「ほとんど起きたことがない」ノルウェー上空にめずらしい“ピンク色のオーロラ”が観測される

  • 文:青葉やまと

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ノルウェー北部の街・トロムソの上空を、めずらしいピンク色のオーロラが包んだ。このオーロラは約2分間にわたり出現し、姿を変えながら夜空に輝いた。

オーロラ発生当時にトロムソ付近でツアーを率いていた、グリーンランドのツアー会社社員であるマーカス・ヴァリク氏が、この貴重な現象をカメラに収めた。

氏が撮影した写真には、空一面に広がる雄大なオーロラが記録されている。はっきりと輝いており、その色は通常の緑ではなく、鮮やかなピンク色だ。オーロラは帯状に広がる形で夜空を貫き、周囲にはうっすらとした緑色の通常のオーロラの帯を伴っている。

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緑のオーロラでさえめずらしいが……

一般にオーロラは、地球の北極・南極付近でしか見られないことや、現地に行っても目撃できるかどうかは気象条件次第であることなどから、容易に観測できるわけではない。一方、目撃できた幸運な人々にとって、刻々と姿を変える神秘的な現象は深い感銘をもたらす。

通常の緑のオーロラでもそれ目当てに現地を訪れる人々が絶えないほどの人気だが、今回はピンクの極めて稀なオーロラの出現とあって、大いに話題となっている。

写真を撮影したヴァリク氏は米USAトゥデイに対し、これほどはっきりとピンク色が観測されることは「非常にめずらしく」、「ほとんど起きたことがない」と語っている。

ピンクや紫のオーロラはこれまでにも稀に発生していたものの、今回のものは色彩が強く出ている点でかなり特殊だったようだ。このツアー担当者はノルウェーで10年以上ガイドとして働いているが、「ピンクと紫の色合いは人生で見てきたなかでも最も強く出ていた」と証言している。

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地球の磁気圏が弱まっていた

地球の北極と南極付近で観測されるオーロラは、一般的には緑色に輝く。地球に吹き付けた太陽風が極付近の薄い磁場を突き抜け、高高度の大気に含まれる酸素原子と反応するためだ。

今回の変わった色のオーロラは、地球の磁気圏に亀裂が生じ、低い高度にまで太陽風が達したことで発生した。低高度では大気中に占める窒素の濃度が比較的高く、これと反応することでピンク色となった。

科学ニュースサイトのライブ・サイエンスは、地球を太陽風から守るはずの磁気圏に亀裂が生じており、これによって太陽風に含まれる電荷を帯びた粒子が高度100キロ以下の層にも吹き付けるようになったと説明している。

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スウェーデンでは青のオーロラも

今回の現象は11月3日に発生したものだが、同日にはスウェーデンでもめずらしい色のオーロラが観測されている。宇宙ポータルサイトのSpace.comは、「奇妙な青のオーロラ」が同地で観測されたと報じている。数秒ごとに姿を変える通常のオーロラと異なり、まるで固定されたかのように動かなかったとのことだ。

こちらも地球の磁気圏に発生した亀裂の影響かと思いきや、ミサイル発射が影響している可能性があるようだ。ロシアの原子力潜水艦が同日、大陸間弾道ミサイルの発射テストを実施しており、この影響という見方が濃厚となっている。過去には2017年にも、ロシアが多数のミサイルを発射した際、北極圏上空に青のオーロラが出現した。

緑のカーテンというイメージが強いオーロラだが、条件次第ではさらにめずらしいカラーで人々を魅惑することがあるようだ。

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【画像・動画】「ほとんど起きたことがない」ノルウェー上空にめずらしい“ピンク色のオーロラ”が観測される

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スウェーデンでは青のオーロラも

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「今まで聞いた音で一番気味が悪い」 NASAが投稿したホラー映画のような“ブラックホールの音”にネット民騒然

人間の耳には聞こえない「音」を加工して可聴に

宇宙を頭に思い描くとき、どんな音を想像するだろうか? 宇宙は真空なので音はしない、と思われがちだが、実はそうではないらしい。このほどアメリカの航空宇宙局(NASA)が「ブラックホールの音」をツイッターに投稿したところ、まるでSFホラー映画ばりのおどろおどろしい音に、ツイートが拡散されて話題になっている。

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この音は、ペルセウス座銀河団にあるブラックホールから発せられている。ブラックホールから音が出ているという事実は、2003年にX線天文衛星「チャンドラ」が音波を観測したことで明らかになっていた。ブラックホールから出てくる圧力波が、銀河団内にあるガスに波紋を起こして音になるという。とはいえ、この音は中央ハ(ピアノでいえば真ん中のドの音)よりも57オクターブほど下の音階になるため、そのままでは人間の耳で聞くことはできない。

そこでNASAは、「ソニフィケーション」(可聴化)と呼ばれる、データを音に翻訳する作業を行った。ペルセウス座銀河団のブラックホールの音データやその他のデータを加工して増幅し、人間の耳に聞こえるようにしたのだ。この音源は5月、NASAがブラックホール・ウィークを開催した際に公開されていたが、今回NASA Exoplanetsのチーム(太陽系外惑星や生命体の可能性について研究しているチーム)がツイッターに改めて投稿したところ、48万件以上のいいねが付くなど、大きな反響となったのだ。

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別のブラックホールからはまったく違う音も

NASA Exoplanetsのツイートには、「ゾッとする音だ」や「チベットの僧侶の声みたい」「今まで聞いた音で一番気味が悪くて今夜眠れないかも」などのコメントが寄せられている。また、映画『スペース・オデッセイ』で使われた音楽に似ているとの指摘もあった。

映画『スペース・オデッセイ』トレイラー

画像の中でレーダーのように回転しているイメージは、さまざまな方向に放出されている音を捉えている様子を視覚化したものだという。また、青や紫の部分は、人工衛星チャンドラが捉えたエックス線のデータを視覚化した。

ブラックホールというと、あらゆるものを吸い込む恐ろしいもの、というイメージがあるのではないだろうか。今回ツイッターに投稿されたペルセウス座銀河団のブラックホールはまさにそのイメージにぴったりの恐ろしい音だが、同じブラックホールでも別の場所だと違うようだ。

NASAは、おとめ座銀河団にあるメシエ87のブラックホールから発せられているデータもソニフィケーションしている。こちらは、X線、可視光線、電波という3つのタイプの光の波長を音に解釈したもの。実際の音データを使用したペルセウス座銀河団のブラックホールの音とは性質が異なるが、あのおどろおどろしい音とは打って変わって、リラックスできそうな爽やかな音になっている。

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【動画・画像】「今まで聞いた音で一番気味が悪い」NASAが投稿したホラー映画さながらの“ブラックホールの音”にネット民騒然

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映画『スペース・オデッセイ』トレイラー

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おとめ座銀河団にあるメシエ87のブラックホールから発せられているデータもソニフィケーション

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スペース・オデッセイに似てる、と指摘するツイート