「お金に興味がないんです」という人こそ、お金に支配されてしまう理由

  • 文:川畑明美
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お金の相談にいらしているのに「お金に興味がない」といわれる方は、実は多い。その裏に隠された心理を考察してみた。istock

あなたがお金を支配するのか? 逆にお金にあなたは使われてしまうのか? お金に興味を持つかもたないかで、変わってくることがある。「お金に興味が持てないんです」と、家計相談の時に言われることがある。または「パートナーがお金に興味がなくて、お金が貯まりません」と夫や妻がお金に興味がないというご相談もよくいただく。実はこの言葉には、隠された本当の意味がある。まず、本人が「お金に興味がない」と思っているパターンを考察してみよう。この場合、次のような気持ちが隠れている。


・「お金は汚い」という思い込みから、お金に興味がないということで自分を正当化している

・お金のことについて学んでいないことへの言い訳

・自分が稼げていないことから逃げている

・今までなんとかなってきたから将来のお金について考えるのが面倒くさい


「お金に興味がない」というあなたは、むしろお金に縛られている可能性が高い。心のどこかで「貯金しなくちゃ」と、思っていても貯金するためのアクションに踏み込めなかったりして苦しんでいるのだ。

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パートナーがお金に興味がない?


次にパートナーが「お金に興味がない」と、思っているパターンを考察してみよう。このパターンの場合は、パートナーのお金の使い方が荒かったりご夫婦のどちらかだけが、お金の管理をしている場合が多い。「お金のことは任せる」といわれ、頭の中で「パートナーはお金に興味がないんだ」と、変換して考えてしまうのだ。


この場合は、ストレートに「お金に興味がある?」と、パートナーに聞いてみるといい。あなたが思い込んでいるだけで、パートナーはお金に興味があることが多い。実は「お金の使い方が下手」で、相手に任せてしまっているのだ。


大事なのは、「お金に興味がある・ない」ではない。お金に興味がなくても、貯金は平均以上に持っている方もいる。危険なのは「お金に興味がないから」といって家計管理やお金の勉強から逃げてしまう方だ。家計管理もしておらず、お金の知識がないのにお金に縛られていると、人を騙してお金を巻き上げる詐欺的投資にひっかかってしまう可能性もある。十分注意して欲しい。

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お金には不安を減らす効果がある

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「貯蓄がないから、今の会社を辞められない」それはとてもストレスだ。会社を辞めてもしばらく生活できるくらいの貯蓄があることは安心につながる。istock

お金を使わずに生活するのはほとんど不可能だ。まず生活する「家」が必要だろう。最近はリモートワークが進み、家がなければ仕事もできない。生きていくために食事は必要だし着るものや履くものもなかったら外出もできない。毎日暮らしていくのに必要なモノが「お金」といえる。

またお金には、モノやサービスに支払う以外の価値もある。貯蓄があるのとないのとでは、精神的に違ってくる。労働の対価である収入をすべて使い切っていたら「病気で働けなくなったらどうしよう? 」「会社で嫌なことがあっても、辞められない」という考えが大きくなってしまう。お金がないと、今の仕事に縛られることになる。貯蓄があることで、不安が和らぎ安心できる。


つまりお金には、安心を得る効果や不安を減らす効果があるのだ。多くの人は、暮らしていくのに十分な蓄えがあればいいと考えていることが多い。万が一という時に安心したい、余計な心配をせずに日々暮らしたいと考えているのだ。安心できるには一定以上のお金が必要となる。

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「お金に興味がない」人は経営者にとって扱いづらい

仕事上で「お金に興味がない」と発言してしまうのは、少し危険な行為だ。給料をもらう側ではなく、支払う側、つまり「経営者」の立場で考えてみて欲しい。すべての会社がそうだといわないが、会社は給料を上げたり下げたりすることで効力を行使している。


お給料が上がれば、モチベーションは高くなるだろう。逆にお給料が下がってしまったら、ものすごくショックを受ける。また、同僚と給料の差が全くないと、仕事ができる人達は不満に思い会社を辞めてしまうことにも繋がる。多くの会社では、仕事ができる人達は、他の人よりも少し給料が多くなる仕組みがあるものだ。


経営者目線で考えると、給料に適度な差があり、社員が少しでも収入を増やしたいと考え行動している状態が社員をうまく調整できている状態なのだ。なので「お金に興味がない」人は経営者にとって、とても扱いにくい。

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お金も人生も豊かにできるのは自分だけ

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お金は評価の基準にもなるのだから、収入を増やすのもあなた次第。健全に自分の能力が評価される基準がお金なのだ。istock

経営者にとって扱いにくい人は、出世が難しくなってしまう。給料が上がっても下がっても全く反応しない人は、「何を考えているのかわからない」もしくは、「やる気を感じられない」と経営者は感じてしまうのだ。本人は「やる気がない」と思っているわけではなくても、そう取られてしまう。


もちろん経営者は、お金だけでコントロールしているしているわけではないが、お金によるコントロールは、わかりやすいのだ。お金以外でコントロールすることは、経営者にとって非常に難しい。給料は、評価基準でもある。正しく評価され、健全に自分の能力を発揮できる場を選択するにもお金という評価基準が必要なのだ。


お金も人生も、自分で豊かにしていくしかない。お金の知識をしっかり身に付けて、新しいモノも取り入れ、仕事の能力を向上させることが重要だ。自分の環境は、自分で変えていくしかないのだから。

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お金の興味がないのは、もったない

仕事の評価基準であり、生活に欠かせないもので、精神的なよりどころでもあるお金には、お金に働らいてもらうとういう機能もある。自分が労働をする代わりに企業に出資して、お金を増やすことだ。自分の代わりにお金に働いてもらうことで、豊かになるスピードがアップする。この機能を使わないのは、とてももったいないことだ。お金に興味がないといって、お金に働いてもらわなければ、豊かになるスピードが遅くなってしまう。


お金に働いてもらう時の注意点は、ひとつだけ。あなたのお金が働いてくれている「市場」から頻繁に出入りしないということだ。つまり売買を頻繁にしない方が上手くいくのだ。もちろん株式投資の場合、見立てが悪かった時には、素早く撤退することも必須だ。個別株ではなく、株式市場全体に投資しているETFや投資信託の場合は、経済状況によって状態が悪くなってしまった企業の株は淘汰されていくので、良い企業だけが残る。一時的にリターンが悪くなったとしても、良い企業の株だけが残るのだから、長期的には右肩上がりに上がっていく。


世界的に急激なインフレがおこり世界の金利が上昇し、それに伴って株価も下がっているが、参加した市場から簡単に出てはいけない。むしろ安く買えるチャンスの時なのだから、新たに資金を投入すべきなのだ。生きる上でお金を理解することは、とても大切なことだ。使い方をマスターしたら、お金はあなたの忠実な部下になる。ところが、上手く使えないと、逆にあなたがお金に使われてしまうのだ。

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【執筆者】
川畑明美●ファイナンシャルプランナー 「私立中学に行きたいと」子どもに言われてから、お金に向き合い赤字家計からたった6年で2000万円を貯蓄した経験をもとに家計管理と資産運用を教えている。HP:https://www.akemikawabata.com/