トレンドの発信地、ニューヨークで注目のカクテルって? 本格焼酎の新たな可能性も

  • 文・写真:菅 礼子

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インフレと海外からの観光客で賑わうニューヨーク。最近では、レストランの予約も困難になってきているほどだ。ナイトライフの活気もあるニューヨークのカクテルトレンドを覗いてみよう。

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バーテンダーのクリエーションが光る、個性的なカクテル

ニューヨークのバーシーンはロンドンと並び、トップバーテンダーたちの個性を詰め込んだカクテルが味わえる。季節の素材やさまざまなリキュールを使ったカクテルが各バーの看板バーテンダーたちによって作られ、彼らの持つカリスマ性やカクテルを作る際のパフォーマンスもバーを訪れる際の楽しみの一つになる。

10月に発表された「The World’s 50 Best Bars」では一位にバルセロナのバーがランクインし、躍進に驚いたものだが、ロンドンと並んでニューヨークも10位以内に「Double Chicken Please 」と「Katana Kitten」の2軒のバーがランクインしている。

「Katana Kitten」は日本人バーテンダーの漆戸正浩氏がヘッドバーテンダーとして活躍し、「Double Chicken Please 」は台湾人のGN Chan氏がヘッドバーテンダーを勤めている。さまざまな人種の入り混じるニューヨークで日本人やアジア人のバーテンダーのバーが評価され、上位に入ってくることは個人的には嬉しいことだ。

ヨーロッパや世界の大都市の最先端のバーでクリエイティブなカクテルトレンドが生まれているが、ニューヨークも例外に漏れず、トレンドが生まれている。

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Double Chicken Please/Photo by Double Chicken Please
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Katana Kitten/Photo by Katana Kitten

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既存のスピリッツがカクテルに使用され、新たな価値を見出す

ここ数年、ニューヨークのカクテルメニューで必ずと言っていいほど目にするようになったのがメスカルだ。メスカルはテキーラと同じメキシコ原産の蒸留酒で、シャンパンなどと同じように原産地呼称が認められているもので、メキシコの9つの州から採られたものに限られている。また、テキーラが「アガベ・アスール」というアガベのみから作られているのに対し、メスカルは52種類のアガベの使用が認められている。

アメリカとメキシコは地続きになっているという地理関係からもあるのか、近年ではこのメスカルがブランド化し、カクテルとして使われるようになっている。ショットで一気飲みをするというテキーラのイメージとは異なり、最近ではプレミアムメスカルブランドも次々と登場し、独特なスモーキーな風味が癖になるというブランディングを確立してきた。

さまざまな分野でトレンドの発信地として注目されるニューヨークのバーテンダーたちは常に新しいスピリッツを使ったカクテル制作にも積極的だという。そこで最近ニューヨークでカクテルとしても目にするようになってきたのが、私たちにもお馴染みの焼酎だ。

韓国系移民が多いニューヨークでは韓国の「韓国焼酎(ソジュ)」の知名度が高いものの、日本の「本格焼酎」がカクテルに使われるシーンが増えてきている。芋・麦・米など、厳選された素材から作られた焼酎は香りが特徴的で、新しいもの好きのニューヨークのバーテンダーたちも興味を持ち始めているようだ。

今年6月にはニューヨーク州で焼酎の販売規制が緩和されたこともあり、アルコール度数が24%以下の焼酎が、飲食店などにおいてソフトリカーライセンスでも販売・提供できることとなった。これによって今後、焼酎を取り扱う店舗が増えると予想されている。

日本では消費量の下がる一方にある焼酎だが、ニューヨークのトップバーテンダーとコラボレーションをすることで“クール”なイメージとして新たな価値を創出できるか期待が高まる。ニューヨークではカクテル用に開発されたアルコール度数43%の「Iichiko彩天」なども登場し、“カクテル用のスピリッツとして焼酎”というポジショニングをメーカーも視野に入れているはずだ。

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World's 50 Best Barsの34位にランクインした「Overstory」。マンハッタンを見渡せるこの景色もゲストを魅了している
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一杯24ドルのカクテル

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食事に使われる素材をカクテルに取り入れるペアリングもトレンドの予感

マンハッタンの中でもクリエイティブであっと驚くカクテルを提供する「Thyme Bar」の元ヘッドバーテンダーで、現在は自身のバーの開業に向けて準備を行っているフランス人トップバーテンダーのジェレミー・ル・ブランシェ氏はこう語る。

「ニューヨークに来て気づいた最近のトレンドは、シンプルなカクテルを作るだけでなく、お酒のペアリングをしながら料理の食材をカクテルに取り入れるということだ。スピリッツに関しては、バーテンダーは視野を広げて、まだ世に出ていないものを使う傾向がある。日本の焼酎もその一つだと思う」。

食事とのペアリングができるよう、食前向きのカクテル、食中向きのカクテル、食後のカクテルというように、食事に使われる素材を取り入れて食事とともに楽しむカクテルを提供するバーも見られるようになってきた。カクテルとしては味わったことのないような食材が組み合わされたカクテルは、芸術的な代物でもある。

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クリエイティブなカクテルを作ることで注目を集めるバーテンダーのジェレミー・ル・ブランシェ

「バーテンダーはますますディテールに注意を払うようになってきている。新しいフレーバー、新しいテクニック、コンセプトがどんどん増えている。アジアから材料や製品、ハードウェアを調達するバーも増えている」とジェレミー氏。実際、日本の木村硝子やカクテルツールを販売するBIRDY.はニューヨークのバーテンダーの中でも日本製として人気が高い。

現在、マンハッタンのトップバーのカクテルは一杯25ドル程度することも。チップを含むと30ドル程度で、日本円に換算すると4000円以上になる高級品だ。味わいだけでなく、バーテンダーのテクニックやお店の雰囲気など、総合したものが金額には含まれている。

そうした価格のこともあり、消費者からはクリエイティブなカクテルが味わえるという期待が高いのだが、ロンドンでキャリアを積んだジェレミー氏はこうも言う。「特別、ニューヨークがカクテルの分野で最先端ということは言えない。ニューヨークのバーテンダーに求められる第一条件は速さでもある」。

日本の焼酎も注目をされ始めているニューヨークのバーシーン。11月1日〜7日まではJSS(日本酒造組合)が主催し、ニューヨークのトップバーテンダーとコラボレーションした焼酎が味わえる焼酎カクテルウィークもスタートするなど、日本も国を上げて日本産スピリッツのブランドイメージ向上に力を入れている。

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ジェレミー氏が考案したカクテル
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「Thyme Bar」では創作的なカクテルが人気だ

文・写真:菅 礼子

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Double Chicken Please/Photo by Double Chicken Please

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Katana Kitten/Photo by Katana Kitten

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World's 50 Best Barsの34位にランクインした「Overstory」。マンハッタンを見渡せるこの景色もゲストを魅了している

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一杯24ドルのカクテル

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クリエイティブなカクテルを作ることで注目を集めるバーテンダーのジェレミー・ル・ブランシェ

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ジェレミー氏が考案したカクテル

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「Thyme Bar」では創作的なカクテルが人気だ