を消すが、つなぎ目こそが美しいとして、あえて強調しているのもユニークと言える。

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左はル・アーヴル市のアートプロジェクトのために制作したブロンズ彫刻の画像。プラモデルシリーズとして、周囲の緑と同化した巨人の人がた像とリアルな蜂を組み合わせている。右は油彩による『無題』(2022年)

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加藤泉『無題』(2022年)石、アクリル絵具、コーティング。今年開催された『リボーンアートフェスティバル 2021-22』に出展された作品。石巻市内の採石場で見立てた稲井石を用いている。※ワタリウム美術館より外苑西通りを挟んだ屋外のスペースにて公開。

石も加藤にとって重要な素材のひとつだ。2015年、海辺で釣りの最中に足元の石を見て作品にすることを思いついた加藤は、形、色、表面にさまざまな個性を見せる石の素地に絵を描いていく。その後、石と木彫作品を組み合わせたり、ブロンズやアルミに鋳造したりと展開していて、今回もまるで大地の声を聞くかのように横たわる人がたの作品を展示している。 この他、プラモデルの箱の鳥の絵と自らの絵をコラージュし、浮世絵の技法を用いて制作した木版画や、フランス、ノルマンディー地方のル・アーヴル市のアートプロジェクトのために制作した高さ7mにも及ぶブロンズ彫刻の拡大画像も見どころだ。

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加藤泉『オリジナル・プラスチックモデル』。パーツやデカール、組立説明書などが並んでいる。箱がビンテージ風なのも楽しい。

「石のプラモデル?!」と思わず目を丸くしてしまうのが、『オリジナル・プラスチックモデル』だ。フィギュアやプラモデルの制作メーカー「ゴモラキック」の神藤政勝と出会った加藤は、石の作品をプラモデルに仕立てることをひらめく。そしてプラスチックでパーツを作成するだけでなく、パーツに貼るデカールから作品解釈を記したポスター、また昔のプラモデルをオマージュした組立説明書、さらに次回作を予告した箱までも手がけ、ひとつのパッケージとして完成品とともに展示している。デカールの貼り方でオリジナルのプラモデル作品が完成するというが、前代未聞、今まで誰も思いついたことさえないプロダクトだ。ビンテージプラモデルといったノスタルジックな素材に向き合いつつ、変幻自在に新たな作品を生み出す、加藤の遊び心にも満ちた制作を、ワタリウム美術館で見ておきたい。

『加藤泉一寄生するプラモデル』
開催期間:2022年11月6日(日)〜 2023年3月12日(日)
開催場所:ワタリウム美術館
東京都渋谷区神宮前3-7-6
TEL:03-3402-3001
開館時間:11時~19時
休館日:月曜、12月31日〜1月3日 ※1月9日は開館
入場料:¥1,200
www.watarium.co.jp

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