誰もが定年までにお金持ちになって「引退」できるのか?

  • 文:川畑明美
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長い老後のお金のことを考えると憂鬱になる方も多いだろう。誰もがお金持ちになれる方法はあるのだろうか? itock

「退職して引退するまでにお金持ちになりたい!」それは、可能なのか。結論からいえば、条件付きではイエスだ。その解説の前に、お金持ちの基準を考えてみよう。野村総合研究所のニュースリリースによる分類は、次のようになっている。金融資産保有額が5億円以上が「超富裕層」。1億円以上5億円未満が「富裕層」、5000万円以上、1億円未満が「準富裕層」、3000万円以上5000万円未満が「アッパーマス層」となる。


ちなみに2019年時点での富裕層と超富裕層をあわせた世帯数は132.7万世帯。厚生労働省の調査によると2019年の全世帯数は、5,178.5万世帯なので全世帯の約2.6%となる。「誰もが金持ちになって引退できるのか」と、いう問いにイエスと答えるのには少ない数字だ。準富裕層まで入れると約9.1%、アッパーマス層まで入れると約23%なので、誰もがお金持ちになっているということではない。


また、総務省の調査による総世帯の1世帯当たりの2019年の年間収入は558.4万円だった。筆者はその年間収入が558.4万円の方ならば、努力とリスク対応力を身に付ければ、引退後にアッパーマス層までになれると考えている。ところが現実は、81.4%の方が金融資産3000万円未満のマス層にいる。上記の金融資産保有額は、年齢による調査はしていないので高齢世帯だけではない。なので、お金持ちになって引退したのかという数字は分からない。現状は確認できないが、それでも複利の効果を資産を増やす方に使えばお金は増え、お金持ちになって引退できる可能性はあるのだ。

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時間をかければ誰でもできる


ただし、すぐに資産を増やすのは難しい。技術に加え経験も必要だからだ。失敗が少ないお金を増やす方法は、時間をかけることだ。時間をかければ「複利」の効果でお金は増えていく。毎月5万円を30年間平均7%で運用できれば約6,100万円に増やすことができる。例えば、ご夫婦でiDeCoに2.3万円ずつ他に4000円をつみたてNISAで運用するだけでも余裕で資産3000万円以上のアッパーマス層に入れるのだ。


同じく毎月5万円積立できるとしても20年と短くなると約2,600万円、10年ならば約865万円。複利の効果は、5年以上から効いてくるので長い期間続けることが必須になる。かけられる「時間」が重要なのだ。


毎月5万円が厳しいのならば、毎月2万円でもいいだろう。毎月2万円を30年間平均7%で運用できれば約2,440万円になる。ご夫婦2人で1万円ずつiDeCoで運用するだけでも準備できる。目指すべき資産3000万円の残り1000万円分は、子育てが終わってから10年間、毎月10万円を貯金するだけでも十分に準備できるのだ。

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積立投資を誤解してる?

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預金も資産運用のひとつだ。預金でも投資でも金融商品や不動産などに分けて貯めたり増やしたりすることを資産運用という。istock

複利の効果は、年数が長くなれば長いほど増えていく。複利について説明すると50代後半の方から次のような質問をいただく。「あと5年で定年です。長期投資は無理なので、トレードも学んだ方が良いですか?」このように質問する場合、大きな勘違いをしているのだ。


定年まで5年ということは、例えばNISAで投資信託を購入できるのが5年ということだ。5年間積立で購入した投資信託は、売却をしなければそのお金は運用され、さらに増える。「積立投資」とは、毎月一定額を購入する「購入方法」のことであって購入したものを保有することこそが「運用」なのだ。

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トレードは感情に左右されてしまう


たとえば、5年間毎月3万円で購入して平均7%で増えた214万円分の投資信託を、そのまま15年間保有を続けたとする。リターンは控え目に3%で計算すると15年後には、約335万円に増えるのだ。5%で運用できれば、約452万円まで増える。これは保有しているだけで増やせるのだ。


一方、トレーディングをしたらもっと大きく増やせる可能性もある。しかし相応の勉強も必要だ。もちろん勉強だけではダメで経験も必要となる。バーチャルトレードで練習はできるが実際に自分のお金をトレードするのと、バーチャルではお金にのっている「感情」が違ってくる。精神的負担は、かなり大きくなるのだ。現役でいられる年数が、あと5年なのならば、リスクのあるトレードではなく時間をかけて保有しているだけで増える運用方法をお勧めする。

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複利効果を間違って活用している

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お金を減らすマイナスの運用がローンだ。多くの人は資産を増やすプラスの運用の期間を短くしたがり、お金を減らすマイナスの運用を長くしている。

繰り返しになるが、複利の効果は年数が長くなれば長いほど増えていく。100万円を7%の利回りで運用できれば10年でおよそ200万円になる。10年で100万円増えるのだ。さらに10年続けると、また100万円増えるのだろうか? 実は、約400万円になるのだ。最初の10年は100万円のプラスだが、続けてさらに10年運用すると200万円のプラスになるのだ。「複利」とは、長い期間運用していればお金は増えていくのだが、お金を減らす「複利効果」の方を多くの方は利用している。


お金を減らす複利効果とは、住宅ローンだ。多くの方は、住宅ローンは長期で借りるのに資産運用は、5年で結果を求めているのだ。それでは、お金を減らすいっぽうだ。複利で増える住宅ローンは期間を短縮し、資産運用を長く続けないとお金は増えない。

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たった1%でも長く借りると損に?


たとえば、住宅ローンの借入金額が4000万円で、金利が全期間固定で1%だとする。最初は返済期間を35年間と設定してローンを組み、途中で返済期間短縮型の繰り上げ返済をすると仮定しよう。1年後100万円を繰り上げ返済すると節約できる利息は、約40万円だ。10年後に繰り上げ返済100万円をすると節約できる利息は約28万円。20年後に同じように100万円繰り上げ返済すると節約できるのは約16万円。退職金をもらって30年後に100万円繰り上げ返済をするとたった約5万円の利息の節約にしかならない。※知るぽると「【しっかり】繰り上げ返済シミュレーション」で試算


複利効果が効いていない1年後に繰り上げ返済すべきなのだ。住宅ローンは長期で借りるのに、資産運用は5年で結果を求めるというのは、本末転倒なのだ。特に今は、80歳になるまで住宅ローンを借りることができるのだから老後に住宅ローンが残ってしまう方もいる。老後に住宅ローンが残っていると年金生活は苦しくなってしまう。


お金持ちになって引退したいのならば、複利の効果を上手に使うことだ。住宅ローンは、65歳までに返済できるように繰上げ返済をして、資産運用の方を30年と長く積み上げることだ。夫婦で毎月5万円、2人で分ければ2.5万円を30歳から60歳まで運用できれば、誰でもお金持ちになって引退できるのだ。

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【執筆者】
川畑明美●ファイナンシャルプランナー 「私立中学に行きたいと」子どもに言われてから、お金に向き合い赤字家計からたった6年で2000万円を貯蓄した経験をもとに家計管理と資産運用を教えている。HP:https://www.akemikawabata.com/