金沢21世紀美術館で開催中! イヴ・クラインの青や光の表現が現代アーティストをインスパイアする

  • 写真・文:中島良平
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展示室8「身体とアクション」展示風景より イヴ・クライン『空気の建築 ANT-102』(1961年) 柔道によって身体と精神の統合を探求したクラインは、物理的な身体の行為をもって、精神の絶対的な自由という非物質的なものを獲得しようとした。身体性を重視した作品も数多く残した。

吸い込まれるような鮮やかで深い青—インターナショナル・クライン・ブルー(IKB)—で知られるアーティストのイヴ・クライン(1928-1962)。芸術の「脱物質化」を目指したクラインの作品を中心に、同時代に影響関係にあった作家や、その制作アプローチを新たに解釈した現代アーティストの作品も展示する企画展が金沢21世紀美術館で開催されている。

展示空間に入ると、まずはイヴ・クラインと日本との関係が資料で紹介されている。フランスのニースで生まれ育ったクラインは、地元で柔道を始め、1952年に日本への留学を果たした。15ヶ月間過ごす間には、講道館から4段を認定されたほか、魚拓や力士の手形、漆器などに触れ、さまざまな「型」を知ったことがその後の発想に大きく影響を与えた。例えば、IKBを身体に塗り女性の姿をかたどった「人体測定」シリーズはひとつの典型と言えるだろう。また、柔道における身体性、「型」を通した身体表現の探求は、空中浮遊のパフォーマンスとの関係を感じさせる。

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イヴ・クライン『空虚への飛翔』(1960年) 1960年11月17日に「『ディマンシュ(日曜)』一日限りの新聞」を発行し、自分が空を飛んでいることを信じさせるために新聞販売店に配布。偽りの新聞の1面にこの写真が掲載された。
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展示室7「非物質的な金」展示風景より 金沢市立安江金箔工芸館が所蔵する金屏風と、イヴ・クラインが友人である詩人や彫刻家の姿をかたどった「人体レリーフ」のシリーズが並ぶ。

最初の展示室7のテーマは「非物質的な金」。金屏風が目に入るが、これもクラインが日本で目にしたものであり、モノクローム絵画を発展させる上で大きな意味を持った。金の持つ色と物質的な存在感に特別な精神性や象徴性を読み取ったクラインは、非物質的な領域に向かうアプローチの材料として金を用い続けた。モノクローム絵画において、金、青、薔薇色の3色を主に用い、金:「精神」、青:「空間」、薔薇色:「生命」として宇宙を構成する三原色だととらえていたクラインの展示の華々しい幕開けとなる。

次の展示室8は、「身体とアクション」がテーマ。先述の「人体測定」シリーズとともに、クラインが来日時に関心を持った、関西を拠点とする具体美術協会の白髪一雄によるフットペインティング作品などが展示されている。また、「色と空間」と題する展示室11には、やはり具体の元永定正による『作品(水)』のほか、クラインとも交流があったルーチョ・フォンタナの作品が展示されるなど、空間と色彩の関係を追求した同時代の作家たちの表現がクライン作品と共鳴する。

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展示室8「身体とアクション」展示風景より イヴ・クライン『人体測定(ANT 66)』(1960年) 裸の女性を紙に押し付け、IKBでかたどるようにシルエットを描いた作品。
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展示室8「身体とアクション」展示風景より 白髪一雄とイヴ・クラインの作品が並び、それぞれに身体性が画面に刻まれている。

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展示室11「色と空間」展示風景より 天井下に吊るされているのが元永定正『作品(水)』(1955/2022)。イヴ・クラインのモノクローム絵画作品(奥壁面)と、裂け目の入った立体性を内包するルーチョ・フォンタナの作品(左右壁面)と空間全体で共鳴する。
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キムスージャ『息づかい』(2022年) 展示室11の外に出ると、光を用いたサイトスペシフィックなインスタレーションが出迎えてくれる。

時代を超えた共鳴も各空間で見受けられる。キムスージャは光庭のガラス窓を回折格子フィルムで覆うインスタレーション作品『息づかい』で、非物質的な材料である光と空間の関係を作品の裏付けとし、布施琳太郎は、Googleストリートビューの画像をモーフィングした映像作品によって、オンラインの非物質的な空間から物質性を蘇らせる試みを行った。音や光、電流を用いたハルーン・ミルザによるインスタレーション作品、クラインが生前に記したバレエ作品の起草をインスピレーションとして制作・上演されたロレーヌ国立バレエ団の作品『エア・コンディション』の映像上映では、トマス・サラセーノによる舞台美術を見ることができる。この4名の現代作家の作品も必見だ。

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布施琳太郎『あなたの窓がぼくらの船になる』(2022年) 今年だけでもグループ展『惑星ザムザ』のキュレーション、『イヴの肉屋』『新しい死体』という2本の個展開催など、精力的に発表を行う気鋭の作家として注目し続けたい。
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ハルーン・ミルザ『青 111』(2022年) 青いLEDライト、音、水の波紋で構成されるインスタレーション作品。スピーカーから発される音は111ヘルツで振動し、LEDの光も111ヘルツで点滅する。作家は、先史時代に北欧で儀礼空間として建てられたと考えらえる巨石建造物が、111ヘルツの周波数で共振する構造を持ち、その周波数が人間の脳機能に影響を与えるという考古学の調査を参照。現代の儀礼空間の創出を試みた。

戦争で多くのものが壊されて混沌とし、従来の価値観や権力が覆った「タブラ・ラサ(白紙)」とも言える状況から、新しい人間性を追求するアーティストとして登場したイヴ・クライン。34歳で夭逝したクラインの表現がどれだけの影響力を持ち、不安定で先の見通せない時代を生きる我々をもインスパイアしてくれるのか。合計9つのテーマで構成される『時を越えるイヴ・クラインの想像力—不確かさと非物質的なるもの—』には、多くの見どころがちりばめられている。

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上から吊るされたイヴ・クライン『青い雨』(1957/2018)と、床に敷き詰められた『ブルー・ピグメント』(1957/2022)

時を超えるイヴ・クラインの想像力
—不確かさと非物質的なるもの

開催期間:開催中〜2023年3月5日(日)
開催場所:金沢21世紀美術館 展示室5〜12、14、光庭2
石川県金沢市広坂1-2-1
TEL:076-220-2800
開場時間:10時〜18時
※金・土曜は20時まで
※観覧券販売は閉館の30分前まで
休場日:月(10月31日、1月2日、1月9日は開場)、11月1日、12月29日〜1月1日、1月4日、1月10日
入場料:一般¥1,400
※日時指定ウェブチケットの販売あり
https://www.kanazawa21.jp

【画像】

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