軽井沢の新アートスポット! レオナール・フジタ、藤田嗣治の秘蔵作品に夢中になる

  • 文:粟野真理子
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軽井沢安東美術館の展示室5。創立者の安東氏が「自宅のような美術館」にしたいと願って設計された館内で、藤田の作品とゆっくり対峙できる。撮影:粟野真理子

“フジタ”と言えば、透き通るような乳白色の裸婦、エコール・ド・パリの寵児、おかっぱ頭に丸眼鏡と口髭といったキーワード。さらには生涯の半分に及ぶフランス暮らし、晩年のフランス帰化、カトリック改宗後の洗礼名レオナール・フジタ、ランスの礼拝堂に永眠…といったドラマティックな経歴が、頭のなかを駆け巡るのではないだろうか。

その藤田嗣治の作品だけをクロニクルに鑑賞できる「軽井沢安東美術館」が、10月8日に軽井沢に開館した。創立者は投資ファンド事業や日本企業の再生に携わってきた安東泰志。コレクションの始まりは、安東が妻の恵と軽井沢の画廊で手にした1枚の版画、『ヴァンドーム広場』(挿画本『魅せられたる河』より)との出会いであったという。

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展示風景より。『猫を抱く少女』はコレクターの間で最も人気が高い画題。少女たちは藤田が空想で描いたもの。撮影:粟野真理子
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猫は藤田の代表的な画題。毛先の一本一本にまで愛情を込めて描かれている。撮影:粟野真理子

『ヴァンドーム広場』は、パリのヴァンドーム広場を背景に、椅子の上に寝転ぶ猫が描かれた作品。安東がかつて訪れた、懐かしのパリを思い出させてくれたのだという。銀行家出身で投資ファンド事業などきびしい金融の世界で活動してきた安東だが、仕事上の障害やもろもろの困難で心身に不調をきたしたとき、癒しを与えてくれたのが藤田の作品だったという。以来、夫婦で約20年間、猫や少女などを描いた「可愛い」と感じられる作品を中心に蒐集、小金井や六本木の自邸に飾って眺めてきた。その数、約180点。家の壁面を埋め尽くすように飾り、愛おしんできた作品を自分たちだけではなく、広く観てもらいたいという気持ちから美術館の設立を検討。約4年間に及ぶ構想の末、開館に至った。

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安東夫妻がかつて暮らした英国から取り寄せた赤レンガとガラスで覆われた美術館。

館内は自宅にゲストを招いて作品を鑑賞してもらうという意図のもと、リラックスした雰囲気。大きなソファが配されたり、コーナーが設けられている。また、藤田が晩年を過ごしたパリ郊外エソンヌの家、「メゾン=アトリエ・フジタ」や藤田が建てたランスの「平和の聖母礼拝堂」などのエスプリを意識した展示空間になっている。

展示室2では藤田がさまざまなスタイルを模索し、「乳白色の下地」を完成させた渡仏初期の貴重な作品群を展示。展示室3では、中南米を旅した時代の作品や帰国後、戦争に巻き込まれていく藤田の足跡を紹介。展示室4はフジタの礼拝堂を想起させる空間で、ニューヨーク経由でフランスに戻った藤田が改宗し、レオナール・フジタとして生きる道を選んで以降につくられた、聖女や聖母子像の作品を展示する。展示室5は、安東コレクションの中核となる部屋で、少女と猫が勢揃いした圧巻のスペースになっている。このほか、特別展示室では挿画本を、屋根裏展示室ではフジタの手仕事を展示している。

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中庭に面したHARIO CAFEでは、HARIOの器具で淹れた薫り高いコーヒーや紅茶が楽しめる。撮影:粟野真理子

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エントランスの横にはミュージアムショップがあり、収蔵される作品のポストカードや一筆箋、メモパッド、主要所蔵作品の詳細が掲載された公式図録「藤田嗣治 安東コレクションの輝き」などを販売。撮影:粟野真理子

安東は美術館設立にあたって、初期から晩年までの広範囲にわたる藤田の作品を揃え、オープニングにあたっては主要な所蔵作品のほぼすべてとなる約150点を展示。個人のコレクションとしてはかつてない規模と質の高さで、国内外の研究者も唸らせる充実したコレクションになっている。カフェやミュージアム・オリジナルグッズも充実し、軽井沢を訪れたときには、ぜひ足を延ばしたい魅力的なプライベート美術館だ。

軽井沢安東美術館

長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢東43番地10
TEL:0267-42-1230
開館時間:10時~17時(4〜10月) 10時~16時(11月〜3月)入館は閉館30分前まで
休館:水曜(祝日の場合は翌平日)、年末年始、2月下旬
入場料:¥2,000(一般)
https://www.musee-ando.com