ボルボが、ピュアEVとして開発した「EX90」を初公開。2022年11月初旬にストックホルムでお披露目されたプレミアムSUVは、7人乗りのパッケージ、長い走行距離、外部への給電機能、それに高い安全性など注目点が満載だ。

もうひとつ、同じタイミングで、ボルボ車の個性的なデザインはどうやって生まれるのか。ボルボカーズのデザイン部門でカラー&マテリアルを担当するシニアデザインマネージャーのセシリア・スターク氏が、「ヒントはストックホルムの日常にあります」と、注目すべきものを案内してくれたのだった。
EX90は、従来のプレミアムSUV、XC90に代わるモデルとして企画された。2030年までには販売されるボルボ車は電動車のみするのが目標、というボルボ。
EX90は、「安全性と効率と審美性(デザインの美しさ)を最適化するために、電気化とコネクティビティを活用」した「多様性のあるファミリーカー」とボルボでは説明する。
発表会で、世界中から集まったジャーナリストを前に実車がお披露目されたとき、従来のエンジン搭載車のようなグリル開口部をもたないフロントマスクが新しく、強いインパクトをもっていた。
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「ピュア電気自動車なので、エンジンやトランスミッションやガソリンタンクをもたないため、デザインの自由度が上がっています。従来に対して、うんと理想的なプロポーションを実現することが出来ました」
ボルボ車のデザインを統括するロビン・ペイジ氏は、そう説明してくれた。最大で111キロワット時の容量を持つバッテリーパックはシャシーの下に敷き詰められていて、モーターはリアにひとつか、高性能版は前後にひとつずつ。
一時期電気自動車というと、斬新さを演出する必要があったせいだろう、いたずらに個性を強調するデザインを眼にしたものだけれど、EX90はご覧のとおり、落ち着いている。従来のXC90との共通点を感じさせる機能的で、それでいてエレガンスさえ感じさせるボディデザインだ。
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インテリアも、ボルボ車らしく、独自のテイストが継承されている。ボルボの言葉を借りると「スカンジナビアンデザイン」という。
「現代においてラグジュアリーとは何か?」とボルボのインテリアデザイナー(たち)は話しあったんだそうだ。「その答えは、時代にマッチしながらも、スカンジナビアンデザインの本質である「シンプル」「ウェルビーイング」「天然素材」にしっかりと根ざしています」とする。
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一般的にいって、プロダクトデザインの背景には、美意識をはじめ、ある種の思想とか哲学がある。EX90では、インテリアのデザインは、「リビングルームのように快適であること」を目指したと、冒頭に名前を出したデザインディレクターのスターク氏。
スターク氏の専門は、インテリアデザイナーの造型にしたがって、内装材の種類や色など選んでいくこと。トレンドに敏感でなくてはならないいっぽう、メーカーの哲学をユーザーに伝える重要な役割をになう。
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たとえば、EX90では、大きなセリングポイントとして、車内に生命のあるものが取り残されるのを防止する安全装備がある。室内にセンサー網が張り巡らされ、たとえば、毛布をかけられた乳幼児が寝ているときのかすかな動きもセンシングするのだそう。
そのセンサーは天井まわりに配されるが、室内の雰囲気とうまく調和させ、いたずらに目立たせないようにしたのも、スターク氏らの仕事という。
対照的なのが、EX90に採用された、250メートル先の路面までセンシングするLiDAR(ライダー)。ロンドンタクシーの「TAXI」プレートのように、ルーフの先端にモニターを設けてある。この存在感ゆえに、乗るひとは安心感をおぼえる。目立ったほうがいいときと、隠したほうがいいとき。ともにあるのだ。
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スターク氏の美学に話を戻そう。EX90のインテリアは「昔ながらの自動車のラグジュアリーを捨て、スカンジナビアの考え方を表現しています。ボルボEX90では、お客様のウェルビーイングをデザインの出発点としています」と語っている。
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スターク氏が注目しているストックホルム市内の施設やプロダクトを回ってみると、なるほど、と思えることが多かった。「スカンジナビアのリビングルームのような雰囲気で大自然をイメージさせる温かみのある光」をいうような言葉がよく出てきたのだ。
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案内してもらったのは、ひとつは「ストックホルム国立美術館」。16世紀の彫刻や絵画やタペストリーにはじまり、60年代のスウェーデン家具や70年代のポストモダンを経て、デジタルエイジのデザインまで展示物の幅が広い。
