ニューヨーク市で11月より、求人広告に給料を明記することが義務づけられた。給料の透明性を高め、男女や人種の格差を解消することを目的としている。これにより、早速既存の従業員からは昇給を求める動きが出ているそうだ。
日本では長年平均賃金が上がっていないことが話題になっているが、この動きが日本にもやってくれば、昇給のひとつのきっかけになるかもしれない。
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男女・人種格差の解消に向けて
11月1日より始まった、ニューヨーク市の給料の見える化。仕事のパフォーマンスは同等であっても、男性よりも女性の方が、白人よりも白人以外の方が、受け取る給料は低くなる傾向がある。そのような男女格差や人種格差を解消するために制定されたのが、今回のルールだ。
例えば、求人広告に「給料は6万ドル(約830万円)から15万ドル(約2100万円)」と明記されていては、給料の幅があまりにも広い。仕事を探すときに「自分や家族を十分支えられるだけの給料を受け取れるか、判断する権利を持つべきだ」というのが、このルールの根底にある考え方。
求人広告に記載された給料と見合った金額をもらえなければ、生活は難しいだろう。また、給料の範囲が広すぎれば、なんらかの差別によって給料に格差が生じることも懸念される。そこで、オンライン・オフラインを問わず、すべての求人広告に最低給料と最高給料を記載しなければならなくなったのだ。
違反している企業を見つけた人は、NY市の人権委員会に苦情や匿名の通報が可能。企業は30日以内に是正を求められ、応じない場合は最高で25万ドル(約3500万円)の罰金が科される。
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求人広告を廃止する企業も
実際にこのルールが施行されてから、広すぎる給料範囲を提示している企業について、早速是正を求める声が上がり、警告を受けた企業はその対応に追われているようだ。また、求人広告に掲載された給料を見て、従業員から自分がもらっている給料との差があると、昇給を求める声も出てきているという。
このような影響を懸念して、求人広告を一切廃止して、応募者には履歴書をメールで送るだけの方法をとる企業も出てきているそうだ。
労働者にとってメリットの多いこのルール。アメリカでは、コロラド州、ネバダ州、コネチカット州ですでに同様の法律が成立している。近いうちにカリフォルニア州、ワシントン州などでも成立する見込みで、アメリカ全体にこの動きが広がっている。
日本では、求人募集を見るだけでは給料の範囲がわからない場合がほとんどで、選考過程や採用通知をもらった時点で給料がわかることも少なくない。それに対して、求人広告の段階で受け取れる給料の範囲を正確に把握できるこのルールは、もし日本に導入されれば労働市場にとって大きな変革になりそうだ。給料アップにも一役買うことになるのは、間違いないのではないだろうか。
【出典】
https://www.cnbc.com/2022/11/03/nycs-new-salary-transparency-law-is-off-to-a-rocky-start.html
https://nypost.com/2022/10/23/nyc-pay-transparency-law-will-spur-demands-for-raises-nationwide-experts/
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