お洒落でハイエンドなヴィーガンレストランがニューヨークで増えている理由

  • 文・写真:菅 礼子
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今や街中でマスクをしている人は少数派となったニューヨーク。一時は新型コロナウイルスの世界的な激震地として騒がれたが、観光客で賑わう日々が戻ってきている。パンデミックによって閉店に追い込まれたレストランも多いが、ポストコロナにおいてその分、新しいレストランのオープンラッシュで新たなトレンドも生まれてきている。

そのひとつがヴィーガンレストランの台頭だ。トレンドに敏感な若者たちがなぜヴィーガンレストランで食事を楽しむのか? その理由を紐解いてみよう。

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パンデミックによって人々は健康意識に開眼

アメリカでは2020年3月半ば以降、パンデミックによってしばらくステイホームを余儀なくされた。それによってアウトドアを楽しむようになった人々や、時間が出来たことで健康を意識して食生活を変えた人、飲酒量を減らした人など、健康に向き合う時間ができた。

また、人々が家に籠り、車社会のアメリカで交通量が減少したことで、都市部の大気汚染が改善。家庭から出るゴミの見える化によって自分たちが日頃どの程度ゴミを排出しているのかにも気づいた人も多く、身近なところから環境問題に配慮するきっかけを得た時間でもあった。

それによってパンデミック期間にヴィーガンやベジタリアン、フレキシタリアンに移行した人も多い。選ばなければ不健康な食品が蔓延するアメリカでは、意識が高い人たちへ向けてスーパーでも大豆などを主成分としたプラントベースの代替肉などが日本よりも豊富だ。「Just Egg」や「Impossible Food」など、テクノロジーを駆使したシリコンバレーのテック系企業がクールなブランディングでプラントベースの食品を販売している。

古くから肉や魚を使わない精進料理があり、ヘルシーな食生活が根付いた日本人とは異なり、ファストフードなどが多く、さらには社会問題に声を上げることが意思表示になるアメリカでは、動物倫理や温暖化問題から脱肉食を図る人が増えている。

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セレブシェフもヴィーガン&ベジタリアンレストランをオープン

前述したようにスーパーでは多くのプラントベース食品が出回っているが、ポストコロナでお洒落なヴィーガンレストランが続々オープンしている。人々のマインドセットがパンデミックにより健康志向が強まり、環境問題から肉食を避けるZ世代が増えたことを考えると、このトレンドは自然だろう。

今までヴィーガン&ベジタリアンレストランと言えば地味な印象もあったが、今はそうではない。肉や乳製品を使わないことは制約ではなく、今や新たなクリエーションを創造するチャンスである、という風潮だ。

話題となったのは、2017年「世界のベストレストラン」で一位に輝いたマンハッタンのマディソンスクエアパークに店を構える「Eleven Madison Park」がコロナ禍のクローズを経て、ヴィーガンレストランとして生まれ変わったことだ。世界一にも輝いたレストランがヴィーガンメニューへと舵を切ったことは大きな話題となった。

テイスティングメニューも一人335ドル(約4万8000円)とラグジュアリーな価格で、肉や魚を使わない=安い、というのは常識はずれ。これは同店だけではない。世界的セレブシェフ、ジャン・ジョルジュ氏もユニオンスクエアパーク近くにベジタリアンレストラン「abcV」を持っている他、最近ピア17にオープンした商業施設丸ごとジャン・ジョルジュ氏プロデュースの「Tin Building by Jean-Georges」にも「Seeds and Weeds」というヴィーガンレストランをオープン。同氏がヴィーガン&ベジタリアン食に意識が向いていることが伺える。

sr_abcv.jpegabcV
sr_Seeds Weeds.jpgSeeds and Weeds

世界のトップシェフたちによるヴィーガン&ベジタリアンレストランのオープンにより、今やヴィーガン&ベジタリアンのレストランで食事を楽しむことが“COOL”になっている。

ラグジュアリーシェフたちに追随するように、マンハッタンでは市場を牽引する若い世代の間で話題となるような多くのお洒落なヴィーガン&ベジタリアンレストランがオープンしている。

人種の坩堝であるニューヨークらしく、「Spicy Moon」などのチャイニーズ、「Hangawi」などのコリアン、「jajaja Mexican」などのメキシカン、他にはニューアメリカン、フュージョンなど、ヴィーガン&ベジタリアンレストランのジャンルも多岐に渡る。

sr_spicy moon.jpegSpicy Moon
sr_jajaja mexican.jpgjajaja Mexican

先日足を運んだ「Planta Queen」はオシャレな若い層の人々で賑わっていた。アジアンフュージョンの同店ではスイカをスライスしたものをマグロの握りに見立ててサーブをしていた。なるほど美味しいのだが、マグロとは別物。こういう発想もあるんだな、という感想。

sr_Planta queen1.jpgPLANTA Queen
sr_Planta queen3.jpgPLANTA Queen

代替肉を使ったハンバーガーショップなど、ファストフードでもヴィーガン&ベジタリアンを掲げる店が増えている。ノマド地区にオープンした「PLNT Burger」はポップなカラーを使ったブランディングでヴィーガン&ベジタリアンレストランらしいクリーンなイメージではなく、逆にジャンクフードを想像させるほどだ。

ランチ時は長蛇の列ができ、実際に試食してみると満足感もあるが、胃もたれはしないといういいバランスだ。このように日頃からの外食シーンでヴィーガン&ベジタリアンのレストランがそのチョイスに自然と入ってくるようになった。

ニューヨークの食情報を網羅している「Eater」や「Time Out」といった人気ウェブサイトでもヴィーガン&ベジタリアンレストランの特集がたびたび組まれるなど、その注目度は上がっている

文・写真:菅 礼子

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sr_PLNT burger 1.jpegPLNT Burger

---fadeinPager---sr_PLNT burger 2.jpegPLNT Burger

---fadeinPager---sr_PLNT burger3.jpgPLNT Burger

---fadeinPager---sr_PLNT burger 4.jpgPLNT Burger

---fadeinPager---sr_PLNT burger5.jpgPLNT Burger

---fadeinPager---sr_Planta queen1.jpgPLANTA Queen

---fadeinPager---sr_Planta queen 2.jpgPLANTA Queen

---fadeinPager---sr_Planta queen3.jpgPLANTA Queen

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---fadeinPager---sr_Seeds Weeds.jpgSeeds and Weeds

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