「この美術館は18世紀末に開館して、何度か手を入れられたあと、最近は2018年に現代のかたちに改修されました。私はインテリアデザインが好きで、インスピレーションをもらいに、時どき足を運んでいます」
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スターク氏が「こういうところが好きです」と言ったのは、凝った照明の数かず。天井にガラスをはめこんで自然光が入るようにしたこともとてもいいです、とする。やわらかい光が展示室から食堂にいたるまで、印象的だ。
もうひとつ、美術館とはまったく違うけれど、光線をうまく使っているところが注目に値いします、とスターク氏が言うのが家具。代表例として紹介してくれたのが、「リエンクランツ・デザイン」。
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ストックホルム市内に事務所をかまえ、マスターデザイナー、ルイゼ・リエンクランツ氏Louise Liljencrantzを筆頭に、オーダーメイドの家具で、北米などで高い人気を持つブランドだ。
特徴は、木目を活かした仕上げ、有機的なシェイプ、細部にいたるまでの凝った仕上げ、そして高級な木材を使った品質だ。ボルボのスターク氏は、とりわけ表面の仕上げがすばらしいんです、とする。
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「木の家具なのに、光の反射で、カーテンのドレープのように波打っているさまがたいへん美しいんです。スカンジナビアの光は、たとえばロサンジェルスのように強くはありません。逆に、それゆえに、もののテクスチャーを際立たせる性質を持っています。リエンクランツ・デザインの家具は、木材をうまく使い、かつ、カーブが美しい。おおいに参考になります」
「ボルボEX90の室内には、FSC認証のウッドパネルがあちこちに使われています(FSCとは「適切な森林管理」を認証する国際的な制度)」とスターク氏。
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ボルボ車では、かつ、淡い色のドリフトウッド(海岸に漂着した木材のようにツヤを抑えた仕上げ)を使うのが得意だし、EX90では、ドアに張ったウッドパネルに透かし模様のような仕上げを施し、淡く下のライトが光る仕様もある。赤や青や緑を使うドイツ車とはまったくことなるテイストだ。
それと組み合わされているのが、ウール混や、新開発の合成皮革をつかったシート地。アニマルフリーといって、動物由来の素材を使わないという世界的なトレンドに合致したものである。
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「先進的なシート素材のひとつが、ノルディコ。スカンジナビアの価値観を現代的に表現したもので、ペットボトルなどのリサイクル素材や、スウェーデンやフィンランドで責任を持って管理されている森林から採取したバイオ素材のテキスタイルです」
スターク氏は、ノルディコで作られたバッグを携行している。「プレミアムなインテリアデザインの新しいスタンダードとなるものです」というだけあって、一見レザーに見えるが、あたらしい素材感が魅力的だ。
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スカンジナビアらしさは、レストランも例外ではないようだ。スターク氏が教えてくれたのが、ストックホルム(ほぼ)市内のレストラン「アイラ AIRA」。ミシュランガイドの星つきレストランだ。スウェーデン王室(スウェーデンは王国)が所有する広大な公園内にある。デザインを手がけたのは、コンクリート製アームチェア(1981年)で知られるスウェーデンのヨナス・ボーリン(53年生まれ)。
室内は、しかし、トンガっているというより、居心地がよい。高い天井から外光がふんだんに入る設計であり、テーブルもチェアも落ち着く。なにより料理が印象的だ。素材は、トナカイだったり、魚卵だったり、スウェーデン料理ではおなじみのものだが、構成はクリエイティブで、そもそも味がすばらしい。
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「私がこのレストランを好きなのは、光と、しつらえです。テーブルライトはガラス製のシェイドですが、ガラス工芸の長い伝統があるスウェーデンの作家による手吹きです」
そう言われて店内を見渡すと、テーブルライトは、どれも微妙に色合いがちがう。それが美しい。ある種の美とは居心地のよさにつながるんだと実感する思いだった。
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「ボルボの規模は大きくありません。それで、大メーカーと市場で競合していくには、独自性が重要だし、いたずらにラインナップを拡大するのでなく、やれることをしっかりやって、消費者に認めてもらうことが必要です」
スカンジナビアに出自をもち、その独自性を製品に活かす——。ボルボがことあるごとに喧伝してきた感のある価値観は、あたらしい時代を迎えるにあたっても、しっかり有効なコンセプト。そう、理解できた気がする。
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