岡山の街を歩き、濃密なアート体験の1日を過ごす『岡山芸術交流2022』

  • 写真・文:中島良平

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旧内山下小学校展示風景より アジフ・ミアン『無煙の火』2022年 モチーフはイスラム教以前のアラビア神話に登場する、火と空気でできた精霊ジン。黒いビニールの覆いをまとうパフォーマーを赤外線サーモグラフィ映像に収め、池を鏡として現実と異世界の往来を想起させるインスタレーション作品だ。

岡山市で3年ごとに開催される国際現代美術展『岡山芸術交流』が第3回を迎えた。アーティスティックディレクターにアルゼンチン出身のタイ人アーティストであるリクリット・ティラヴァーニャを迎え、「僕らは同じ空のもと夢をみているのだろうか / Do we dream under the same sky」のタイトルで13カ国から28組の作家が参加している。

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旧内山下小学校展示風景より 手前の大理石を用いたステージが、リクリット・ティラヴァーニャ『Untitled 2017 (Oil Drum Stage)』(2017年) カウンターカルチャーとして誰もが主張できるパンクの精神に惹かれたティラヴァーニャは、さまざまな人に開かれたステージを形にした。奥の立体作品は、曽根裕『Amusement Romana』(2002年) ジェットコースターをモチーフにしたこの作品は、実際に上り滑ることができる。

一般的に地方の芸術祭というのは、町おこしのために交流人口を増やすことを目的に開催されることが多い。しかし岡山芸術交流の目的は、「まずは町おこしではなく人おこし」だと総合ディレクターを務めるギャラリストの那須太郎(TARO NASU)が語る。アートに関心を持っている「オーディエンス」だけではなく「パブリック」に、つまり、近隣に暮らすあらゆる人々にアートに興味を持ってもらうことが重要で、そうした人々が増えれば街に面白いことやものが生まれ、自然と交流人口は増えていくはずだという長期的視点を持って「岡山芸術交流」はスタートした。

アーティスティックディレクターを務めるのは、毎回キュレーターではなくアーティストだ。2016年の第1回は、リアム・ギリック。1960年代以降のコンセプチュアルな現代アートを同時代まで追いかけるようなプログラムとなった。そして、第2回はピエール・ユイグ。第1回から発展し、同時代の最新のアート表現を集結させる意図で参加アーティストがラインナップされた。そして今回のリクリット・ティラヴァーニャ。よりコミュニティについて考えさせる作品群が並ぶ。

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旧内山下小学校展示風景より 片山真理『possession』シリーズ(2022年) 自身の体をモチーフにした立体を糸や布で作り、セルフポートレイトの一部として撮影。インスタレーションと写真の中をリンクさせた展示空間の演出が魅力的だ。
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旧内山下小学校展示風景より アピチャッポン・ウィーラセタクン『静寂という言葉は静寂ではない』(2022年) 教室で学ぶことに思いを馳せ、制作されたインスタレーション作品は、光の変化に応じて風景を変える。

ティラヴァーニャは出品作品の選出について、「異質な文化的あるいは社会的背景を持っているという意味」で、「旅人という共通の背景を持つアーティストの周辺的な活動に集中したい」とステートメントで述べている。岡山城も含む周辺エリアに点在する10会場は、どこも徒歩圏内であり、丸1日かけて回れば全体をじっくり堪能することができる。ぜひ現地に足を運び、岡山の街歩きとあわせて楽しんでみてはいかがだろうか。

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旧内山下小学校展示風景より マイリン・レイ『良い夢の鬼』(2022年)「良い夢とは、私たちの根底にある信念を揺さぶり、潜在意識の底に潜む感情をかき立てるもの」と考えた作家。岡山、兵庫、大阪のダンサーと共同で、動きを通して潜在意識に迫るスクリーンダンスを制作した。異なるバージョンが岡山神社にも展示されている。
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岡山市立オリエント美術館展示風景より ラゼル・アハメド『誰がタニヤを殺したか』(2020年) バングラデシュのダッカで開催されたクィア・ドラァグショーを撮影した、個人的なアーカイブビデオに端を発するスリルと美が混ざり合う映像インスタレーション。
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林原美術館展示風景より アート・レーバーとジャライ族のアーティストたち『JUA—サウンドスケープの音』(2022年) ベトナム中部高原の先住民族、ジャライ族の言葉「JUA」は、水の流れや雲など、水と空気の間で変化する動的な状態を指す言葉。ジャライ族の竹製楽器に着想し、竹や木が静かに響き合い「JUA」を表現したサウンドインスタレーションが完成した。

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岡山城(中の段)展示風景より 池田亮司『data.flux [LED version]』(2021年) データとサウンドという不可視なものを可視化、可聴化、体験化し、映像と音響が同期して「完全な感覚体験」を生み出すインスタレーション作品が、夕方16時以降の岡山城に展開する。

『岡山芸術交流2022
僕らは同じ空のもと夢をみているのだろうか』

開催期間:開催中〜11月27日(日)
開催場所:旧内山下小学校ほか岡山市内10ヶ所
TEL:086-221-0033(岡山芸術交流実行委員会 事務局)
開館時間:9時〜17時
※最終入場は16時30分まで、ただし個別会場における変動あり
休館日:月
入館料:一般¥1,800、一般(県民)¥1,500、高校生以下無料
https://www.okayamaartsummit.jp/2022/