マセラティが”空”という車名をもった新型車、MC20チェロを送り出した。名前のとおり、フルオープンになるスポーツモデルで、その発売に合わせて、2022年10月のおわり、シチリアで空をテーマにしたイベントを開催した。
12秒で開閉可能の電動格納式ハードトップをそなえたMC20チェロ(cielo=イタリア語で空)。スパイダーとも呼ばれているように、低い着座位置と、小さなウインドシールドで、オープン状態なら太陽と風をふんだんに感じるドライブができる。
首都パレルモの対角線上にあるシチリア南東部、バロッコ建築が数多く建つ、バル・デ・ノト Val de Notoを振り出しにしたドライブだ。チョコレートの街というモディカModicaを経由し、夏はヨットリゾートとしてにぎわうラグーサRagusaのマリーナまで。
ノトでは、街のストリートファニチャーも手がけるアーティスト、セルジョ・フィオレンティーナ Sergio Fiorentina氏のアトリエを訪ねた。シチリアの空を思わせるブルーを多用した絵画作品とともに、シチリアの名産であるカツオがモチーフのオブジェを制作しているひとだ。カツオの作品は、さまざまな場所でお目にかかった。
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「青はどこまでも深みのある色。美しいだけではないんです」。フィオレンティーナ氏はそう語る。ようやく少し涼しくなってきました、と地元のひとが言っていたように、シチリアでは10月の終わりになってようやく秋の気配。まだTシャツ姿が多いけれど、いっぽう、地上からの蒸気が減ったせいか空が青く澄んでいた。
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私が泊まったサンコラードのリゾートホテルの壁も、フィオレンティーナ氏の作品で飾れていて、青で描かれた人物のイメージが強く印象に残った。
そこから1時間ほど丘陵地帯を走り、モディカに到着。ラグーサ県にある街で、かつては地域の中心だったという。ここも広い空を感じさせる場所だった。
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すこし離れた丘の上から眺めると、青い空を背景にして、山の中腹に街が広がり、薄い茶色の壁をもつ建物群が、独特の雰囲気を作り出している。街のオリジンをたどると、紀元前にさかのぼるけれど、いま有名なのは、チョコレートの街としてらしい。
マセラティのイタリア人広報担当者によると、大航海時代にスペインに支配されたこともあり、そのとき、スペイン人が南米からもちこんだチョコレートの文化がいまも食生活に色濃く残っているようだ。実際に私が食べたのは、シーフードのラビオリで、チョコレートのフレークを振りかけて、風味を出していた。
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そこから南下してラグーサのマリーナへ。マセラティがスポンサーをするマルチハルのヨット「マセラティ・マルチ70 Maserati Multi70」に乗船して、地中海(の一部)をセイリングした。
マセラティは1930年代からボートのエンジンを手がけた経験を持ち、マルチ70では、空力設計などでも協力したそうだ。
マセラティのシンボルは、ネプトゥヌス(ギリシア神話だとポセイドン)の持つ三叉の鉾。海を支配する神様だけに、この日は風も弱く、青い海と空のあいだをゆっくり走りながら、マルチ70のセイルに大きく描かれたマセラティの三叉の鉾を眺めていられた。風が強いと、乗船しているひとはみな、ズブ濡れになるらしい。
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「風はないのはこちらにはツラいけれど、そちらにはよかったネ」。スキッパーを務めるイタリア人のジョバンニ・ソルディーニ氏がそう言ってハハハと笑った。
私が乗る前日、マセラティ・マルチ70は、「ロレックス・ミドルシーレース」に参戦して3位を獲得し、マルタ島からシチリアへとやってきた直後だった。
その夜はバル・デ・ノトのそば、ベンディカリ自然保護区のなかにあるビラ・メッセリア・コンスタンツァなるプライベートビラで、ミシュラン星付きシェフによるディナーが催された。”星”つきも、MC20チェロとの”空”つながりなのだろうか。確認し忘れたけれど。
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料理は品数は(私たちの疲労度を考慮して)抑えられていたが、魚介の出汁とトマトソースをベースに複雑な味が構成されたソースなど、印象ぶかかった。同席したマセラティのヘッドオブデザイン、クラウス・ブッセ氏は「ワンダフル」を連発していた。
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最後は食後酒とともに、シチリアの星空の観察。もはや青ではないけれど、驚くほどきれいに星が見えた。天の川は英語でミルキーウェイというように、イタリア語でもビア・ラッテアとまんま同じ。たしかに白くぼーっと流れているさまはミルクの道のようだった。
MC20チェロは、このイベントの概要からも知れるとおり、人生を楽しむためのクルマだという。
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「さきに発表したMC20クーペは、F1ゆらいの燃焼技術を採用したV6エンジン、ネットゥーノを、カーボンファイバーモノコックシャシーにミドシップして、サーキットでも楽しめるクルマ。MC20チェロは、同じエンジンでも、すこし足まわりの設定をやわらかくするなどして、快適性のほうにキャラクターを振っています」
エンジニアリングを担当したキーパースンの一人である、フェデリコ・ランディーニ氏は言う。
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「そもそも、レースに出たあと、そのまま家に乗って帰れるようなグランツーリスモ(GT)というコンセプトを考えついたのは、マセラティ。MC20チェロはその伝統を受け継ぐモデルです」
デザイン統括のクラウス・ブッセ氏の言葉だ。
シガーシェイプ(葉巻型)のボディに、低い位置のグリル、かつフェンダーも昔のクルマを思わせるようなタイヤを覆うスタイル。ヘッドランプをそこに組み込んだのも、レースカーとロードゴーイングカーの二面性を併せ持つ、往年のマセラティのGTを意識した、とブッセ氏。
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「いっぽうで、MC20チェロではエレガンスもたいへん大事にしています。たとえばミドシップのエンジンへのエアインテークですが、ふつうだったらリアフェンダーに大きく空気採り入れ孔を設けて、そこにエンジンがあることを強調するものですが、MC20チェロではあえて目立たせないようにしています」
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ルーフは格納式だけれど、じつはガラス素材がはめこまれていて、クローズド状態で室内のスイッチによって、透過度が一瞬にして変わる。
透明に近いものから、スモークまで。閉めていても太陽光線が浴びられるし、もちろんトップを開ければ、低いウインドシールドを持つだけに、コクピットに入ってくる風が気持ちよい。
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ひとことでいって楽しいクルマだ。マセラティの開発者の意図どおり、快適性の強さが印象に残った。もちろん、ドライブモードを「スポーツ」か「コルサ(レース)」にすれば、操舵、加速、減速すべてにおいて、ダイレクト感の強いスポーツ性を堪能できる。いっぽう、とりわけ欧米だったら、女性をエスコートしてパーティに乗りつけるのもじつにさまになりそうだ。
空を楽しませてくれた今回の旅の主役、マセラティMC20チェロ。価格は3385万円で、日本では2023年春の早い時期の発売を予定しているそうだ。
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Specifications
Maserati MC20 Cielo
全長×全幅×全高 4669x1965x1218mm
ホイールベース 2700mm
車重 1560kg
3000cc V型6気筒ミドシップ 後輪駆動
最高出力 463kW@7500rpm
最大トルク 730Nm@3000〜5500rpm
0−100km/h加速 2.9秒
最高速 323km/h
価格 3385万円
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【画像】
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