福祉実験ユニット・ヘラルボニーの新たな挑戦「ROUTINE RECORDS」とは

  • 写真・文:中島良平

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『lab.5 ROUTINE RECORDS』展示風景 ブースに展示されているのは、知的障害のある人たちの日常生活に馴染み深いもの。そこから生まれる音がサンプリングされ、来場者がDJ機材を操作して音楽となる。

金沢21世紀美術館デザインギャラリーを調査・研究・実験の場として開き、そのプロセスをプレゼンテーションする〈lab〉シリーズ。第5弾として、pen CREATOR AWARDS 2021を授賞した福祉実験ユニット「ヘラルボニー」が登場し、「ROUTINE RECORDS(ルーティンレコーズ)」と題するプロジェクトの展示が2023年3月21日まで開催中だ。

「本当にやりたい新しいチャレンジを実験としてやってほしいという、とてもありがたいオファーを金沢21世紀美術館からいただいたので、今までは視覚表現を扱ってきましたが、新たに聴覚で楽しめるような企画にチャレンジしました」と語るのは、ヘラルボニー代表取締役副社長|COOの松田文登。金沢市内の特別支援学校や他県の福祉施設に通う知的障害のある人が習慣的に繰り返す日常の行動(=ルーティン)から生まれる音をサンプリングし、音楽に紡ぎあげて届けるプロジェクト「ROUTINE RECORDS」をスタートした。

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左より:ヘラルボニー代表取締役社長|CEO 松田崇弥、代表取締役副社長|COO 松田文登。双子の彼らの4歳上の兄・翔太が重度の知的障害を伴う自閉症であり、そうした知的障害を個性として社会に提示すべく、地元の岩手で創業。兄が小学生の頃にノートに記し続けていた「ヘラルボニー」という言葉を社名にした。

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視聴可能なレコードでサンプリングされた音や言葉を聞きながら、レコードジャケットにデザインされた「音の背景」を読むことができる。

知的障害のある人が好きな言葉を声に出したり、袋のインスタントラーメンやお気に入りの道具をひたすら触り続けたり、ルーティンからはさまざまな音が生まれる。家にいる時には家族が日常のこととして反応する謎で愛おしい音や行動だが、それが外に出た途端、知らない人からは奇異の目を向けられてしまう。その乖離を埋めることができるのではないかと考え、音楽にして一緒に楽しむアイデアが生まれたのだという。文登の双子の弟で、代表取締役|CEOの崇弥は次のように話す。

「ヘラルボニーでは、障害のある人や彼らの特出したアート表現を『異彩』と定義させていただき、社会に放とうと活動してきましたが、今度は彼らの日常のルーティンを『異彩』として美術館で展示することで、彼らの繰り返しの行動そのものの捉え方が変わっていくのではないかと考えました。うちの兄が唱える謎の言葉も愛おしく思いますし、『ROUTINE RECORDS』の活動を知っていただければ、それで救われる親御さんなども少なからずいるのではないかと思っています」

いずれ、「ルーティナー」がアーティストと一緒に曲を制作し、ステージで共演するような晴れの場が実現するかもしれない。金沢21世紀美術館のデザインギャラリーで音源を聞いていると、そんな広がりを予感できるはずだ。

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ルーティナーが生み出す音をサンプリングし、音楽プロデューサーでトラックメーカーのKan Sanoが手がけた楽曲は「P マママ」。ルーティンを撮影した映像がミュージックビデオとなった。
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展示されているものから生まれる音が、サンプリングパッドに収められている。展示物とパッドのボタンに相番号が振られており、実際にボタンを押して音楽づくりのプロセスを追体験できる。

lab.5 ROUTINE RECORDS

開催期間:〜2023年3月21日(火)
開催場所:金沢21世紀美術館 デザインギャラリー
石川県金沢市広坂1-2-1
TEL:076-220-2800
開場時間:10時〜18時
※金・土曜は20時まで
休場日:月(10月31日、1月2日、1月9日は開場)、11月1日、12月29日〜1月1日、1月4日、1月10日
入場無料
https://www.kanazawa21.jp
https://www.heralbony.jp

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